4話 冒険者の円卓
――ギルド本部。円卓
「本会議の議題は一つだ。」
ギルド長は指を組んだ。
「転移者レンを保護対象とするか、危険存在と認定するかだ。」
円卓の空気が静かに張り詰めた。
連れられたのは円卓の間だった。12席用意されていたが席に付いているのは10人だった。
「まず、お前は本当に"空"の魔法を持っているのか?」
子ども? 中学生くらいか? なんでこんなところに。
すると見覚えのある老人が口を開く。
「彼が現代の魔王の一人、海斗と同じ魔法"空"を所持しているのは私が確認済みです。」
トマスさん、あの老人が何故ここに。
するとまた中学生程の少年が質問をする。
「じゃあ、こいつは本当に転移者なのか? それとも魔王の手下なのか?」
「今日は随分とお喋りなのですね? アルさん。」
黒髪の男は言った。
「結果をすぐに求めるなんて、危険ならその時に処理すればいいでしょう?」
レンは恐怖した。男から発せられる静かな怒りを、レンは肌で直接感じた。しかし、その怒りはレン個人へ向けられたようには感じられなかった。なにかに、言葉通り押し潰されそうになる。
「やめろ。ここは私情を持ち込む場ではない、審議の場だ。」
ギルド長は言った。すると息をすることすら忘れる程に恐ろしかった空間は一瞬で消える。アルは続けて言った。
「本題に戻すぞ。レン、だっけか? ここに来た経緯をお前の口から話してみろ。」
レンはいまだ残る恐怖に駆られながら地球という星にある日本から来たこと、本屋での不思議な出来事、クロノアという神に会ったこと、そしてこの世界に来た日のことまで話した。
「茂、どう思う? お前達のいた場所と同じだと思うか?」
アルの問いに対して黒髪の男――茂は軽く首を横に振った。レンが日本という場所から来たという点は合っているが、説明にあった魔法のようなものは地球にはないと言う。
その認識はレンも同じである。そんな場所で生まれ育った覚えはなかった。しかし、実際に体験し一度死んだ。話し合いの結果、最終的にレンは茂たちとは異なる、似た世界から来た、または魔王の手下であり、作り話ではないかとの結論になった。
レンは口を開きかけて止まった。
違う、ここで余計なことを言えば終わる。俺は今、裁かれる側にいる。
帰りたい。まだ、帰れるのだろうか? 家族が心配しているはずだ。早く、帰らないとな……。
アーサーはずっと黙ったままレンを観察していた。そして何かを感じ取った。
「学園都市に彼を送るなんてどうかな?」
アーサーがそう提案する。
その言葉に円卓を囲む者たちは驚き、しばらく言葉を失った。
「管理下に置くと……。しかし、あまりにも危険だ。もし……」
アルの言葉を遮りアーサーは言う。
「あの人が自身のテリトリーでそんなことを許すと思うか? それに私も彼と共に学園都市に赴く。問題はないだろ? 異論のある者はいるか?」
沈黙が続く。誰も賛成しない。しかし、反応する者をいない。ギルド長は目を閉じた。
「異論はないな?」
ギルド長は静かに告げる。そして、視線はレンに向けられる。
「転移者レン。」
「お前の処遇を決定する。」
「本日より、お前を監視対象として学園都市へ送致する。」
助かったはずだ。なのに俺、今ここから追い出された?




