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アルケニアイル  作者: 犬助
三章 インターン編
26/26

26話 英雄の歩んだ道

 空は暗く、街は静まりかえった夜、学生寮の一つの部屋から豪快な笑い声が聞こえてくる。

「気にすることねぇよ。あれはお前をやる気にさせるための嘘だよ。」

 レンは試験官を倒してしまった挙句飛び級を断ったことを謝るとルークは真実を話す。

「俺の周りに集まってたやついるだろ?あいつら全員、昔からの友達なんだ。飛び級できんのはひとりだし最初から狙ってねぇよ。」

 レンはそれを聞いて安心する。

「そうか。今日は安心して寝れそうだな。」

「それは良かったよ。」

 ルークはそう言うと電気を消す。

「じゃあ、また明日な。」

「あぁ。おやすみ。」

 こうして彼らは眠りについた。


 ――三ヶ月後


 入学初日から約3カ月が経った頃。彼らはまだ遠征に行くことは許されなかった。

 魔法とはなにか。この世界のことを学習する。

 そんなある日、授業のために教室移動の準備をしていた。

「レン。一緒に行こ。」

 そう言い、女の子がレンの机の奥から顔を出す。

「そうだな、今日も一緒に行くか。」

 彼女の名前はシン、ルークたちとともに試験を受け10位を取った実力者の一人だった。

 教室を出て二人は歴史室へ向かう。

「今日の授業ってなんだっけ?」

 杏はレンに尋ねる。

「確か、7代目勇者の授業だろ?」

 レンがそう言うと杏の目つきが変わる。

「7代目勇者! すごいよ。今日は本当にすごいと思うよ!」

「なんで?」

「だって、かつて魔王に奪われたピース大陸を取り戻した勇者だよ。その戦いを見れる日が来るなんて。」

 杏は興奮気味でレンにそう言う。

「へぇ、いつ頃の勇者なんだ?」

 レンは問う。

「うーんとね、ざっと100年前くらいかな。」

「意外と最近の勇者なんだな。」

「まあ、初代の人たちに比べたらね。」

 そんな話をしていると歴史室へ到着する。

 やがて授業が始まり、教授はざっくりと7代目勇者の説明をした。それが終わるとある機械に近づき電源を入れた。

 すると突如、空間は歪み気付けばそこは荒れた土地だった。

 歴史室――追体験という形で過去に戻れる教室。誰かの視点などではなくまるでその世界にいるかのように自在に歩いたり、宙を飛んだりでき、障害物は透けることができる。しかし、追体験である以上、過去に干渉したりすることはできない。

「この過去に飛ぶ感覚、いつまで経っても慣れないな。」

 レンはそう言うと周りを探索する。

 土地は荒れ果てていて周囲には魔物が沢山、生息していた。

 男性3人、女性1人の4人のパーティーがレンの視線に留まる。

 あれだな、勇者パーティーは。

 レンは彼らに近づく。すると会話が聞こえてくる。

「さてと、この大陸は広い。どうします? パイセンたち、今すぐに王を狩りに行きますか?」

 後方にいるガタイがしっかりした男がそう問うと先頭に立つ背の低めで眼鏡をかけた男はそれに応える。

「当たり前だ。」

 そう言うとガタイの良い男は口角をあげる。

「さっすが。パイセンっすね。――パイセンも文句ないっすよね?」

 なんだ? 今名前を呼ぶ時にノイズが……こんなこと初めてだ。

 レンは首を傾げるが機械の故障だと思いあまり気にしなかった。

 レンは考えごとをしてるうちもそれは続いており視線を戻すと彼らは消えていた。

 あれ? どこ行った?

 追体験中は他にダイブしている学生たちも見えないためレンは自力で勇者たちを探すしかない。

 確か、王をいきなり叩くみたいなこと言ってたよな。よし、あのでかい城に行ってみるか。

 レンが城に向かう途中、向かう建物から爆発音が聞こえる。

 ドンピシャ!

 レンはスピードを上げて城に潜る。

 すると、そこではもう戦闘は始まっていた。

 眼鏡をかけた男が女性に斬りかかっていた。

 魔王の女性のスタイルは抜群に良かった。その訳は魔王がサキュバスだったからだ。

 サキュバスは魔法は得意だが、近接戦闘は苦手とされる。

 しかしその魔王は違った。

 魔法は一切使わずに剣を使った近距離を得意とした戦闘スタイルだった。

 彼らの戦闘は凄まじかった。

 勇者たちが戦い通った周辺の土地は、エグれ魔物達は消し飛んでいく。

 剣と剣が激しくぶつかり合う。周囲の建物は崩れ、魔物たちは吹き飛ばされる。

 眼鏡の男の動きは俊敏で、魔王の斬撃をかわしつつ反撃する。戦いは10分足らずだったが、その激烈さは追体験中のレンにも伝わるほどだった。

 男と魔王はお互い力を認め、最後に今出せる最大の魔法を繰り出した。

 結果は魔王は粉微塵となり勇者はボロボロになりつつも生存した。

 その戦いによって、その大陸での魔物はほとんどいなくなり、ピース大陸を奪還したのだった。

 授業は終わり杏はレンに話しかける。

「どおだった? すごかったでしょ。」

「あぁ、今までの勇者たちの戦いより迫力があった。メモリもよく残ってるし一番印象に残ったよ。」

「そうだね。記録があそこまで鮮明に残ってるのは凄いことだよ。」

 追体験に必要なのは当時の記録――メモリだった。

 今まで見てきた勇者の記録は破損したり残ってなく追体験できないところが多かったのだが、まだ比較的新しい7代目の物語は鮮明に記録が残っていた。

「これで勇者の追体験は全てやったな。」

 海斗の記録はないんだな。

「うん。楽しかったね。」

 杏は満面の笑みをレンに見せる。

 レンはそれを妹と重ねるのだった。


 ――ピース王国 城下町


「あら? おはよう。今日もお買い物? 毎日おばあちゃんのお世話頑張ってて偉いわね。また新鮮な野菜が入ったらおすそ分けするからね。」

 ピース王国城下町、街の人々から愛されている1人の少年が居た。

 少年は、認知症で足が不自由な実のおばあちゃんを毎日介護していた。母はレンが赤ん坊の頃に亡くなり、父は冒険者で年に一度帰るかどうかも分からない。しかし、彼にとってそれは苦ではなかった。

 だが、現役時代凄い魔術師だったおばあちゃんは認知症になったのにも関わらず国の人間に一週間に一度訪問にくる。

 近所の人達との協力もあって門前払い出来る事がほとんどだが彼にとってそれだけがストレスだった。

 その日は珍しく朝方におばあちゃんが起きてしまい寝かしつけるのに相当の時間がかかってしまう。

 気づいたら昼間、彼は急いで買い物に出かける。

 住宅地を出て噴水のある広場に出ると、そこではひったくりが逃げ回っていた。

彼は正義感が強く、その男を捕まえようとする。

しかしその瞬間――上から誰かが凄まじい速度で降りてきた。

 ひったくりは即座に捕まってしまう。

 その瞬間、遅れて来た女の子にひったくりを拘束させ、レンは家の壁を利用してどこかへ走り去った。

 正体はレンだった。それを見た男はレンに憧れる。

 新参の冒険者だろう、と勝手に決めつける。

 またすぐ会えるだろう――そう思い、彼は買い出しに戻った。

次回から新章です。

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