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アルケニアイル  作者: 犬助
二章 入学試験編
21/26

21話 天才

 美雪はずっと魔力を練り続けていた。

 魔力はとうとう尽きて、レンの魔力を使い出す。

 しかし、少しずつ美雪に変化が起こっていく。

「魔法が……暴発する。」

 美雪は膨らんでいく風船を抑えつけている感覚だと言う。

 これ以上は美雪に危険が及ぶ……。

「美雪、魔力を止めるぞ。」

 美雪は精一杯でレンの声が聞こえていない。

 やばいな……。

 レンは空を見る。

 すると、空の模様が変わる。

 空は黒く、光を遮っていた。一層雨が強くなる。

 雨の強さは地球では観測されたことのないほどの強さだった。

「嵐が見えた。美雪!」

 美雪は目を開けられない。

 レンの声だけで周囲の状況を察した。

 美雪は空に向かって魔法を放った。

 ――グラキエス!!

 

 ただ氷を作り出す魔法。

 しかし何時間にも練られた魔法で作られた氷は絶対零度に達する。――大気が一瞬で凍りつく。嵐そのものが氷の彫刻のように止まり、雨粒は空中で凍り、無数の氷柱となって宙に止まった。

 これは古代の大魔法に匹敵する魔法だった。

 美雪は疲れ果てその場で倒れてしまうが意識を保つ。

「やったの?」

 美雪の言葉で魔法を見て呆然としていたレンの意識は戻る。

「あぁ、収まった。」

 レンは美雪と事なきを得た事を互いに喜び合う。

 次の瞬間、氷が溶ける事なく消滅する。

「魔法が消えた!?」

「解かされたって? 誰か人の仕業か?」

 美雪は首を横にふる。そして静かに上空に指を指す。

 嵐は消滅していない。

 レン達の絶望を表す様にまた雨が降り始めた。

 雨は弱くなっていた。

 梅雨の時に降る強い通り雨くらいの強さだ。

 美雪はもう動けない。

 レンは走っていた。体が勝手に動いていた。

 頭の中に何度ももう一人の自分が思い浮かぶ。

 もう、やるしかない。

「来い!!」


 ――

 

 緑一つない荒野。――そこいるのは一人の男。白髪の自分の姿があった。

「よお、橋ん時ぶりじゃねぇか。」

「お前の出番だ。あの嵐を消し飛ばしてくれ。」

 白髪の自分は呆れたようにため息を吐く。

「嫌だね。自力でやんな。」

「人に頼ってばかりで恥ずかしくないのか? 少しは自分の力だけでやり遂げてみろ。」

「無理だ。俺には何もできない。」

 レンは視線を落とす。

「魔力があるだろ? ありったけ込めてみろ。」


 ――


 気づけば、森に戻っていた。

 レンは"覚悟"を決めた。

 全魔力を込めろ!

 レンは上空に手を伸ばす。

「魔弾!!」

 魔弾はビームのように雲を貫き、嵐の中心を抉った。

 だが――それでも嵐は消えない。


 森の向こうから振動が伝わる。 

「わあぁぁ!!!!」

 突如、森中に響き渡る少女の声にレンは気づく。

 リラ! 無事だったか!

 リラの声により更に嵐は弱まる。

「もう一回だ。『魔弾!』」

 レンは残ったすべての魔力を叩き込むように空へ放った。


 ――


「おめでとう。生き残った諸君。全員合格じゃ。」

 気がつけば、そこは闘技場。

 受験者は戻されていた。

 周囲を見渡すと始まる前より随分と人が減っていた。

「合格……したんだな。」

 気を抜けば一瞬で疲れが押し寄せる。

 レンはその場で屈み込む。

「おい。大丈夫?」

 声が聞こえ、レンは顔を上げ驚く。

「大丈夫です……って、あっ!」

「お前、始まる前に一人でいた……。仲間はできたのか? 合格できたんならよかったぜ。」

 そこにいたのは試験が始まる前にレンに警告した男の姿だった。

 突然、会場に巨大なスクリーンの様なものが映し出される。

 そこにはランキングがあった。

 上から1位から10位、それから11位から最下位

 そして脱落者の枠があった。

「順位の良し悪しでクラスが分けられるってわけでもないが、参考にはされるぞ?」

 校長がそう言うと受験者たちは一斉にランキングを見る。

 レンも同じく、下から見ていく。

 脱落者は意外にも多かった。しかし、脱落者に知ってる名前はない。

 よし。良かった。

 レンが続けて下からランキングを見ていると、周りからは色々な声が聞こえてくる。

 順位を自慢する者。

 順位に不満を持つ者。

 そして仲間と合格を喜ぶ者の声。

 レンも最下位から11位まで、流し見していく。

 俺の名前はない……。知り合いの名前も……。

 そしてレンは、上位10位の枠を見る。

 レンは緊張していた。

 ――天才だった。今までできなかったことなどほとんどなかった。努力などしなくても必ず結果が出た。

 それが当たり前であり失敗というものを、ほとんど知らなかった。

 しかし、この世界に来てからは違った。

 どれも上手くいかなかった。それが彼にとって新鮮だったのだろう。

 レンはゆっくりと10位から名前を確認していく。最初に知ってる名前が出てきたのは9位のタクトだった。

 レンはタクトの名前を上位で発見して、嬉しく思い順位をあげる。

 次に5位にマトが居り、3位に美雪が居た。

 そしてガリンは4位だった。

 しかし、自分の名前がない。

 レンは焦った。

 もう一度下から上まで全ての名前を確認する。

 ――しかし、なかった。

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