16話 届かない
「リラ、出てきていいよ。彼は信用できる。」
タクトが茂みの奥にそう言うと、そこから気弱そうな少女が出てくる。
「紹介しよう。僕の仲間のリラだ。もし、同盟を組んでくれると言うなら名前を教えてくれないかい?」
「レンだ。よろしく。」
「あぁ、よろしくな。ごめんな、レン。リラはちょっと恥ずかしがり屋なんだ。」
「いいさ、気にしてない。」
「それじゃあ、本題に入ってもいいか? レンは聞いてないらしいけど、世界樹はこの会場に嵐が来ると言った。それはリラも聞いたらしい。嵐に巻き込まれれば受験者は全員、不合格になる。」
「じゃあ、どうすれば合格できるんだ?」
「はっきりとは教えてくれなかったが、どうやら嵐から逃げられるエリアがあるらしい。」
「じゃあ、そこを探すってことか。」
「でも、場所がわからないんだ。そしてもう一つ、対処する方法がある。」
タクトの顔は真剣になる。
「どうしたんだよ。」
レンはタクトにそう問いかける。
「これは最終手段というか、現実的じゃなさすぎるが、嵐を消し去るって手段だ。安全地帯を見つけることができず嵐が来た場合の最終手段、足掻きだよ。」
「何言ってんだよ……。」
「分かってる。天候を変えるなんて無理に決まってる。そうなれば詰みだよ。」
レンはタクトの真剣な顔を見てそれを否定することが出来なかった。
「分かった。そうならないよう尽力しよう。」
こうして、彼らは情報を交換し、日は高く上がっていた。
コツッ、コツッ。
足音が聞こえ、彼らは警戒する。
しかし、違和感があった。それは上空から聞こえてきたのだ。
彼らは上を見る。すると、そこには魔法で灰色の塊を作り、それを足場に空を歩く男がいた。
あいつ……。初日の!!
レンは全身を震え上がらせた。
気づかれないよう、レンが身を屈めた時、タクトは空にいる男から視線を外さなかった。さっきまで話していた明るい雰囲気は消えていて、その目には明確な殺意が芽生えていた。
「ガリン……。」
タクトはそう呟くと手をガリンと呼んだ男に向ける。魔法を唱えようと口を開いたその瞬間、上空にいる男はこちらに気づく。
「みっけ。」
次の瞬間、ガリンはそこに立っていた。そして、タクトの頭に手を置いていて魔法を発動する。手と頭の距離は数センチもない。ガリンはニヤける。
「また一人、脱落〜。」
バンッ!
「なにぃ? 君生きてたんだぁ。」
ガリンは後ろを振り向き、そう言った。
レンの蹴りはすでに振り抜かれていた。
蹴りは届かない。魔法の塊が蹴りを弾いていた。しかし、塊は砕けた。
「よりよって、お前か。会いたくなかったよ。」
防がれた足は即座に地につく。レンはすぐに次の行動に移る。
「魔弾!」
足でガリンの死角を作り、レンはその隙に手を向ける。レンの魔力はガリンに直撃する。リラはそのチャンスを見逃さなかった。
「わぁ!!」
ガリンの耳元でリラが叫ぶ。空気の波はガリンに集中する。ガリンは遠くへ吹き飛ばされる。
「タクト! 大丈夫か?」
「うん。君たちのおかげでね。すまなかった。」
「いや、いい。奴から目を離すな。来るぞ。」
「え?」
タクトは情けない声を漏らす。
タクトの目に映ったのは、ものすごい速度でレンに迫り、笑い続けるガリンの姿。
そして、それを瞬き一つせず見続けるレンの姿だった。




