14話 遊戯
これは戦いじゃない、遊戯だ。
「あれ? あれあれ? 足に当たったんだぁ〜。痛いねぇ、苦しいねぇ。それじゃあ、脱落しちゃおっかぁ。」
ねっとりとした奇妙な声。頭にこびりつくようなその声に、頭痛を覚える。
「うるせぇ。」
レンは後退していく。
「逃げんなって。」
敵は辛うじて目で追えるスピードで距離を詰める。怪我をしたレンは成す術なく懐に敵の侵入を許す。
「バイバイ」
腹部に手を当てられ、えぐれる音が森中に鳴り響く。直後、口から大量の血液が流れ出る。レンは呼吸すら困難だった。
地に這いつくばり、レンは見上げた。敵は背を向けていて瞬時にどこかへ姿を消した。
痛い……。苦しい……。
レンは這いずるように前へ進む。しかし、意識は突如としてなくなった。
――
何も感じない。ここはどこだ?
光も匂いも感じない空間で、レンは考えることだけが許された。
「起きて、起きて。ねぇ……、苦しいね。」
幼い声が自分を呼ぶ。1拍の間の後、次に聞こえてきたのは圧倒的に自分をねじ伏せた敵の声だった。
「はぁ、はぁ。」
レンは目を覚ました。
吹き出す汗、口の中に広がる血の味。彼は恐怖に支配されていた。身体は指一本すらも動かすことができず放心していた。
「起きたの?」
岩に囲まれた場所――洞窟のそばで寝ていたレンは、奥から出てくる長い黒髪を持った女性に話しかけられる。
レンは唇が震え、声が出ない。
「誰にやられたんだか知らないけど、災難だったわね。もし、もう戦えないようなら辞退しなさい。それじゃあ私は行くから。」
「待って。」
精一杯振り絞った声でレンは女性を引き留める。
「何?」
レンは深呼吸をして気持ちを整える。
「一緒に行動しないか?」
「あなた、まだ戦う気?」
「あぁ。」
「理解出来ないわね、理由を聞いても?」
レンは視線を落とす。
「やらなきゃいけないことがある。学園でしか学べないからな。」
「そう。でも、負けた。弱いやつは要らないわ。」
「わがままなのは分かってる。でもお願いだ。連れて行ってくれ。」
「プライドとかないわけ?」
「あぁ、負けたからな。」
「嫌よ、どうしてもって言うなら活躍して見せなさい。それまではついても来ないでね。」
そう言い女性は洞窟を後にした。
失敗だ。でも、立ち止まっている暇なんてない。まずは交渉材料を作らなきゃな。今度は死ぬ。
レンは立ち上がった。
怪我は完治してるな。でも、痛い気がする。錯覚なんだろうけど……。
洞窟を後にして彼はしばらく歩いた。向かう先には一つ大きな樹木があった。




