13話 生存
「入学試験の前に、聞きたいことがある。」
「どうした?」
レンはグアンの目を見た。
「魔王は、何故アーサーさんを傷つけた? 仲間だったんだろ?」
「彼らの問題じゃ。わしらが介入していい話じゃない。」
レンは強く拳を握りしめた。
「それでも俺は、奴が許せない。アーサーさんは恩人だ。俺にとって、魔王海斗は敵だ。」
「無謀じゃな。一度殺された相手、それも魔王にまた喧嘩を売ろうとは。命知らずじゃ。」
「好きに言えばいい。魔王と同じ魔法を使いたくない。入学試験も魔法なしで挑みます。」
グアンは思わず頭を抱える。
「とても正気とは思えんな。」
「それでもだ。使いたくない。俺は海斗を否定する。」
グアンはその曇り一つない瞳を見た。
「やってみるがいい、現実を知れ。」
そう言いグアンは立ち上がる。
「神の仕業か、それは知らんが試験は明日じゃ。今日はよく休むがいい。」
グアンは病室をあとにした。
突き放されたか?
レンは自分の選択に後悔はしていなかった。
――――
翌日――レンは試験会場に足を運んでいた。
数百人の受験者が巨大な闘技場に集められていてざわめいていた。
観客席には、貴族、戦士、魔術師のような様々な人間が受験者を静かに見下ろしている。
レンは孤立していた。彼は周囲を見渡す。
みんな、誰かと一緒にいるな。
全員、最低でも二人組。
――俺だけか。
「おい。随分と余裕じゃねえか。単独か? この試験は情報戦だぜ? 毎年一人はいるって聞いてたが本当にいるんだな。自分の力を過信してる奴って。」
あまり目立つような服装をしていない男がレンに絡む。
無視だ、無視。相手してもしょうがない。
「んだよ。無視かよ。仲間、探したほうがいいぜ。プライドなんて捨ててよ。」
すると突然、会場は暗くなる。グアンの声が会場全体に響く。
「受験者諸君。はじめまして、わしはグアン。この学園を取り締まる者じゃ。それじゃあ、ルールを説明しよう。ズバリ『生き残れ』じゃ。」
直後、会場に鳴り響くパチンッという音とともに床は光り出す。受験者たちは一斉に転送された。
あのじいさん、最後に俺を見たな。
――
生い茂る木々。湿った土の匂い。
――森か。
スパンッ!
すぐそばで、葉が勢いよく切れるような音が聞こえ、レンは警戒する。
なにか、いるのか?
グシャ!
灰色の塊が槍のように太腿を貫いていた。
「ぐっ!」
遅れて激痛が走る。
血が一気に溢れ出す。
「……っ。」
あの崖だな。
魔法は斜め上から放たれていた。
レンは視線を上げた。
レンは出血した足を気にかけ、茂みで息を殺す。
足が動かない。戦えば負ける。
……、足音は聞こえてこないな。それにこの音、水か? まずはそこに行くか? いや、人が集まる。どうする。
「みいつけた!」
突然、上から人の顔が覗き込んでくる。そいつはバネのように身体をしならせ、逆さの姿勢から地面に着地した。
「さっき俺の魔法に当たったやつだよね? 良かったよ〜。見失うところだった。」
レンは思わず一歩、怪我をした足を下げる。
笑っている。人を殺す顔じゃない。遊んでいる顔だ。
レンは理解した。
これは戦いじゃない。




