12話 新世界
目を覚ますとそこには白い天井。静寂と柔らかいベッドで寝ているという感触だけが生きていることを主張する。
「最近よくこの景色を見る気がする……。」
レンは呟いた。
「それはお前さんがちゃんと魔法を扱えていない証拠じゃろ。」
「うわっ!」
レンが寝ているベッドの横には立派な白髪白髭を持ったおじいさんがいた。
「ここは?」
「学園都市の病院じゃよ。」
「学園都市……。そうだ! アーサーさんは。」
レンは勢いよく身体を起こす。
「そう焦るでない。大丈夫じゃ、生きておるよ。」
「わしからも質問してよいか?」
「はい、良いですよ。」
レンの返事に老人は微笑み言った。
「おぬし、何回死んだ?」
老人は表情を変えることはなかった。
「なんのことです? 俺は一度も死んでなんていませんよ?」
「嘘をつくか。この世界に来る前、そしてここ学園都市に来た時、最低でも二回は死んでおるはずじゃ。」
レンは思わず身体を引く。
老人が、自分の思考を覗いている気がした。
「どこでその力を? 普通に日本で生活をしていたらそこまで磨かれた対人との心理戦のそれを会得する機会などないはずだが。」
「思考が読めるのか?」
レンは簡潔に質問した。
「素晴らしい。思考の切り替えが早い。さて、これはほんのジョークじゃ。本題に入ろうか。神クロノアについてどこまで知っている?」
クロノア――その名前がレンを苛立たせた。
「やめてくれ。ここには沢山の人が住んでいる。死人が出るぞ?」
「挑発か! 知ってて聞いたな、お前は誰だ。」
「そうじゃな。自己紹介がまだじゃったな。わしはグアン。この都市の管理人じゃな。」
「何が目的で俺に近づいた。」
「建前は入学手続きの知らせじゃな。わしはお前さんを知りたいんじゃ。」
「それじゃあ、質問を間違えたな。奴の名前は出すべきじゃなかった。」
「そうかの? 自分では気がついてないかも知れんが、お前さん怒りを出しているように見えて全然出とらんぞ。身体を起こしてから動いとらんじゃろ?」
「お前の魔法はなんだ? 到底一つには思えない。」
グアンの視線の先、花瓶に飾られた花の花びらがひらりと舞い、茎だけが残った。
「わしの魔法は、オルディノヴァ〈新世界〉じゃよ。」
「簡単じゃろ? だが、おぬしには効きにくい。記憶も断片的にしか見られん。起きろと言ってもなかなか起きん。十中八九、神の仕業じゃろう。」
「あいつの話はしたくない。」
「そうか。じゃあ無理にはせん。入学試験について説明をしよう。」




