11話 魔の墜ちた英雄
「これが、レンの力か……。くそっ、左足が巻き込まれた。」
海斗はぼやくように言った。
「空気があの空間に入ろうとしない。世界が修正に間に合っていない。これほどとは、どう見る、くそじじい。」
「気づいていたのか?」
「俺が独り言を喋る奴とでも思っていたのか?」
白髪の老人は海斗の前に姿を現した。
「空気よ、魔王海斗を抑えろ。」
老人がそう呟くと周囲の空気は歪み、海斗を地に抑えつける。
海斗が瞬きをした――その瞬間、老人はすでに目の前に立っていた。
手のひらが海斗に触れる。
「魔力を扱えなくなる。」
「殺せる覚悟もねぇくせに何しに来やがった?」
老人の視線がわずかに鋭くなる。
「いつの話をしている? わしはもうお前を明確な敵と見なしておるが?」
「なら、やってみろよ。自分の手で。」
海斗は冷酷に言い放つ。
その瞬間だった――上空の空間が歪み、二つの影が落ちてきた。
「海斗様、挑発が過ぎます。魔力を操れないのですよ?」
そう言い、黒髪の少女は一歩前に出て老人を見る。
「『反発』」
その少女がそう唱えると老人との間に衝撃波が生まれ、弾き飛ばされる。海斗との距離が空く。
もう一人の銀髪の少女は加えるように言う。
「もし、本当にあの老害に殺す意思があった場合、殺されていた場合もあります。」
そう言い、銀髪の少女は海斗に触れる。すると抑えつけていた空気は元に戻り海斗は解放される。
「申し訳ありません、海斗様。魔法の停止……解除できません。」
海斗は言った。
「動けないままか。まあいい、よく来た。確かに俺は無謀だったかもな……。なあ、グアン。レンはきっとお前には扱いきれない。想像以上だ。お前、いつか殺されるかもな。」
海斗がそう言うと黒髪の少女が魔法を発動する。
「『反発』+『吸引』……『テレポート!!』」
次の瞬間、空間は歪み、三人の姿は掻き消えた。そこには魔力の痕跡すらも残っていなかった。
「海斗よ。お前は一体何がしたいんじゃ? お前が見ている先には何がある? わしには……、分からんな。」
グアンは視線を落とす。そこには気を失ったレンの姿があった。グアンはしゃがみ込みレンに触れた。
「レンよ、目を覚ませ。」




