呪われし高貴なる叛逆者チワワの進化と忠誠
俺は異世界に転生した。
そこは典型的な中世ヨーロッパ風ファンタジー世界だった。
転生の際、神様に特典として貰ったものを確認する。
武器、オリハルコンの剣と盾。
防具、ミスリルの鎧。
そして相棒、呪われし高貴なる叛逆者チワワ。
「キャンッ!」
俺の顔を見上げて、尻尾をブンブン振って、実に愛くるしい大きな黒い瞳を潤ませているチワワ。
チワワとは、本来は誇り高く、勇敢で、忠誠心の強い性格を、人間のエゴによって作られた脆弱な肉体に閉じ込められている、若き日の三島由紀夫のような犬種である。その武士の魂を活かす機会を得るためには、精神に相応しい肉体に改造するしかない。
見よ、俺のチワワを!
その肉体に祖たるテテチを思わせる威厳を纏いながら、アステカ文明の霊を孕むが如く、全てを見透かすような瞳をしている。脆弱だったチワワの肉体が、鉄の鎧を纏ったかのようなドーベルマンの面影を漂わせ、優雅なるパピヨンの余裕を感じさせる芯のある美を体現しているのだ。
チワワは唸った。飼い主である俺に唸るはずがない。必然、モンスターの襲来である。
敵はスライム。
チワワが駆けた! 目をかっぴらいて、ゴールドシップのように顔を斜めにして舌を出した表情で、噛みつきの体勢を取る。
スライムは怯えている。
チワワの俊足はスライムに逃げる猶予を与えない。スライムを牙で両断する! そこから大きくターンして、俺のもとへ駆けてくるチワワ。口のなかにはスライムの核。
俺はチワワを労ってやる。
すると、チワワが進化を始めた。どうやらなつき進化のようだ。
チワワの身体が光のなかで変容していく。
そして……チワワが進化した! 白かった体毛は血のような深紅に染まり、身体は二回りほど大きくなり、全体の造形の調和が取れ、足には補助輪がついて安定感が増した。
「ギャオン!」
顔はゴールドシップのような狂い顔のまま、まるで怪獣のような鳴き声を轟かす、補助輪付き赤チワワ。
否、補助輪ではない。転輪聖王ならぬ、転輪魔王たるに相応しき、輪宝――神聖なる車輪である。




