エピローグ
僕はあらゆる古い文献を読み漁り、とりわけ『イアパーニュ』と呼ばれる地方に強い関心を抱いていた。
この惑星における最東端に位置する島には、さまざまな文化や歴史、学術的に価値のある遺跡が眠っているからだ。
かつて多くの学者たちが歴史を追い、その地へと渡った。
どれほどの危険が待ち受けていようとも、彼らはイアパーニュの深い変遷を確かめたいと願い、未踏の大地へと消えていった。
その勇敢な姿に、僕は賛辞を贈りたい。
この惑星が、かつて『地球』と呼ばれていた頃――
まだ発見されていない研究者たちの膨大な記録や、未解明の“兵器”とされる古代戦争の遺物、さらには医療が必要だった時代の遺伝子や細胞に関する資料が、イアパーニュ地方には数多く眠っているとされている。
僕がなかでも強く惹かれたのは、ある女性が遺したとされる『石碑』だった。
そこにはこう記されていた。
『未来の人々よ。私は諦めない。
エンペラーと呼ばれる世界の制度は、とうとうこの地で潰え、いまや世界の秩序はますます混沌としたものとなった。
もはやこの大戦を免れることはできず、おそらくこの五千年あまりの人類の歴史は、終焉を迎えるだろう。
しかし私は諦めない。
戦争のない世界とは、幻想なのだろうか。互いに争わない人種など、存在し得ないのだろうか。
いいや、きっとあるはずだ。
その答えを私は探した。そして見つけ、この地球へと還ってきたのだ。
私はこの世でただ一人、物理的回帰に成功した者だ。
またいつの日か、必ず人類は復活を遂げると、私は信じている。
私はその未来に、人類の希望にすべてを託し、この石碑の下に、私のすべてを埋葬する』
碑文はここで終わっている。
本来はこれより前文があったようだが、現存するのはこの一節のみだった。
だが、それでも僕の好奇心を満たすには、十分すぎるほどだった。
かつて存在した古代文明。
この石碑ですら、「ただのガラクタだ」と一笑に付す者もいれば、「まだそんなオカルトを信じているのか」とあざ笑う者もいる。
石碑の下に何かが埋まっていたのかどうかは、いまだ明らかになっていない。
イアパーニュ地方の中心地――首都と呼ばれたその場所には、数多くの遺跡が眠っている。
だが、その女性が示した“それ”は、まだ見つかっていない。
僕はいつか学者になって、船に乗り、イアパーニュへと渡りたい。
思う存分に遺跡を探りたい。
かつて“地球”と呼ばれたこの美しい惑星が、再び多くの人々にとって豊かに生きられる場所となるように。
古代の人々が果たせなかった、争いのない時代を――
僕はこの目で見届けたい。
そして、自らの手で創り上げていきたいのだ。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
また次回作や、他の作品もどうぞよろしくお願いします。