終末フェス2025 ~地球の終わり、みんなでノリノリで迎えよう~
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7月5日、、。
[世界の終わりまで、あと数時間]
SNSは、もはやカウントダウンという名のカーニバルだった。
[#終末当日]
[#人類終了]
[#地球バイバイ]
さらには [#ノストラさんありがとう] という謎タグまで踊る。
その中でも、最大級のイベントが開かれていた。
都内の廃倉庫を貸し切った“予言者集結型フェス”。
その名も、、、
[終末フェス2025 ~地球の終わり、みんなでノリノリで迎えよう~]
主催は@Owari_botこと終末ムーブメントの仕掛け人・ミナト。
出演者はセレス・コウ、ヒカリ=ライジング、その他よく分からない自称“星読み系”インフルエンサーたち。
まるで終末を演出するためだけにキャスティングされた、地球最後の顔ぶれ。
「ユウトさん、見てください!みんなローブ着てますよ!」
「あぁ…しかも統一感あるカラー。ちゃんと発注してるな、これ」
「はい、さっきTシャツ売り場の横で販売されてました!」
もはや宗教というより、演劇だった。
舞台セットのようなバックパネル、
「人類の終わりを祝おうぜぇぇぇぇ!」と煽るMC。
開場BGMはなぜか荘厳なオルガンとEDMの融合。
トークライブでは、セレス・コウが
「宇宙の呼吸を感じてください。そして受け取ってください…」と語り、
ヒカリ=ライジングは
「第三の目が今日開く人もいます。ほら、もう開きます…」と瞳を閉じる。
信じる者たちは拍手し、
泣き出す人すらいた。
その光景を見たピヨコとユウトは
「すごい熱気ですね……」
「な。おまけにアイスとカレーも出してるから、もはや夏フェスだよ、これ…ラストはサザンが来て、ホースで水撒くのか??終末最高って!」
「あっ、サザン来るなら、ラストまでいようかな?
てか、終末なのに甘口カレーなんすね」
「世界が終わるってのに、胃腸にはやさしいんだな……激辛食っても、明日のお尻の心配しなくていいのにな…」
俺とピヨコは、取材という名目で会場に潜入していた。
ただし、今回は決定的な証拠を探る目的もある。
こいつらは、終末が来ないのを知ってる。
そして“終末ビジネス”を成立させてる。
それを、暴く。
イベントも終盤。
セレス・コウの“終末スピーチ”が始まる。
金色のローブに身を包んだ彼がステージ中央に立ち、マイクを握った。
「人類の皆さん、我々はついに、ここに来ました!」
「2025年7月5日、人類の終焉と始まりが交差する場所に!」
会場は拍手と「オオオオオ……」という謎の共鳴の声に包まれる。
しかし、俺はスマホを見ていた。
さっき届いた、一通のDM。
送り主は、数日前に連絡を取った“終末フェス”のバイトスタッフ。
その内容が、決定的だった。
「セレスって人、今日このあと、このホテル泊まるっぽいです」
「控室でスタッフに渡してた予約表に
[HOTEL KEIZAN]って書いてありました」
「しかも“展望風呂付きスイート”だってw」
終末を説くその舌の根も乾かぬうちに、
終末後の贅沢タイムを予約してるとは……。
俺は念のためホテルの公式サイトで確認した。
7月5日 17:00チェックイン。
名義も、セレスの本名と一致。
「なぁ、ピヨコ、セレスのやつ……終末後に温泉入る気だぞ」
「やっぱり……もう絶対に終末来ないじゃないですか…生き延びる気マンマンですね」
「世界滅亡予言者が風呂確保してるって、もうギャグでしかないよな……」
俺は迷わず、その予約情報のスクショを撮った。
そして、SNSの裏アカウントで投稿した。
【暴露】終末を語るセレス・コウさん、7月5日17:00から温泉スイート予約済み。
「世界は終わる」と言いつつ、風呂は死守してる模様。
[#終末ビジネス][ #終わるのは信用だけ]
最初は静かだったタイムラインが、
数分後に爆発した。
[これマジ?][風呂とか草]
[もう終わっていいのセレスだけ]
[買ったTシャツ返金しろよ]
[世界終わんないのかいっ!]
やがてイベント会場の誰かが、スマホでその投稿を読んでしまったらしい。
ざわ……ざわ……ざわざわ……
群衆の空気が変わる。
ざわめきが伝染していく。
「ねぇ、セレスさんってほんとに終末来るって……?」
「え、ウソでしょ……あのホテルって、スイート?」
「マジかよ……なんで予約してんの?じゃあ、終末なんて嘘?」
ステージの上、セレス・コウが声を張り上げる。
「皆さん、惑わされてはいけません!これは試練です!惑わす者こそ……!」
、、、が、その声はもはや、みんなには届かない。
誰も彼もが、スマホを見つめ、セレスに口々に言う。
「終わらないんじゃん、世界」
「いや、終わったのはこっちの信頼だぞっ!」
「セレスの終末詐欺ー!」
「早く滅亡させろー!」
終末は来なかった。
代わりに、終末を語った者たちの“神話”が崩壊した。
その日、炎上という名の“現代の審判”が始まった。