拡散屋たちの楽園
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7月5日まで、あと3日。
世界が終わるまでの残り時間をカウントしている奴らは、なぜか全員やけに元気だった。
「ユウトさん、これ見てください!」
タブレットを抱えたピヨコが、勢いよく俺の肩を叩いた。
「また“地球終了カウントダウン”?」
「違いますよ、これです。@Owari_botの投稿!」
[#あと72時間 #7月5日 #人類終了までのカウントダウン]
[限定Tシャツ発売中 → bit.ly/… ]
ユウトが呆れた感じで
「……ちゃ〜んと広告付きなんですねぇ〜」
「ういっ!Tシャツ、スマホケース、あと、、
“終末記念香水”とかまで出してます!」
「なんの匂いだよそれ…嘘臭いってオチか?」
@Owari_bot──通称“終末bot”。
AIが自動投稿してるのかと思いきや、実は裏にマーケティング会社がついていて、投稿内容はすべて人力だった。
それどころか、複数のYouTuberとコラボして
“終末グッズ”を展開中。
この騒動に乗っかる形で、ちゃんとビジネスしてやがる。
[#信じる者は救われる]なんて書いておいて、救われるのは自分の収益だけというオチだな。
「でも、買ってる人多いですよね…Tシャツ、もう在庫切れですって…」
「信じたい人間は、グッズで安心を買うんだよ…
どうせ買ったところで滅亡すんだろ…」
「うーん…私は、普通にアイス買って安心したいっすけどね〜」
「お前はもうちょい不安になった方がいいよ」
それにしても。
こういうムーブメント、昔から何度も繰り返されてるけど、、、
今回の“7月5日終末説”には、どこか引っかかる点があるな。
拡散スピードが早すぎる。
数日で何十万単位のRT。
インフルエンサーが一斉に同じ画像を投稿し、
同じ文言で「信じるか信じないかは君達次第」と締める。
しかも、スポンサーらしきアカウントがどれも一様に
“匿名”で、“問い合わせ先”がGmail。
これは、作られてんな…。
「そーいや、ピヨコ、例の“光の石”って、どこで作ってるかわかった?」
「はい!調べたら、東京の雑貨卸業者が受注生産してるって!」
「やっぱりか。しかも、その会社の他の主力商品が
“2万円の開運ブレスレット”と“ギャル用カラコン”」
「なな、なんというスピリチュアルとギャルの融合……ですね!」
「なにこのジャンル?どんな括り?誰がターゲットなの?」
終末予言は、もはや“現象”というより“商品”だ。
「不安」は最高のマーケティング素材で、
「希望」は最高の売り文句になる。
これは都市伝説という皮を被った、巨大な商売だ。
「でさ、ピヨコ、俺なりに調べたんだけどさ…」
「はい?」
「この終末クラスタたち……7月6日以降の予定を、みんなこっそり立ててるって話、知ってるか?」
ピヨコの目がまんまるになる。
「え、えっ?!なんで?…終わるんじゃないんすか?」
「あいつらの裏アカの予定投稿、スクショ出回ってる。
セレス・コウは地方講演の予定。
ヒカリ=ライジングは6日から舞台出演。
@Owari_botは、7日に“第二弾企画発表”って予約投稿してた。」
つまり、
終末はビジネスだと分かってやってる連中が、ガチでバレかけてる。
だが、それでも今なお“信じる者たち”は絶えない。
そんな彼らは言う。
「君達は試されているのだ」と。
あるいは、「本当にヤバいのは、目覚めた者しか見えない」と。
そうやって信じる人々の“熱”で、
作り物の終末は、本物のムーブメントに育っていく。
そして、
7月5日の夜、、
世界は終わらないが、
一部の人間の“信用”と“再生数”はある意味、爆発することになる。
終末フェス2025 ~地球の終わり、みんなでノリノリで迎えよう~のイベントで…