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空港のラウンジ

外に出てはならないものが外へ

南米ペルー共和国、リマ市、リマ・ホルヘ・チャベス国際空港

2025年2月4日(火)

午後20時15分頃


空港のハナック・ラウンジの2階の手前にあるダイニング席に顔色の悪い初老の日本人男性がマスクせずに時折、乾いた咳をしていた。男性は先ほどフリアカから到着し、航空会社のカウンターで早い日本行きの便のファストクラスチケットをブラックカードで購入し、出発までラウンジで待つことにした。


男性は寒気を感じていた。そして元気なく、椅子に座り、倒れるように頭をテーブルに垂らした。


「ご気分はいかがですか、お客様?」


ラウンジの男性スタッフは英語で男に声をかけた。


「シャワー浴びたい。」


男は元気なく、答えた。


「ご案内いたします。」


スタッフは男はシャワー室へ案内した。


スタッフの名前はサンティアゴだった。30代後半の独身男性で英語はそこそこ話せていたし、外国人利用者に対して親切に声かける理由はあった。

親切にすれば、気前が良い外国人利用者がチップをくれるから。比較的いい給料を支払う高級ラウンジで働いている身であるにもかかわらず、外国人が出してくれるチップは大事な臨時収入だった。


「お客様、こちらです。」


「ありがとう。」


「お客様、他に何かご要望があれば、伺いますので。」


「大丈夫だ。」


初老の日本人男性は元気なく返事した。


サンティアゴはシャワー室のドアを開け、男を入れた。

男は100ドル札を出した。


「ありがとうございます。」


こんな大きな金額のチップを見て、目を輝かせながら、サンティアゴは右手でお金を受け取ろとしたが、男が彼の手を掴んだ。強引に掴んだ手を引っ張り、サンティアゴの右腕を噛んだ。

痛みでサンティアゴは声を出して怒鳴ろうと思ったが、時折凝った性癖の外国人利用者がいいチップを出してくれるのを思い出した。


男はすぐに気づいて、腕を放し、更に100ドル札1枚を出した。


「すみません・・・どうかしていた。」


「いいえ、問題ないです、お客様。それでは。」


男はシャワー室のドアを閉めた。


歯形が残ったものの、十分の治療費をもらったのでサンティアゴはラウンジのバックヤードへとすぐ戻った。シフトはそろそろ終わる時間だったので、シャワー室に入った男のことを含む簡単の引継ぎを行い、スタッフ用のロッカールームへ行き、噛まれた腕を軽くアルコールで消毒し、着替えた。


21時過ぎに空港から出た彼はフォセット大通りでバスに乗り、自宅があるコマス地区へと向かった。

空港から家まではバスで1時間10分かかる距離だった。幸いは乗ったバスが空いていたので座ることができた。途中で眠気及び寒気に襲われる感覚を味わった。


「あのチーノのせいで変な病気もらってないのか?・・・もっとお金もらえば良かった。」


夏の空が珍しく曇っていたので星が見えなかった。


1時間後サンティアゴはバスを降りて、5分歩いて、自宅に着いた。


「お帰り・・・どうした、サンティ(サンティアゴの愛称)、顔色悪いよ。」


身長の低い、肥満体の原住民系の老女が彼に声をかけた。


「ただいま、ママ、ただ疲れているだけだ・・もう寝るよ。」


「ご飯食べないの?」


「今夜はいい・・・」


「熱ないの?」


「大丈夫だ・・・明日休みなので、また明日話そう。」


「わかった、明日の朝、妹のケリーちゃんが来るのよ・・なんか紹介したい人がいるって。」


「また彼氏か・・・いい加減に結婚すればいいのに。」


「サンティ、あなたもよ、彼女いない成熟した30代の独身男性はマリコン(同性愛者の意・軽蔑的)の始まりよ。」


「それは偏見だよ・・ママ・・・大体、俺はマリコンじゃないからな。」


サンティアゴは2階の自室に上がり、独身ベッドの上で倒れるように寝た。



初老男性は1時間ほどシャワー室に籠った。

眩暈と酷い頭痛の病状に襲われたが、しばらく苦しんだ後、その病状が治まった。

スタッフを噛んだことを思い出して、おそらく勘違いされたと思ったものの、大事にしなかったことには安堵した。なぜ噛んだのか、自分でも説明ができないと感じた。


男性は元気になったと感じて、ラウンジへと戻った。

食欲が戻ったように感じたが、チーズを食べてみたものの、味がしなかった。


「あれを見ていたら・・・食べ物の味はしなくなるだろうな。」


男は数時間前のことを思い出して、再び恐怖を感じた。

しばらくカウンターの近くのソファに座った。


「 0時15分発、ニューヨークのジョン F. ケネディ国際空港行きのLATAMチリ LA2468便にお乗りのお客様、ゲートXXまでへお越しください。まもなく搭乗開始致します。」


英語とスペイン語の搭乗の案内がスピーカーでアナウンサーされた。


「そうか・・・早く日本へ帰らないと・・・」


初老の男性、徳森修はラウンジを出て、ゲートへと向かった。

修は自分で気づかなかったが、右目は真っ黒になって、変貌していた。



リマ市コマス区

サンタ・ロサ街

2025年2月5日(水)

午前09時15分頃


30代前半のグラマラスな女性は鍵で玄関の扉を開いた。

彼女と一緒に来た同年代の黒人系男性も敷地内に入った。


「ちょっと待っててね、フアン。ママは来るのは知っているので。」


「わかった。なんか緊張するな。」


「大丈夫・・・ママもお兄ちゃんもいい人たちだよ。」


「それでも緊張するよ。」


女性は男性を扉に待つようにして、家に入った。


「ママ!!、サンティ!!!わたしだよ・・・ケリーだよ!!」


居間には誰もいなかった。キッチンに入ってみたものの、朝ごはんや昼ご飯の支度がされた痕跡がなかった。彼女は心配になり、2階へ駆けあがった。


「フアン、早く、一緒に来て!!」


玄関で待っている男性を呼んだ。男性は彼女の後を追った。


「ママ!!!」


母親の部屋が奥にあったので、真っ直ぐに向かった。勢いよくドアを開けて、入った。

母親がベッドに座っていた、目が真っ黒で体中は噛み傷だらけだが、笑顔だった。

その隣に黒い目をした笑顔のサンティアゴが立っていた。


「どうしたの!!ひどい!!何かあった!!」


ケリーは恐怖と驚きで叫んだ。


男と老女が真っ黒な目で女性を見た、そして叫びながら、彼女を襲った。

1階から上がってきた黒人男性が女性を襲われているのを見て、男と老女を殴ったが、

自分も噛まれて、餌食になった。


数分後、叫び声と騒ぎを聞いた隣人の中年女性が家の玄関まで来た。


「おい、大丈夫か!!警察呼ぼうか?」


玄関が開いてるのを気づいて、敷地内に入った。


「おい!!誰かいる?悲鳴聞こえたけど・・・」


家の中からあり得ない速さで4人の人影が出てきて、隣人の中年女性を倒し、

かみ殺した。女性は悲鳴を上げた。


家の前で騒ぎに気付いて、何人かの近所の人たちが集まった。

誰も入ろうとせず、警察に電話するか否かで話をしていた。

その時、空いていた家の玄関から5人の人影が出てきて、集まった連中を襲った。

拡散されていく・・・

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