表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/68

第66話 取り替え王子とお姫様

「ユージーン、皆に挨拶を」

 王が促すと。

 おずおずとユージーンは進みでた。

 大勢の人間を前にして、緊張で震えるユージーンの背中を、精霊王が後ろからそっと支える。

「大丈夫だよ。いつも通りでいいからね」

 いつもの優しい精霊王の目を見て、ユージーンは少し落ち着いた。

 大きくスーッと息を吸ってから。

「はじめまして、ユージーンです。ボクは、母様のお腹の中で死にかけていたところを精霊王に助けてもらいました。母様は死んじゃったけど、ボクは精霊界で精霊王や妖精のみんなに育ててもらいました。代わりに取り替え子としてやってきたセシルが、ここでみんなに愛されて育ったと聞きました。……ボクはまだコッチの世界には慣れていないけど、立派な王女になってみんなの生活を守ったり助けたりしたいです。ボクの事も好きになって下さい」

 ペコリ。

 ユージーンのありのままの言葉は、民に無事受け入れられて。 

「ユージーン様♡カワイイ!」

「ボクっ娘、バンザーイ!」

 大きな拍手が起こった。

「良かったね、ユージーン」

 精霊王が彼女の頭を優しく撫でる。

「うん!」

 ユージーンは笑顔で頷いた。



 城門にセシルが現れると。

「きゃー、セシル様ー!」「セシル様ー♡」

 若い歓声があがった。

 王が手をあげて、一部の興奮をおさえると。

「セシルは此度、故郷の精霊界に戻ることになった。失いかけた命を救う為、身籠った王妃を精霊界へ迎え入れてくれた日。あちら側のしきたりで取り替え子としてこちらに残ったセシルも、産まれたばかりの乳飲み子であった。私は彼が無事精霊界に帰るまで我が子として育てる決意をした。立派になれたかどうかは皆の意見によるが、優しい子には育ったかと思う。私の我がままで彼には今まで出自を隠していたのだ。セシル、済まなかったな」

「いえ、ち……王様。今まで、兄上と分け隔てる事なく育てて頂いた事に感謝しています。ありがとうございました」

「今まで通り父と呼んでほしい。お前が家族であることに変わりはないのだからな」

 慈しみのこもった王の声。

 後ろに控えた兄も。

「私にとっても、少し生意気な弟に可愛い妹も増えた嬉しい日だよ。それにジュリエッタの件もあるからね。必ず恩を返すから、いつでも頼ってほしいな」

 と笑顔をみせる。

「父上、兄上。ありがとうございます」

 それから、セシルはユージーンの方へと進んだ。

 ユージーンが焦ったように。

「だ、だから言ったんだよ! 君が偽者で、ボクがこの国の本当の……」

 無理矢理、胸を反らすユージーンに。

 ニッコリ、とセシルは笑った。

「認めるよ。キミが本当のお姫様だったね」

「へ?」

 セシルの素直な笑顔にユージーンが戸惑う。

「僕はもう第2王子じゃない。今からは、ただのセシルだ。つまり……」

 晴れやかな笑顔で、きびすを返すと。

「卒業なんか待たなくてもいいって事だよね。結婚しよう、クレア!」

 後ろに控えていたクレアの両手をセシルが握りしめた。

「はい、セシル様」

 素直に頷いて、クレアは花のように笑った。

 広場からその日一番の歓声が上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ