第63話 親子の再会
壇上の豪華な椅子に座った男を、ユージーンは見上げていた。
「父上?」
キラキラした精霊達は見慣れていたが、初めてみる人間の王様の威厳も確かに感じとれた。
さほどキラキラしてはいなかったが、別のオーラのような、誠実な厳格さが見てとれる顔と佇まいだ。
……怖くないし、嫌いじゃない。なんだか好きな感じ。
これが父親なんだ。
「父上!」
もう一度、叫ぶように呼んでみる。
「……ユージーン、よく戻った」
少しだけ湿った声だった。
!?
ユージーンが壇上に駆け上がる。
王は立ち上がって、彼女の身体ごと、その想いを受け止めた。
「成長したな」
ポンポンと背中を叩くと。
ユージーンは涙でぐしゃぐしゃにした顔で。
「父上、遅いよ! もっと早く会いたかったのに! 遅いよー!」
と怒っている。
「そうか、すまなかったな」
「もうボクの事はいらないのかもって、恐かったんだからね! 迎えに来てくれるのを、ずっとずっと待ってたんだからね!」
「私もお前の成長を待っていた。すべて混乱なく受け止められるこの日をどれほど待っていた事か……愛しい娘よ」
「うわーん、父上ー!」
ユージーンは子供のように大泣きした。
ユージーンと共に壇上から降りた王が、精霊王の前に立った。
「精霊王。娘をこのように大切に育ててくれたこと、心より感謝します。ありがとう」
「こちらこそ。セシルを良い子に教育してくれたから、感謝しているのは同じだよ」
ユージーンが王の袖を引いて。
「セシルって、あの生意気な子供だよね。父上が育てたの? 失敗したんじゃない?」
精霊王が苦笑いしている。
「……とまあ、こんな感じに自由に育っちゃったんだけど」
「子供特有の正直さだ、悪いことではない。広い世間をみて様々な事を経験していけば、口に出す前に考えるようになるだろう。この優しい娘なら、じきに相手の気持ちを汲んで言葉を選ぶ事もできる」
「それは親馬鹿じゃなく?」
とからかう精霊王に。
「王の立場で様々な人間をみてきた者としての意見だ」
しれっと答えて、王はユージーンの頭をポンポンと撫でた。
「父上に褒められた? ような気もする」
ユージーンが首をかしげる。
「一緒に学べる友のような家庭教師が必要だな」
王の言葉に、後方に控えていた宰相が。
「はい、適任候補を検討します」
と答える。
「クレアじゃなきゃダメだよ。会った事も無いお嬢様なんか、ぜーったいにイヤだからね!」
「アークライト侯爵家のクレア嬢か」
王はクレアを見て。
「オーランドが迷惑をかけたね。詫びが遅れて申し訳ない」
「いいえ。今は、セシル様に良くしていただいております」
「そうか、あやつの想い人であったな。迷惑はかけておらんか?」
「はい」
そこにユージーンが割って入る。
「かけてるよ、思いっきり。あんな子供が、クレアの婚約者だなんてふれ回ってるんだから。クレアにはいい迷惑だよ」
「ユ、ユージーン様」
「さま!? 様ってなに、クレア……」
騒ぐユージーンの頭に王が手を乗せて、静かにさせる。
「婚約はセシルから? 受けたのか」
クレアに尋ねる。
「はい」
クレアは正直に答えた。
「……そうか、あやつもついに好いた相手と婚約することができたか。喜ばしい事だ。どうか、あの子の側で支えてやってほしい。これからあの子の進む道は、複雑に変化するだろうからな」
頼む、という父親の願いに。
「はい。ずっとお側で、ともに支え合って生きていきます。私から離れることは生涯ないと、誓います」
「ありがとう」
王から握手を求められ、その手を握る。
頭から手が離れたユージーンが。
「ちょっとー。クレアは、ボクの家庭教師じゃないのー?」
とふてくされている。




