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第60話 レニーの告白

「クレアの行き先は!? 早く向かうよ、ゼノ」

 セシルがゼノの腕を掴む。

「今すぐか? 忙しいな」

 バタバタしている彼らから、一歩身を引いていたレニーが。

「セシル様」

 と主の名を呼んだ。

 ちょうどニアも、セシルの前に立ちはだかって。

「こら、待て小僧! コイツには今から俺様が説教するんだ。お前は後にしろ、後に」

 と、通せんぼしている。

「そんなのは無事に帰ってからすればいいよ。ゼノ、心当たりがあるクレアの移動先は遠いの?」

 クレアを追うことに集中しているセシルは、レニーの様子に気づかない。

「セシル様。こちらを離れる前に、会って頂きたい方がおります」

「レニー、急ぐからそれも後で。ゼノ、クレアはどこに……」

「いいえ、セシル様の出生に関する事ですので」

 その声は人の心を振り向かせるのに充分な重さを含んでいた。

 セシルも思わず振り返る。

「優先順位はこちらになります。さほどお時間は取らせません」

 レニーは真剣だった。

 これまでに感じたレニーの違和感を、セシルは思い出した。

「……このタイミングでか?」

 心当たりはあったが、ずっと考えないようにしてきた事だ。

 先送りにしてきた事実を、当事者のレニーが答える気になったのだろうか。

 セシルはイヤな予感に身構えている。

 空気をよんだゼノが。

「俺はここで説教されてるから。話しが終わったら戻って来いよ」

 とニアの面倒を引き受ける。

「セシル様、こちらです」

 レニーがたった今入ってきたばかりの温室の扉を開いて、そこに控える。

「……」

 セシルは促されるまま、温室を後にした。



 案内されたのは、桜色の扉の前だった。

 優しい色合いをした両開きの扉は、少し開いている。

 いつも冷静なレニーが、首から下げた小さな鍵を折れるほどの力で握りしめて。ワナワナと震えていた。

「これは一体……あのイタズラ者たちの仕業か!?」

 レニーがいつも離さなかったあの鍵は、この扉のものだったのか。

 嫌な予感に近づくような重い足どりで、セシルは部屋に入った。

 そこはピンクと白を基調にした、少女のためのような部屋だった。

 中央のベッドには。

 インテリアの一部であるドールかと見間違うような、美しい少女が横たわっていた。

 そこに眠る、少女のようなこの部屋の主を見た時。

 セシルの予感は確信に変わった。

「……これは誰だ?」

 ふわふわした銀色の髪は、自分のダークシルバーの髪よりも明るかったが、その寝顔は。

 自分自身の顔と、それぞれのパーツが良く似ていた。

「お母様です。貴方はここでお産まれになった、この精霊界の皇子です」

 これまでレニーが隠してきた真実が、ついにその口から告げられた。

「……彼が正しかったのか」

 父親と兄。親しんだ者が他人だったという事実には、多少の動揺はあったが。

「昔からささやかれていたことが真実だっただけに、そこまでの驚きはないな」

 真実はセシルの中にストンと収まった。

 レニーが密かに胸を撫で下ろしている。

「貴方の本当のお父様は、お祖父じい様にあたるセルシオ様です」

「お祖父様? ってことは、僕は父上の弟になるのか。……一応、血はつながっていたんだな」

 どこかホッとしている自分を自覚して。

 ちゃんと家族だったんだな、とセシルが振り返る。

「セシル様のお名前は、精霊王がセルシオ様からとっておつけになりました。精霊王は、貴方の伯父君にあたります。そしてお母様は、私を拾って育てて下さった恩人でもあります」

 レニーがすべてを語り始めた。

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