第53話 手料理
お昼に。
ユージーンの部屋で着替えた後、彼女の手料理を食べたクレアは幸せそうな笑顔で。
「玉ねぎを飴色になるまで炒めたオニオンスープは、甘くてコクがあって。トリュフの濃厚で上品な香りが後をひくパスタも、とっても美味しかった。ユージーン、ご馳走様でした」
「でしょ? ボク、料理が得意なんだから」
ふふん。とユージーンが鼻を高くしている。
テーブルの上に座って、しつこくお皿を舐めていたニアが。
「俺様、ゆで卵とコーンスープしか食ってないぞ! 肉を出せ、肉を!」
ジタバタと喚いた。
「仕方ないでしょ。玉ねぎは駄目だって言うし、動物とはみんな仲良しだから、お肉なんて無理だし。卵だって、妖精達がわざわざ無精卵を集めてきてくれたんだよ」
ニアはテーブルの端まで行くと、飛び下りる態勢で。
「肉も食えないこんな場所、やはり長居はできん。帰るぞ、小娘」
とクレアをみる。
あわててユージーンが引き止めた。
「待ってよ! そうだ、城の中を案内してあげる。開かずの扉もあるんだよ。見たいでしょ?」
「開かずの扉? そんなの前はなかったぞ」
ニアは少し興味を持ったようだ。
ユージーンはポケットから銀色の鍵を取り出して。
「これ、パックが精霊王さまの部屋で見つけた鍵なんだ。絶対、開かずの扉の鍵だと思って試したんだけど、違ってさ。なら、もうひとつの隠し扉だっていって扉を開けたら、クレアがいたんだよ。あと普通の人と、嫌な男もね」
クレアが笑って。
「あの人はね、悪い人という訳ではないのよ」
「嫌な男だった」
ユージーンがキッパリと言う。
開かずの扉の前についた。
2階の一番奥という目立つ場所にあるその桜色の扉には確かに鍵がかかっていた。
「ね、ここ。なんか怪しいでしょ。開けてみたくなるよね」
「そう、かな?」
ユージーンの言葉に首をかしけるクレア。
ニアがクレアの肩に飛び乗って。
「ここが誰の部屋か知ってるぞ。なんで鍵がかかってるんだ?」
「えっ、ニア知ってるの?」
ユージーンが驚いたようにニアを見る。
「クレア、ここを開けてくれ。確かめたい事がある」
ニアに珍しく名前で呼ばれて、クレアは戸惑った。
「でも、鍵をかけた人がいる訳だし、無断で鍵を開けるなんて……あっ」
頭に浮かんだ顔があったが、あわてて首を振る。
「クレア?」
「小娘!」
ユージーンとニアが距離を詰めてくる。
「な、何でもないの、本当に」
首をかしげて考えていたニアが。
ピン! とヒゲを弾いた。
「わかった、あの連中の誰かだな!」
「違うから、ニア!」
慌てるクレアの肩からニアが飛び降りる。
「行くぞ、パック!」
「イエッサー!」
パックを背中に乗せて、ニアが全速力で逃げていく。
ユージーンも。
「待ってよー! ボクを置いていかないでよー」
と追いかけていく。
クレアもあきらめて歩きだした。
ニアはパックの案内で、夢の庭に通じる扉にたどり着いた。
「ここか? さあユージーン、鍵をだせ」
「イエッサー、お兄ちゃん」
ユージーンが鍵を回して。
「いい? 開けるよー?」
勿体ぶってから。
「はい、開けたー!」
扉を開いた。
その目の前には。
「……またお前か」
釣り糸をたらした、目つきの悪い男がいた。
「げ」
ユージーンの口からカエルのような声がでた。




