第48話 おしゃべりな案内人
クレア達は深い森の中にいた。
樹齢何百年という巨木に囲まれて、巨人の国にでも迷いこんだような気分だった。
深緑色の苔や巨大な樹木の落とす影が、鬱蒼とした森の濃度をさらにあげている。
ユージーンの眉がパッと上がった。
「母様の森だ!」
「先に見せた方が説明も楽だろ? ユージーンはそういうの苦手だしな」
黄緑色の小さな妖精はフヨフヨと浮かんでいる。
クレアの肩からニアが降りて。
「ここ、ニーナの墓がある森じゃないか?」
と周りを見回している。
「そうだよ。ニアもたまには墓参りくらい来いよ、ユージーンなんか毎日来てるぞ」
ニアの親がわりだったニーナも、この森に眠っている。
クレアは、パジャマに絹のガウンを羽織ってスリッパをはいている自分の姿に。
「パジャマのままだったわ、どうしよう」
と顔を赤くした。
「うん、かわいいよ?」
ユージーンが笑っている。
今さらあわてても変わらないので、クレアはあきらめることにして。
足元に気をつけながら、先頭を飛んで道案内するパックの後をついていく。
すぐに、低い石碑の前に辿り着いた。
石には子供のような字で「ニーナ」と彫ってある。
珍しく尻尾を垂れたニアがその前に座り込んで、しんみりと石碑に話しかけた。
「ニーナ、久しぶりだね。聞いてよ、いま俺ニーナにそっくりな人間と暮らしてるんだよ。ディーナって言うんだけど、彼女ってニーナの生まれ変わりだろ? 俺、すぐにわかっちゃったんだからな」
パックが石碑の周りをクルクルと落ち着きなく飛び回る。
「なあなあ、挨拶は終わった? 早くユージーンの母ちゃんに会いに行こうぜ」
「ブンブンうるさいぞ、豆虫」
ニアがその辺の団子虫を拾ってパックに投げつけた。
ニアが増えたみたい、とクレアは思ったがパックはニアよりも話し好きだった。
聞くよりも先に、なんでも説明してくれる。
「ニアの育ての親だったニーナは、人間なのにめちゃくちゃ魔力が強かったから魔女になったんだ。だからお墓があるこの森にも、微量に魔力が拡散されて。たまたま近かった古木のジーさんなんか、魔力をたっぷり吸収しちゃってさ。ユージーンの母ちゃんが産後で死にかけた時には、母ちゃんと融合してユージーンにお乳まであげてたんだぜ」
「ほお、あのジーさんが」
ニアが、ふむふむとうなずいている。
「つまり俺たちは、兄弟みたいなもんなのだな。もちろん俺様が兄貴で、お前は弟分だぞ」
「兄貴!? カッコイイ!」
ユージーンの瞳がキラキラしている。
クレアが頭を抱えて。
「ユージーンは、もう少し考えてから行動した方が後悔しないかも。それとニアは間違えてるから」
「なんだと小娘! 俺様の方が先に生まれたんだから兄貴だろ! 絶対にここは譲らんぞ!」
「そーじゃなくて、ユージーンは妹さん」
「え? お前、女なの?」
「そうだよ、お兄ちゃん。ボクはかわいい妹だよ」
ユージーンがニコニコしていう。
「紛らわしいなぁ。小僧なんか完全に勘違いしてただろ」
「あっ、それであんなに……」
セシルがユージーンに冷たかった理由がやっとわかった。




