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兄の婚約破棄で僕のルートが始まる!……はずだったのに、彼女が辺境に逃げてしまった件 取り替え王子と赤毛の令嬢  作者: (//∇//)もじ
精霊界編

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第47話 シーツの中の秘密

 皆が見守る中、クレアの目蓋まぶたがゆっくりと上がっていく。

「クレア!」

「……セシル様?」

 セシルの声で目を覚ましたクレアは、寝室に集まっている顔ぶれにキョトンとしてから。

「あっ、ユージーン」

 聞き覚えのない名前を口にして、身体を起こした。

 膨らんだ羽根布団を、そっと覗くと。

 にゅっ。と布団の中から白い腕が伸びて、クレアの首に巻きついた。

「!?」

 セシルが腰の剣を掴もうとして、持ってきていないことに気づく。

 その間に。

「失礼」

 夕月がクレアの肩にガウンをかけて、パッと布団をめくる。

 そこには。

 クレアの首に腕を巻きつけた金髪碧眼の見目麗しい若者がいた。

 好奇心旺盛な瞳で周囲を見回して。

「ここが人間界? わあ、クレア以外にも綺麗な女の人がたくさんいるんだね」

 とニコニコしている。

 思わぬ場面に言葉を失っていたセシルが、ハッと我にかえって。

「クレア、無事!?」

 とユージーンを強引に引き剥がす。

「ちょっと触んないでよ! キミ誰!?」

 ユージーンがセシルの腕を振り払って警戒している。

「アストリア国第二王子のセシル。クレアの婚約者だ」

 昨日婚約したばかりのセシルがよどみなく答える。

 ユージーンが動きを止めて、じっとセシルの顔を見た。

「……こんな子供が婚約者?  かわいそうだね、クレア。親が組んだ縁組で困っているなら、ボクがお嫁さんにもらってあげるよ」

 クレアの肩にアゴを乗せて、子犬のように見上げる。

「ユージーン。この方は大切な婚約者で、親の指示でもありません。かわいい冗談はいいけど、意地悪は言っちゃダメよ」

「はーい」

 舌をペロッとだして、肩におでこをすりすりと擦りつけるユージーン。

「クレアは甘過ぎるよ!  これ以上クレアに触ることは僕が許せない!」

 イライラしながらセシルが、ユージーンの腕を掴むと。

 ユージーンはバッとそれを振り払って。

「何が第二王子だ、偽者じゃないか! ボクは全部知ってるんだぞ、取替っ子!」

 ユージーンがセシルを指差しながら、彼への禁句を口にした。

「ユージーン。耳にした噂を鵜呑みにしてはダメよ」

 クレアがユージーンの腕をそっと降ろして諭そうとするが、ユージーンはキッパリと。

「違うよクレア、あいつは本当に偽者なんだよ。クレアまで騙すなんて男の風上にも置けない奴だ。すぐにハッキリさせてやるからな、この顔を覚えていなよ!」

 セシルを睨んで啖呵たんかをきると。

 自分の肩の辺りにむかって。

「パック、ついてきてるんだろ? クレアとボクを精霊界にもどしてよ!」

 見えない何者かに呼びかけた。

 『ポン!』

 と音と共に。

 トンボのような半透明の羽根が生えた、小さな妖精がユージーンの肩に現れた。

 黄緑色の服を身につけ、帽子をかぶった少年のような妖精だ。

「ふーん。なんか面白そうだから、言うことを聞いてやってもいーよ」

 ユージーンの肩の上に腰をかけて、組んだ足をブラブラさせている。

 ディーナの足元から、ニアがひょっこりと顔をだして。

「お前、パック?」

 とベッドに飛び乗る。

「まだ生きてたのか、豆粒のクセにしぶといな」

 パックと呼ばれた妖精は嬉しそうに飛んでくる。

「ニアだ! もー、ニアがいなくなってから毎日退屈で死にそうだよ。また一緒にイタズラしようよ!」

 ちっちっち、とニアは顔の前で指を振った。

「残念だが、今の俺様にそんなヒマはない。そばで守らなければいけない者ができてしまったからな。誘いはありがたいが、ここを離れるわけには」

「気をつけて行くんだよ、ニア」

 ディーナが途中でさえぎった。

「ディーナ!? ひどいや! 俺がいないと淋しくて眠れないでしょ!」

「そうだね、だからクレアと一緒になるべく早く帰っておいで。今はあんたしか頼りになる者がいないんだから」

 ディーナに撫でられて、ニアは嬉しそうだ。

「しかたないなぁ。すぐに戻るからね。ディーナも、うっかり死んだりしないように気をつけてよ。もう年なんだからね。ゼノ、しっかりディーナを見張ってるんだぞ! 傷でもつけたら、寝ている間に身体中の毛を全部剃ってやるからな!」

「俺は留守番?」

 入り口近くの壁にもたれていたゼノがガッカリしている。

「いたずらは、ほどほどにね」

「うん。ディーナ、いってきまーす!」

 ニアがクレアの肩に跳びのった。

 その流れにセシルがあせる。

「待て、クレアを巻きこむな!」

 ユージーンがクレアの腕に抱きついて。

「べー」

 と舌をだす。

「すぐ戻りますから。ご心配はいりません」

 クレアがセシルに笑顔を見せた直後。

 ポン! と音がして、クレアたちの姿が消えた。

「クレア!!」

 セシルの手は虚しく空を掴んだ。

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