第35話 祭りの準備
「今年は何をやるんだい?」
家まで歩きながら、ディーナとゼノが話している。
「メインの食堂では、ハーブティーとスコーンを提供しようと思って。焼き立てのスコーンを割って、たっぷりのクロテッドクリームとジャムをのせて食べる王道スタイルに、ドライフルーツを混ぜて焼いたり。あとチャイもいいな」
楽しそうな顔でゼノが説明する。
「ジャムとハチミツにも凝ってみたから。食べ比べたり、別売りもできるぞ」
「みんなにも、スコーンを作るコツを教えてやっておくれ」
「そうだな、また料理教室を開くか」
アレとアレを用意して、とゼノが頭の中でシュミレーションを始めている。
「お土産にはハーブの種でも配ろうかね。緑化の向上にも役立つだろうから」
最近は、わざわざ遠くから訪れる客も増えている。
「楽しみだな」
「頼りにしてるよ」
祖母とゼノがこんなに仲が良かったなんて。
とクレアは驚いていた。
そういえば祖母は昔から時々、珍しいお菓子をお土産にくれた。
「お帰りなさーい。あれ、夕月はー?」
庭で薪を割っていたルディが手を止めて聞いた。
さっきまでシアもいたが、ラルフが恐くて今は隠れている。
「馬を連れて後から来るわ。ゼノと私は先に飛んできたから」
「飛んできたの?」
ルディが興味深そうにゼノをみる。
「男を抱えるのはヤだから、飛ばないよ」
「たしかに、それはねー」
とルディが笑った。
しばらくして夕月が戻った。
窓から覗いていたニアを捕まえて、みんなと合流した。
祭りの準備が始まった。
調理場ではゼノが、スコーンの作り方のコツや、屋台で出すクレープの焼き方などを主婦達に教えている。
シアもこっそりと混ざってメモをとっていたが。すぐにゼノと打ち解けて、楽しそうに話していた。