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8. 夜明

 夢を見た。そんな気がする。

 体を起こし、目を擦りながら、そんなことを思う。

 視界は真っ白だった。けど、心はポカポカしていた。体も熱かった――特に、両の手が

一際に。川のせせらぎが聞こえた。水飛沫が飛んでいた。堅い木の上で、不思議に思った。

 「何で? どうして」――

 「..................大丈夫か?」

 低い声をきっかけに目を見開く。

 声のした方を向くと、オジサンが心配そうに屈み込んでいた。

 「キャー」と叫び、はたきたくなるのを耐え忍ぶ。

 その手で張り詰めた自分の顔に触れる。

 信じられない程の汗だ......本来二重の筈の瞼も引っかかって開き切らない。

 それに、何故か泣いていた。

 「かなり魘されていたが」

 「いえ――大丈夫です」

 オジサンの方を向き直し、正座の格好になる。

 「そうか。ならいいんだが」

 「はい。それで、どうかされました?」

 「あぁ、学校の件なんだが――今朝、嘆願書を出してな。返事は早くて明日になると思

うから。今日は一日好きに過ごしてくれ、とのことだ」

 「はい......ありがとうございます」

 「いや......いいんだが――体調には気を付けろ......この町は知らず知らずのうちに体を

蝕むからな――では、また」

 「はい......」

 何か言いたくて、忘れて。

 そのうちにオジサンは居なくなっていた。

 その代わりに『いーだ! クソジジイ! さっさと死んでしまえ!』という有り得ない

罵声が脳内に響き渡った。

 そのおかげで目が覚めた。

 私は縁側へとつながる障子を勢いよく開く。

 いつも通りの曇天。

 その代わり、一筋の光が、まるで刃の様に私のことを貫いていた。


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