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異世界帰りの勇者、恋愛に現を抜かす  作者: ミゾレ
第二章 林間学校編
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第10話 ライバルが現れてからがラブコメの本番だろ

「五織くん! 誕生日おめでとう!!!!」


 異世界から帰ってきた長い1日を超えると、あっという間にゴールデンウィークも過ぎて、今日は5月15日。五織の誕生日だ。

 小さめのホールケーキには花火がバチバチと光っており、教室でこんなことして大丈夫かと若干焦るが、五織が吹き消すか迷っているうちにすぐに消えてしまった。


「ありがとう! 入学してすぐだから祝ってもらえるなんて思わなかった!」


 小さめのホールケーキを家庭科室から借りた包丁で5等分に切り分け、紙皿に乗せたそれを貰うと五織はお礼を言う。


「何言ってんだ。もう1ヶ月も経ったし、友達の誕生日は祝うに決まってんだろ」


 四暮がそう言うと、皆もうんうんと頷いた。


「しかもこれ、四暮くんの家のケーキなんだって。すごい美味しそう!」


「うちの自慢のケーキだぜ。ご賞味あれ!」


 澪の言葉に得意げにそう言った四暮の合図と共に皆、そのケーキを口へと運んだ。


「美味しい!」


 そのチョコのケーキは上に乗ったチョコクリームにオレンジピールが混ざっていてほのかな酸味とチョコの苦味が合わさって大人っぽい味であり、かなり美味しい。(ただ、ほのかに煙臭いが)


「大人っぽい味付けだね」


「ウチは普通のショートケーキとかが良かったかも」


「おい、コラ。うちのケーキが食えないってか?」


 正直、五織もこの手の大人っぽい味付けは好きではなかったが、異世界での2年間で味覚も変わったらしい。それとも友達がくれたものだからなのだろうか。とにかく、美味しいのは確かであっという間に皿からなくなっていた。


『誕生日おめでとう!』


 それはイオリが異世界で過ごした2回目の誕生日だった。1回目はまだレイと出会ったばかりでそんな話をする仲ですらなかったから、すごく嬉しかったのを覚えている。


『え。アンタ今年17歳なの? 私より年上?! 信じらんないだけど』


『言ったって一個でしょう? レイだってもう立派な大人だから変わらないじゃない』


『……気に食わないわ』


 この時にはパーティのメンバーも増えていて、不満げにするレイをメンバーが宥めていたのをよく覚えてる。


 ともあれ、17歳の誕生日を祝ってから16歳の誕生日を祝うことになるとはなんとも妙な話だ。


(あれ。そういえば俺って精神的には18歳ってこと?)


 学生時代のこの大事な思春期をもう通り越してしまっていることに一瞬不安が過るが、まぁ1、2歳の差なんて大したことないだろうとすぐに逸った気持ちを落ち着かせる。


「お、五織はもう食べ終わったのか。良かったら俺のも食うか?」


 そう言って四暮は嬉しそうに自分の皿を差し出す。どうやら一口も手をつけてないようで、二麻はその皿を見て目を細めた。


「アンタ、食べないの?」


「まぁ自分で作ったしな、味見はしたし」


「え?! 四暮くんの手作りなの?!」


 澪が驚いた声を上げると五織もまた驚いて目を丸くした。流石はケーキ屋の息子か、もう十分にお店レベル、いやその中でも上のレベルだろう。


 澪や遥が声を上げて誉める中、二麻は自分の皿にまだ残ったケーキを、胸を張ってえらそうにしている四暮の口に突っ込んだ。


「む。ご」


 四暮はゴクリと飲み込むと、うへーと苦い顔を浮かべた。


「アンタ、自分で作ったくせにこの味苦手なのかよ」


 二麻が呆れ顔でそう笑うと、四暮は横にあったペットボトルの緑茶を勢いよく飲んだ。


「別にいいだろうが!」


「どーせ、ちょっとオシャレっぽいの作って自慢したかったってところだろ?」


「っ――」


 どうやら図星なようで四暮は顔を真っ赤にすると、悪戯に笑う二麻との間に五織が入る。


「いやでも、ほんと美味しいよ。四暮の分も是非いただくよ」


 そう言って五織はパクパクとたいらげて見せると、四暮は満足そうに鼻を鳴らした。


「そういや、五織が五の織って書くのは5月生まれだからってことなのか?」


 唐突な質問に五織は少し目を見開くと、「そうそう」と頷いた。


「うん、ホントは5月10日が出産予定日だったらしくて、縦の糸と横の糸を織ると十になるから五織だったみたい」


「へぇ、洒落てるな」


 結局5月15日に生まれたわけだが、それはそれで5月を折り返す日ということで五織のままでいいかということになったらしい。でも、5月は31日まであるから綺麗に折り返せているかといえばそうではなくて、そういうところは若干てきとうなのが、両親らしいなと五織は思っている。


「あ! 私も似たようなもんだよ! 10月の30日生まれだからみ(3)お(0)」


「いいな、そういうの。ウチは別に関係ないな。強いて言うなら次女だから二麻」


 二麻がそう言うと遥が「じゃあ」と聞く。


「お姉さんは1がつくとか?」


「いや、全然」


「そうなんだ」


「まぁ、二麻って名前は気に入ってるからいいんだけさ。遥はどーなの? なんか意味があったり?」


 二麻がそう問うと、遥は「うーん」と考えたようにして、


「いや、僕の名前は生まれた日とか次男だからとかそういう意味はないかなぁ」


 そう言ってぽりぽりと頬をかく。

 それはそうだろう。名前の付け方など人それぞれで別に何かに文字ったりする必要もない。なんとなく聞こえが良いからとか、親の趣味嗜好で決まっても全然良いのだ。


「でもそれで言うと四暮の名前の由来って?」


「ん? 4月30日生まれで4月の暮れだからだよ」


 遥の問いに四暮はあっけからんと答えると、その場にいた全員が固まった。


「「「「言えよ(言ってよ)!!!!」」」」


 4人の声が重なって教室にこだました。



 ▶︎▷▶︎



「てか、来週からテスト週間だな」


 五織の誕生日を祝ったその週の土曜日。5人は遅れての四暮の誕生日会でカラオケに集まっていた。

 もうお祝いムードは落ち着いて、食べ終わったデザートが皆の前には置かれており、話題はすっかり再来週に控える中間テストの話だ。


「まだ入って2ヶ月で何をテストするんだーって感じだよね。でも赤点は取らないように頑張らないと」


 澪がグッとガッツポーズをして鼻を鳴らすと、二麻は飲んでいたアイスティーをテーブルに置いて、口を開く。


「澪は大丈夫でしょ。ウチは古典がキツい。全然覚えられん」


「でも、助動詞覚えればなんとかなるでしょ。ほら、るーらるすさす♪ って歌で覚えれば」


「あまりにもゴリ押し過ぎて全然頭入んねーんだよ。アレ」


 古典の難点といえば、やはり助動詞を覚えることだろう。逆にそれさえクリアしてしまえば簡単に点は取れるからと古典の先生が気を利かせて歌で覚える方法を教えてくれた。授業の度にその歌を毎回歌わされるが、これがどうも歌というより呪文のような感じで、五織も頭に入れるのはなかなか苦労した。


「地味に教科が多いのもキツいよな。物理基礎、化学基礎、生物基礎。なんで3分割にすんだよ」


 緑英高校の1年生の中間テスト科目は全部で11科目になる。現代文、古典、数学A、数学Ⅰ、物理基礎、化学基礎、生物基礎、歴史、世界史、英語、情報。これが期末になると家庭科と音楽、美術、保健体育と4つも増えるから中間テストの方がだいぶ楽だが、それにしたって中学の時はメインとなるのは5教科くらいのもので、他の副教科は教科書をちょっと読んでおけば何とかなるようなものだったのだ。(学校によるとは思うが)どちらにせよ、高校に入ってから急に教科が増えるんだから、そりゃ進学校の生徒とはいえ頭を抱える生徒は多いだろう。


「でも五織こそプレッシャー凄いんじゃないか? なんたって次席だろ?」


「いや、そこにプレッシャーはないよ」


「おお、流石だな」


 そう、五織の問題はそこにはない。次席だからどうこうではなく、七瀬菜月に勝つ。ただそれだけなのだから。

 今までも彼女を目指して戦った末に2位であったのに過ぎないのだから、結局五織としては彼女に勝てないのなら2位でも最下位でも大差ないのだ。


「今回こそ、絶対勝ってやる」


「おお、燃えとる」


 打倒七瀬と意気込んでいる五織に四暮は引き気味にそう言うと、「あ、」と何かに気づいたように壁にかけてある時計に目を向けた。


「五織、時間大丈夫か? なんか集まりあるって言ってたけど」


「あ! やばい。ありがとう四暮」


 そう言って五織は身の回りの物をパタパタとバッグに詰めて忙しなく支度をしていると、するりと机から落ちたペンケースを澪が見事キャッチして、五織に手渡す。


「テスト前なのに大変だねぇ」


 手渡されたペンケースを受け取ってお礼を言うと、五織はバッグのチャックを閉める。


「いや、俺が入部に遅れたのがいけない。なんなら部長に申し訳ないくらい」


「そっか、部長さんに時間作ってもらってるんだ。部長さんて生徒会長もやってるあの人だよね?」


「そうそう」


「え、生徒会長って2年生の学年一位だろ? もしかして首席次席じゃないと入れないとかあんのか?」


「いや、たまたまだって、関係ないよ」


 生徒会は生徒からの投票形式であるためにその節があるかもしれないが、ただの部活に学力で足切りしていたらそもそも人が集まらなくて廃部一直線だろう。それに実際に部長以外のメンバーはほぼ幽霊部員で部室にいないから、もう今の時点で廃部になる可能性すらある。


「それじゃ、また明後日。学校で!」


 バッグを背負って、皆んなに挨拶して別れると、五織は学校へと足早に向かった。



 ▶︎▷▶︎



「すいません。ギリギリになっちゃって!」


 部室のドアを勢いよく開けて、五織は謝罪しながら中へと入る。

 部室内に香る酢酸のような匂いが鼻をツンと鳴らして、思わず咳込みそうになるが、ギリギリで耐えて五織はサッと鼻を摘んだ。


(なかなか慣れないな)


「おー、五織。お疲れさん! ちょっと待ってろ。乾燥だけさせてくれ」


 部室内は光がほとんど入らないように窓や入り口の窓枠が黒いカーテンで覆われているが、それとまた別に黒いカーテンで覆われた区画があり、そこからひょこっと顔だけを出した部長こと十河(そごう)久遠(くおん)は五織を見つけてそう言うとまたすぐに顔を引っ込めた。


「あー、ゆっくりで大丈夫ですよ」


 そう言って五織は近くの机に荷物を下ろすと、ふと暗い部室の中で何かが動いて五織はギョッと飛び上がる。


「うお! びっくりした!」


「わ。急に大声出さないでください」


 互いに驚きの声を上げて、その声から五織は相手を察する。


「七瀬。いたのか」


 そう、五織がこの部活に入った最大の理由。それは他でもない七瀬菜月がこの部活にいたからだ。


「繰生さんがカメラの使い方を習うと聞いたので、ついでに私も教えてもらおうかと」


 自分が選択した道であるから今更どうこう言ってもしょうがないが、繰生()()というその他人行儀な呼び方に未だ違和感を覚える。その違和感をギュッとしまい込んで、「そうなんだ」と返事する。


(ピンを渡された時からそうだけど、やっぱキツイな)


 記憶を抹消した後の菜月は、明らかに接しづらかった。特に特待生のピンを渡されたときは警戒度マックスといった感じで、「お近づきの印に一緒に帰ろう」と誘うと、「は?嫌ですけど」とキッパリ断られた。それに加えて、どうやら澪達の誘いも断ったらしく、菜月はすっかり孤立してしまっているようだった。

 記憶を抹消する前も別に菜月の中では知り合いの1人程度にしか思われてなかったと思っていた五織だったが、今の対応を考えると好感度はそれなりに高かったのかもしれない。本当に今更ながら勿体無いことをしたと若干の後悔がある。


「おうおう、じゃあ2人揃ったし、始めるかー」


 久遠は黒いゴム手袋を外し、カーテンの奥から姿を現すと、しっかりとカーテンが閉まっていることを確認してからランタンの明かりを点けた。

 ランタンを点けたとはいえ、まだ教室は薄暗く、ランタンの周りに陳列されたカメラだけがようやく見えるといったくらいだ。


 そう、五織が入部したのは写真部だ。特に五織自身、写真に興味があったわけではなく、入部した理由は前述した通りであるが、どちらかと言えば菜月が写真部に入部したことが意外だった。

 そもそも部活に入ることすら意外だが、抜群の運動神経や、美術や音楽などその他芸術的能力も一切意味をなさない写真をなぜ選んだのか不思議でしょうがなかった。だが、今の菜月に理由を聞いたところでてきとうに突っぱねられるだけだろう。


「――っと、こんなところかな」


「ありがとうございます」


 久遠から一通りの説明を受けると、五織はお礼を言ってカメラを受け取る。それはとある卒業生が置いていったものらしいが、高校生にとって、いや社会人でも普通に高価だと思うような代物をよくまぁ寄付したなと五織は思った。


(おかげで高いカメラを買う必要ないから有難い)


 受け取ったカメラを大事にケースにしまって、バッグへと入れると、部室を後にしようとする。


「それじゃあ俺は帰ります」


「おう、お疲れ! 七瀬は帰らないのか?」


 久遠がそう聞くと、菜月は首を横に振る。


「もしよければですけど、勉強も教えてくれませんか? 少しわからないところがあって、十河先輩ならわかるかなって」


(は?)


 思わず五織は声を上げそうになるが、グッと堪えた。


「おう、いいぞ。何なら五織も一緒にどうだ?」


 久遠は気持ちのいい笑顔を浮かべて、そう提案するが、振り返った菜月の表情を見て、五織は「いえ、」と首を横に振った。


「俺は1人の方が集中できるんで」


「そっか! じゃあテスト頑張れよ!」


「ありがとうございます」


 五織はぺこりとお辞儀をして、部室を後にする。


(あー、キツイ)


 家に帰った五織は風呂や夜ご飯を早めに済ませると、早速勉強机に向かっていた。だが、ペンは一向に進まず、英語の教科書の端っこにただ点を打つばかりだった。


 あの2人が色恋の関係とかそういうのではないのは断言できるし、菜月も下心があっての提案ではないだろう。だが、それは今はという話であって、いつかは恋心になってしまうかもしれない。そうした気持ちが垣間見えるその場所に一刻も早くいなくなりたかった。それが悪手なのはわかっている。わかっているのだが、明らかに自分に向けられる目が冷たく、そして久遠に向けるそれとどうしても比べてしまって、心がキュッと締め付けられる。


「俺って女々しいな」


 文字通りの死闘を繰り返し、1万回以上の死を受け入れ、感情が壊されるような出来事すら経験しても、恋の痛みというのは簡単には越えられない。


「ダメだ。集中できねぇ! 寝よ!」


 勉強をして忘れようとしても、いつまで経ってもモヤモヤが残ってしまい、五織は早々に勉強を切り上げると、ベッドにダイブしてはすぐに眠りについた。



 ▶︎▷▶︎



『おい、五織! テストの結果見に行ったかよ!』


 机に肩肘をついて教室の外をじっと眺めていた五織に四暮が大声を上げてそう聞いてきた。


『いや、まだだけど』


『ほら、行くぞ!』


 腕を引っ張られ、半ば無理やり掲示板の前まで連れて来られると、『見ろよ見ろよ』とうるさい四暮の指差す方へと視線を向けた。


『まじか』


 1位――繰生五織

 2位――七瀬菜月


『勝った。』


『やっと、勝ったぞ!!』


 ガッツポーズからの喜びに万歳をすると、どこからか吹奏楽部が演奏をしてくれて、その音に合わせてダンス部の生徒達が廊下でブレイクダンスをし始める。合唱部の生徒が歌い出したかと思えば、フラッシュが焚かれて、そちらを向けば久遠がカメラを構えてニコニコ笑っていた。


『おめでとう、五織』


 喜びに五織もダンス部に混じって揺れ動いていると、ぽんぽんと優しく肩を叩かれる。クルッと振り返ったそこにいたのは他でもない七瀬菜月だった。


『繰生さん、ううん。五織! 次は負けないから。今度は私が追いかける番だから!』


『ああ、俺ももう負けない』


 そうして握手を交わすと、心なしか菜月は顔を赤らめて、


『それでね、五織…それでなんだけど』


 いつの間にか音楽は止み、五織を囲んでいたはずの生徒達もいなくなっていて、五織と菜月だけになっていた。

 いつも無表情で淡々と喋る菜月ではなく、どこかドギマギして余裕がない表情に五織はドキッとする。


『私…五織のこと――


 〜〜♪


 音楽が流れてパッと世界が切り替わり、五織は見たことある天井を眺めていた。


「――夢かよ!!」


 見事な夢オチをくらって、五織はその内容の恥ずかしさにしばらくベッドで悶えていた。



 ▶︎▷▶︎



 昨日は集中できないと、早々に勉強を切り上げて正解だった。今日は日曜日で用事もないから、朝早く起きた五織は日課のランニングを済ませるとシャワーを浴びて朝食を食べてからは、ずっと勉強机に向かっていた。


 グッと背伸びをすると、いつの間にか時計は14時を回っていて、ふぅと息を吐いた。別にお腹は減ってはいないが、ちょうどキリもいいのでせっかくだからとバッグからカメラを取り出して五織は外に出た。


(良い天気!)


 雲一つない青空に心地よいくらいの風が吹いていて、過ごしやすい良い天気。自分の誕生日があるのもあるが、五織はこのくらいの季節が1番好きだ。


 通りのカフェで買ったカフェラテを片手に近所の庭園に着くと、空いていたベンチに腰をかける。


 日曜日なのもあって庭園は子連れの家族や、老人、あとは外国人の観光客など結構な人で賑わっていた。


 五織は早速とばかりにカメラを手に取ると、昨日習ったことを思い出しながらシャッターを切る。


(おお。意外と良いかも)


 写真の上手さとかは正直わからないが、なんとなく自分的には良いものが撮れた気がする。特に赤い薔薇をメインに撮ったそれは風景からくっきりと浮かび上がっている感じで光の当たり方も良い。


「ねぇ、キミ」


 自分が撮った写真を眺めていると、ふと声をかけられて手を差し出される。


「これキミの? そこに落ちてたんだけど」


 その小さな手にはキラッと光るイヤリングがあり、それは五織の付けていたはずのイヤリングだった。どうやらカメラのストラップを首に回したときに落としてしまったらしい。


「あ、ありがとうございま――」


 差し出されたイヤリングを受け取って、お礼を言おうと対面した五織は相手の顔を見て絶句した。


 情熱的な紅髪は両サイドで高々と結ばれ、髪の色と対照的に透き通った青色の瞳を浮かべた女の子――


「――レイ…?」


 それはあるはずのない、別れ人との邂逅であった。

お読みいただきありがとうございます!

題意通り、ライバルが現れてラブコメターンが開始されました。第二章もよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
夢面白かったです。 菜月がそっけなくなるの悲しいけれど、五織はすごく頑張っているし、いつか報われる時がくるんじゃないかなと思ったりもします。ただ暗い展開も好きなので、自分の気持ち犠牲にしてでも守り続け…
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