第5話 密集する区画の中の家
メイドはこちらを向いて、キスを求め抱き着いてきた。メイドは名前をトリニダと言い、屋敷で務めだして3年目だという。
「あの…朝食をお作りしてきます。」
トリニダのメイド服を出してやると恥ずかしそうに着て、ドアから出ていった。
しばらくベッドで、うとうとしているとトリニダが起こしに来た。
「あの、ご主人様、朝食の準備ができました。」
ベッドの横までトリニダが来たので抱き寄せてキスをする。頬を赤らめて照れている。
2階の食堂に案内されると大机の一番奥に料理が作ってあり、椅子を引いてくれた。
「トリニダ、美味しいよ!」
「ありがとうございます。ご主人様。」
嬉しそうしながら恥ずかしがるトリニダは上機嫌になった。
「ご主人様、お風呂に入られますか。」
「お風呂があるんだ。入りたいな。」
トリニダに1階奥に大浴場に案内された。魔石で水を出したり、湯沸かしを行っているようだ。
トリニダもメイド服を脱いで、薄い肌着で案内してくれた。
「このお風呂に入らせていただいたのは初めてです。気持ちいいです。」
お風呂からでるとトリニダは体をタオルで拭いてくれた。
「魔物を狩りに行きたいんだけど装備品とかある?」
「はい、こちらです。」
いい香りがするトリニダに着いて行き、正面のドアを開ける。
「あれっここはどこですか…」
ドアの外は亜空間の中だから何もない。庭の木々は時間経過の中に入れておくと枯れてしまうと思ったため、庭にあったほかの建物だけをこちらに置いておいた。
「少し場所がかわっただけだよ。」
「あの…食材や魔石の補充などはいかがいたしましょうか。いつもは商人の使いが運んでくるですが。」
「商人は来ないから買いに行かないといけない。外には出れるから安心して。」
ほっとしたトリニダは屋敷と別棟の建物に入っていった。そこは衛兵が使う建物のようで、歩いて行くと休憩所や仮眠室があり、武器や防具などの装備品がずらっと並んでいる。
「ご主人様、これはいかがでしょうか。」
トリニダが進めてくれたのは原色系でカラーリングされた派手な鎧だった。
「あまり目立たないのがいいな。重くない革素材の装備品がいい。」
「はい、わかりました。それではこれはいかがでしょうか。」
トリニダが取ってくれたのは黒のレザー素材の装備品だ。
「ブラックワイバーンの装備品です。耐火性能に優れ、軽いですが鎧並みの頑丈さです。」
さっそくジャケットとズボン、ブーツ、手袋を装備する。
「こちらはクリスタルスネークのコートです。防水性に優れ、魔法耐性があります。」
トリニダが取ってくれたのは真っ黒のフード付きのロングコートだ。
「オリハルコンの剣もありますがサイズはどの程度がよろしいでしょうか。」
「片手剣でお願い。」
そのあと、魔力を探知するネックレス、体を透明化、無臭にする腕輪、身体強化の指輪、通信の指輪を着けてもらった。
「それじゃ、ちょっと出てきます。」
「行ってらっしゃいませ、ご主人様。」
貴族の屋敷には硬貨が大量にあり、もう稼がなくても生活していけそうだが、魔物を狩っていくと少しづつだが自分が強くなっている感覚がある。だらだら過ごしているだけだとトリニダといちゃいちゃして引きこもってしまいそうなので半日は狩りにいくことにした。
いつものオークの森に出てオークを収納しながら森を歩く。魔力を探知するネックレスのお陰で、敵の位置がすぐわかるし、透明化しているので敵からの不意打ちを食らうこともない。ブラックワイバーンとクリスタルスネークの装備品も軽くて動きやすいし、身体強化の指輪で歩いていても全然疲れない。ほとんど散歩と一緒だな。
お腹が空いたので試しに通信の指輪を使い、トリニダに帰ることを伝えて亜空間に戻る。トリニダは玄関で待っていてくれたのでうれしくて、抱きしめててキスをする。
「おかえりなさいませ。旦那様。」
トリニダにコートを脱がせてもらい、食堂に案内される。
椅子に座ると次々と熱々の料理が運ばれてくる。トリニダは料理が上手だ。
「午後から街に行きますが来ますか。」
「はい、お供させていただきます。食材も買いに行かせてもらってよろしいでしょうか。」
食事を済ませてからトリニダの腰に手を回して抱き寄せて宿屋の部屋に転移する。
「えっ…ここは…」
頭の整理がつかないトリニダの手を引いて宿屋の受付に行き、今日で宿を出るように伝える。
素材買取所で素材の買い取りをしてもらい、この前魔道具を買った店に入る。
「いらしゃい。今日へ何をお求めですか?」
「建物の中古物件の取り扱いがありますか。」
「はい。何件か紹介出来ます。希望はありますか?」
「すぐに入れて、食料品を買う店が近い場所がいいです。」
「わかりました。ご案内しますので少しお待ち下さい。」
店主は店番を交代してもらったようで、3人で街道を歩いて中古物件に向かう。
「この物件は値段は少し張りますが、食料品を買う肉屋や八百屋などが集まる街道から近く、塀もしっかりしているので安全です。
紹介された場所は2階建てファミリー向けの住宅で中央の街道から少し奥に入ったところにある、道路に面した場所で、ずらっと家屋が建ち並んでいる。建物の中に入ると、贅沢なつくりではなく、少し稼ぎが多い庶民向けといった造りだ。
「ここに決めます。すぐに住めますか。」
「はい。お代を払っていただければすぐに。」
金額は4万シーロ(400万円相当)だったので白金貨4枚を払い、契約書にサインする。
「トリニダ、この屋敷、綺麗にしておいてくれますか。」
「はい。ご主人様。」
トリニダは笑顔で答えてくれた。