第4話 トリニダ
「いい心掛けだ。ついてこい。」
男たちは大きな屋敷の前で立ち止まった。
「アイモーネ様に取り次ぎを。いい空間魔法使いが手に入りました。」
男たちは門兵に媚びるように言うと門兵は建物に入ってしばらくすると、戻ってきた。
「ついてこい。」
僕は手を縛られた縄を引っ張られて、屋敷の正面ではなく、横の小さなドアから中に入らされた。中は豪華な造りで、廊下がとにかく広く、天井が高い。
「おい。キョロキョロするな。」
ぐっと縄を引っ張られる。少し歩き、部屋に通された。狭い部屋だ。使用人の休憩所だろうか。3人組の男は緊張しているようだ。顔が引き攣っている。
しばらくするとドアが開き、先程の門兵とは違った鎧を着た衛兵がドアを開けて入ってきた。
「お前達には褒美を取らそう。もう行っていいぞ。」
「はっ、ありがとうございます。」
3人は報酬の硬貨が入っているであろう袋を受け取り、他の衛兵に連れられていった。
「お前の名前は。」
「ミロです。」
「どれだけの容量の亜空間が使える。」
「わかりません。」
「これを収納できるか?」
机を指さすのでフッと収納する。
「ほうほう、空間魔法使いというのは本当のようだな。」
「ついていこい。」
机を元に戻してアイモーネという衛兵に着いて行くと大きな倉庫に連れてこられた。中に入ると木製の木箱が棚置かれ、所狭しと並べられている。
「出来るだけ多く収納して元通りに戻せ。」
倉庫の中は広くて奥のほうまで見れないため、倉庫の通路を見て回り、その全貌を確認する。奥行50m、幅30mほどありそうだ。倉庫の中の物が一瞬でなくなり、ずんっと音がして空気が震えた。倉庫の中の物資は同じ位置に佇んでいる。
「全てを一瞬で…なんてことだ。」
アイモーネは驚き、倉庫の中をじっと見つめている。この世界の中でも空間魔法使いは数が少ない。その中でも人を転移させたり、人が入れる亜空間は現実に存在するかすら信じられていない。そのため、空間魔法使い=亜空間収納が使えるという認識だ。僕も亜空間収納が多いだけと思ってもらったほうが自分を守りやすいと考えてる。
その後、アイモーネに連れられて、屋敷の部屋の一室に閉じ込められた。しばらく部屋にいたが、やることがないので、倉庫に転移して倉庫から見える位置、またそこから見える位置に転移していった。メイドや執事も何人かいたが見つからないように中を探検する。
「きゃー!誰!」
気を付けていたはずだが、転移した廊下の先に誰かがいたらしく見つかってしまったようだ。メイドではない色の濃いドレスを着たブロンドの髪の女性が顔を引き攣らせて、僕を汚いものを見るような目で見て逃げていった。女性が声を上げるとドタドタと足音が近づいてきて僕は囲まれてしまう。
槍や剣を僕に向けられる。このままでは斬られると思い、集まってくる衛兵を次々と時間停止亜空間へ収納していくと、衛兵はもういなくなったようで再び屋敷内は静かになった。
一度屋敷を出て、屋敷を正面から眺める。
僕は屋敷の塀の中の全てを時間停止亜空間に入れた。フッと塀の中の全てが消えて無くなり、地面が1mほどえぐられた。その後、亜空間の中に入る。亜空間の中には先ほど見た屋敷とその庭がそのまま存在していた。
屋敷の中を歩き、今度はドアを開けて中を確認する。ドアの中にはメイドや執事など様々な人が生活していた。家具の一つ一つがこっていて、本当に貴族の屋敷だと思い知らされる。
4階の部屋には一際、装飾が綺麗なドアがあり、ドアを開けて中に入ると先ほどのブロンドの髪の女性とその主人であろう男がいて何やら話をしているようだった。一度全ての人間は屋敷に転移させた。
その後、亜空間内から宿の部屋に出て、訓練所へ歩いて行く。僕を連行した3人組を探すとまた使える能力者がいないか聞き耳を立てている姿を見つけることができた。3人組も時間停止亜空間に収納した。
宿の食堂に行き、夕食を食べて部屋に戻り、部屋から亜空間に入る。時間経過亜空間に屋敷を移動してきているのでここで過ごせば、夜も安全だ。
屋敷の中の一番大きな寝室に入る。天蓋付きの3m四方の巨大ベッドが広い部屋の中にどんっと佇んでいる。ベッドまで歩いて行き、立ち止まり、イメージすると、1人の女性がキシッとベッドがたわませて出現した。
「あれ…何…ここはご主人様の寝室じゃ…あなたは誰ですか。」
予め時間停止亜空間の中で手足を縛っておいたメイドだ。
僕より少し年上のようだがこのメイドはメイドの中でも若いほうだ。
「今日から俺がお前の主人だ。この屋敷も俺の物になった。」
「えっそんな…どうして…縄をほどいてください。」
ベッドで手足を縛られて身動きが取れないメイドは白と黒のフリルがついた服と、ロングスカートを着ていたが、全て収納した。