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第2話 空間魔法

 その日は真っ暗な中、街の中を走り、どこかわからない路地裏で夜を過ごした。朝起きて、隠れるように露店から飲食物を収納して、遠くで食べる。昨日の腕のことを思い出してもどしそうになるのを懸命に我慢する。


 僕の収納は相手の一部分だけを収納することができて、そんなことをすれば当然、相手は傷つく危ない力だ。冷静に考えてみるときっとあの女の人は僕のことをカモだと思って、お金を奪いに来たんだろう。自業自得とも思える。


 この世界は地球ではない。ネコミミの人がいるし、まったく見たことのない食べ物に(あふ)れている。僕はきっと帰れないし、ここは日本みたいに安全じゃない。僕のことを守ってくれる人はいないし、たよれる警察や法律もないだろう。自分の命は自分で守るしかない。


 改めて街の中を観察して歩き回る。大きな街道沿いは店が多く、服や日用品、武器屋や防具屋なんかもある。通り過ぎる人も剣を腰に下げている人が多く、たまに獣のようなものを持って歩いている人もいる。狩りをしているんだ。


 街道ですれ違った狼のような獣を背中に背負った人の跡を追っていくと大きな建物に入っていった。カウンターに獣をおいて代わりにお金を貰っている。買取りをしてもらっているようだ。


その後も街道を歩いていると何に使うかわからないような物が置いてある日用品の店に入った。

「☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓」

「すみません。何を言っているかわからないんです…通じないだろうけど」


 すると店員は店内から指輪を持ってきて、指輪をつけるジェスチャーをして指輪を渡してきたので、指輪をしてみる。

「どうですか。私の言葉わかりますか?」

「えっ…わかる…わかります!」

「よかった。この指輪は意思疎通の指輪です。500シーロ(5万円相当)ですがお買い上げになりますか。」

「500シーロ…何色の硬貨何枚ですか?」

「はい、銀色の硬貨が5枚です。」


 高いのか安いのかよくわからないが宿代の10倍だ。指輪にしては高いほうだと思うが背に腹は代えられない。

「買います。」

そのあと店員さんはここぞとばかりに僕にいろいろと商品を紹介してくれた。気配を消す指輪、敵意を感じとるネックレス、力が今よりも出せる腕輪を勢いのあるトークで勧められて買ってしまった。2千シーロ(20万円相当)だった。


 言葉が通じると思うと一気に気が晴れた。次に武器屋に行く。

「いらっしゃい。何をお求めですか。」

「あ…あの…護身用のナイフを貰えますか。」

「それでしたら、こちらはどうですか。相手を麻痺(まひ)させるナイフです。それと魔物と戦闘でなくても重くない魔物の革素材の服はどうですか。普段使いで着ても疲れないし、突然刺されても守ってくれますよ。あっはっはっ」

冗談で言っているんだが僕にはまったく冗談に聞こえない。昨日からもう2回も殺されかけているんだ。


 ワーウルフの革のジャケットとズボン、ブーツ、手袋と麻痺ナイフを買った。防具は一式で200シーロ(2万円相当)だったが、ナイフは付与付きとかで1000シーロ(10万円相当)もした。試着室で防具を装備して、店を出る。


 この先、ずっとお金を盗んで生活するのは嫌だ。何かでお金を稼がないといけない。それで先ほど様子を見ていた素材買取所へ入る。

「いらっしゃいませ。今日はどのような御用でしょうか」

「あの…どんな獣でも買取してもらえるんでしょうか。」

「はい。獣ではなくて魔物であれば、状態によりますが買取しております。城門でこちらを門兵に見せれば通行料は取られませんのご利用ください。」

鉄の札のようなものを貰った。受付のおねえさん綺麗(きれい)だったな。


 魔物を狩りに城の外に出る。外に出るには城門にある堅牢な門を通る。門兵が2人立っていてじろじろ見られたが鉄の札を見せると何も言われず、通ることができた。


 城壁の外は草原になっていて草が無くなっているところが道になっていて、どこかに続いている。道は森を迂回していて、森の中は安全じゃないことが分かる。


 街道を外れて森に入る。木に隠れながら森を進むと緑色の肌をした僕よりも背の低い魔物がいる。ゴブリンだ。


 僕は木に隠れたままゴブリンを見て胴体から上を収納するイメージをするとぷしゅっと下半身だけになった体から血が()き出した。下半身も収納すると森の中はまた静かになった。


 何匹もゴブリンを部分ごとに収納していくと、この力の使い方が分かってきた。僕の見える範囲であれば収納に入れれるし、生きたまま収納してそのまま出すこともできる。途中からは頭と胴体を分けて同時に収納していった。狼のような魔物もいたが見つけた瞬間に収納できるので危険はない。


 結構な数の魔物を収納できたので、街に戻り、素材買取り所へ行く。先ほどの綺麗で親切なお姉さんではない。

「あの…ゴブリン狩ってきたのですが。」

「そうですか。それでは出してください。」

「きゃ!ちょっと!そんなにたくさん困ります!」

出してと言われたから出したのに。

素材買取所の裏に回され、倉庫に入る。

大きなカウンターにゴブリンを並べるとゴブリンと狼は40匹ほどになった。

「あんた若いのにすごいねー」

ゴブリンは1匹10シーロ(1000円相当)、狼はワーウルフと言い80シーロ(8000円相当)、合計1000シーロ(10万円相当)になった。これならもう露店から盗むようなことをしなくてもいい。宿を探していると指にはめた指輪からチクチクと違和感がある。何だろう。


 昨日よりも少し大きい宿屋に入る。また、夜盗のような者に襲われたくない。

「一泊80シーロ(8000円相当)だ。朝・夕食付で90シーロだよ。」

「食事込みで5泊分お願いします。」

銀貨5枚を払い。銅貨5枚のお釣りをもらう。


 部屋の鍵を貰い、部屋に入る昨日よりも広く、机がある。ベッドで寝てしまいそうになったが我慢して1階の食堂で夕食を食べた。パンと何かの肉のステーキだったが何年かぶりのちゃんとした食事を食べたようで感動して涙が出た。


 食事を終え、部屋に戻ろうと宿屋の受付の前を通る。

「湯(おけ)使うなら3シーロ(300円相当)で貸し出すけどどうだい。」

「えっ、あの、ください。」

部屋に入って体と髪の毛を手ぬぐいで拭く。もう1年ほどまともに洗っていなかったので湯桶がすぐ真っ黒になった。そのため、もう一度受付に行き、追加で3つ湯桶を貸してもらった。


 べたべたしていた体はさらさらとそよ風が当たっているかのように気持ちが良くなった。気持ちよくなってベッドに横になってそのままうとうと寝てしまった。


「ん…なんだ。」

指がチリチリと痛む。これは悪意を知らせる指輪か。僕は周りを警戒して装備品を着て、ナイフを出す。ドアの外で廊下を歩く音がキシッキシッと近づいてくる。僕はなるべくドアから離れた位置で、すぐに飛び出せる体制で中腰になる。ドアが振動してカチャッと鍵が開いた音がした。ノブが少しづつ回されて、ドアがゆっくりと開く。その瞬間に入ってきた人たちをまるごと収納した。どうやら2人いたみたいだ。


 昼間買取所からの指の違和感はこれだった。尾行されていたんだ。窓から外を見て、宿の外の建物の影に自分を移動した。気を付けながら何度か移動すると僕の宿を見ている人を見つけた。しばらくその人を監視して、収納に入れることにした。その後も心配でしばらく寝れなかったが睡魔には勝てず、ベッドで寝てしまった。

お読み頂き、ありがとうございました。

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挿絵(By みてみん)


明日の書く気力になりますので作品読みたいと思われましたらお願いしますm(_ _)m

挿絵を見るには「なろう 挿絵の見方」で検索して見てください。


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