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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様フルフトバールへ行く
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29 誰かにとっての都合のいい物語

 急にワクワクさんになり始めたヘッダと、そんな様子のヘッダに引き気味なネーベルと、困ったようなヒルト。

 構わず話を続けさせてもらおう。

「異世界から王子様の婚約者に生まれ変わったその人物は、異世界で生きていた頃に、王子様と町娘の恋物語を愛読していて、その物語に出てくる、二人の邪魔をする王子様の婚約者……、悪役の令嬢に生まれ変わったと、ある日突然気が付くんだ。生まれ変わる前の記憶を思い出すのは、どんなきっかけだっていいんだ。例えば、幼馴染みの令息と遊んでいた時に、押されて頭を打ったとか、小さいときに高熱を出して思い出したとかね。記憶を思い出した令嬢は、このままでは自分は婚約者の王子様から婚約破棄を言い渡されて処刑されてしまう。どうしよう……ってね」

「どうしようも何も、家同士の政略であるにもかかわらず個人の勝手で婚約破棄などできようもありませんわよ。何が『どうしよう』なのかしら。疚しいことがなければ、捨て置けばよろしいのに」

 わ~、さっそく突っ込み頂きました。


「この『どうしよう』っていうのは、物語に強制力がある場合のことを言ってるんだ。強制力というのはね。Aの道を行けば、自分は死んでしまうかもしれないから、Bの道を選ぼうとする。もしくは選ぶ。だけどいつの間にか道はAのほうへとむかっているんだ。さっきの話の場合、王子様と町娘の恋の邪魔者になるのは、自分が王子様の婚約者であるからだ。なら婚約者にならないようにするけれど、婚約者になってしまう。というものだよ」

「話を聞いてるとその『強制力』って、とんでもなくやばくないか?」

 顔を引きつらせて、ネーベルが口を挟む。

「そう、とってもやばいんだよ。だから、王子様の婚約者に生まれ変わってしまった令嬢は、婚約破棄をされるにしても、自分に瑕疵がないように対策するんだ」

「対策?」

「まずは、王子様と町娘の逢瀬を邪魔しない。それどころか、婚約者がいる身で、町娘と恋仲になっていく証拠を集めていく。次に自分の傍にいる寄子家の友人たちには、王子様と仲良くしている町娘に手出しをしないように言い含める。王子様には立場を理解しているのかというご忠告を申し上げるわけだ。ついでに、王子様にはちゃんと忠告しましたよという報告を国王陛下や自分の父親にしておく」

 これだけやれば、悪いのは浮気してる王子様ということになる。


「この王子様は、元の物語に出てきた王子様とは微妙に違う。物語ではリーダーシップがあって頼りがいがある王子様。でも実際の王子様は、何をするにしても強引で、自分の言うことは正しいと思い込んでいる独りよがりな性格なんだ。そして幼い頃に定められた婚約者に対しては、自分の意志で決められたものではない、自分よりも優秀で目障り、ついでに自分に対して敬った態度をとらない、まとめていうと、可愛げのない婚約者が気に入らないというわけだ」

 この王子様の話をしたときに三人とも、何とも言い難い表情になっている。

「それは、王子様の周囲が悪いのではなくて?」

「さぁどうだろうね。ともかく、舞台はクライマックスだ。本来の物語では、嫉妬に狂った婚約者が、町娘を害そうとしてその悪事が大勢の人の前で明らかにされるのだけど、婚約者が主人公のお話では、婚約者である令嬢は何もしていない。瑕疵のない婚約者を断罪することが出来ない王子様はどうするかというと、大勢の人が集まる場所で、でっちあげた冤罪で婚約者を断罪して、婚約破棄を言い渡した」

「その王子様、知能は大丈夫でいらして?」

 ヘッダの突っ込みに、ついにネーベルが吹き出してしまった。あっぶなかった。僕も思わず吹き出すところだったよ。

「大丈夫じゃないんだよ。ヘッダも想像ついてると思うけれど、対策をしていた婚約者は、王子様が冤罪で断罪しても、冤罪を証明して、それどころか自分という婚約者がいるにもかかわらず浮気をしたのは王子様、その浮気を正当化するための冤罪だと、断罪返しをするわけだ」

「あらあら、まぁまぁ。それは何というか、状況にもよると思いますけれども、はたから見れば、どっちともあまり関わりたくはない話ですわねぇ」

「まぁ、物語だからね。完全に創作のお話だよ。断罪返しをされた王子様は廃嫡され、重い罪を背負わされ落ちぶれて、読者からすれば、非のない婚約者に酷い態度をとって、貶めようとしていたんだから、『ざまぁみろ』って思うよね? 婚約者はというとね、婚約者だった王子様よりも性格がよくって能力の高いヒーローからプロポーズされるんだ。二人は結婚して幸せに暮らしました、おしまい」

「それって本当に、幸せですの?」

 鋭い指摘に僕は苦笑いをする。

「さぁ、どうだろうね。僕が言いたいのは王子様と町娘の身分差の恋物語が流行ったけど、それではあんまりにも婚約者が可哀そうじゃないかってことで、婚約者は悪くないんだから、浮気をした王子様とその浮気相手の、町娘が悪いだろうっていう物語が流行りだしたってことさ。そしてアインホルン公女は、この世界は自分が読んだ物語によく似ているから、このままでは自分が悪役の令嬢になってしまうのではないかと恐れた」

「あの方の夢見がちなところって、それが原因でしたのね」

 ヘッダは馬鹿馬鹿しいと言わんばかりだ。

「たとえ物語に似た世界でも、ここは物語の世界ではありませんわよ」

 それがねぇ、わからなかったから、アインホルン公女はへまをしちゃったわけだよ。

「公女がアルを避けていたのは、破滅したくなかったからってことは、公女が前の世界で読んでいた物語では、アルと公女が婚約していたってことだよな? でも、今のところアルに婚約者はいない。この先、婚約するようになるってことか?」

 おおぅ、鋭いところをぶっこんでくるね。ネーベル。

「あの……、公女が読んでいた物語は、『預言の書』というものではないのですか?」

 そして今度はヒルトがそんなことを言い出した。

 ラノベが『預言の書』ねぇ?

 前世の記憶が少しだけ残っているこの身としては、公女が読んでいたラノベは、『預言の書』などではなく、誰かの都合のいい妄想のようだとしか思えなかった。

 僕は、この誰かのほうが気になって仕方がないのである。


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