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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様と悪役令嬢
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10 やっぱり、ざまぁフラグが立ってる王子様だった

 僕の挨拶に、アインホルン公女は青ざめた顔のまま動かない。

 なんだよぉ、もっとさぁ、ノリよく返事をしてくれると思ったのにーって、まぁ、疚しいことがあったら、それは無理だよね?

「だ、りゅ、あ、」

 言語になっていない声をこぼすアインホルン公女に、僕は語り掛ける。

「さて、どこから話を始めようか? 君が知っているラノベと、この現実世界の違いから始めようか?」

「……」

「えーっと、なんて言ったっけ? ラノベの話だと、僕とアインホルン公女は五歳のころに王命で婚約してるんだってね? しかし現実の僕らはどうだろう? 王命で婚約どころか、今この時になるまで、一度も顔を合わせたこともなかった」

「……」

「次にラーヴェ王国の王太子だけど、今現在、ラーヴェ王国の王太子はいない。居るのは二人の王子だけだ」

「……」

「王太子になるのは僕ではなくイグナーツ。これはもう国議で決定してるから、絶対に覆ることはない。僕らが成人したら、王太子を名乗るのはイグナーツ第二王子殿下で確定している」

「……」

「アインホルン公女」

 びくりとアインホルン公女の肩が跳ね上がる。

「君が僕を避けていたのは、『悪役令嬢』になりたくないから、その可能性に近づくものはことごとく排除したかった。これは間違いないよね?」

 その問いかけに何度も頷くアインホルン公女だけど、でもね、ごめんね。僕はさ、それで、それじゃぁ仕方がないよね? とは言ってあげれないんだ。

 だってアインホルン公女の僕に対しての行動は、仕方がないで済ますには、あまりにも、作為に満ちていたからね。

「さっき君はこの国の王太子の制度を知っていると言ったね? つまりそれは、君の知るラノベとこの現実世界は似ているところもあるけれど、同じではないということを理解していたということになる。これについて何か僕に言うことはあるかな?」

「そ、それは……」

「うん、それは?」

 問い返すと、アインホルン公女は何かをこらえるように顔を真っ赤にさせて、ぶるぶると震えだす。それはまるで、勢い余って叫びだすことを耐えてるような様子だ。

「だって……」

「うん、だって?」

「『しいでき』のリューゲン王太子は、クールな性格だけど、本当はどんな相手に対しても情が深くって優しくって、敵に対してだって思いやれるヒーローなのに……、だけど、ここのリューゲン王子は、癇癪持ちの我儘で、自分の思い通りにならないと、周囲に八つ当たりするって……。そういう劇中劇の婚約者と、現実の婚約者が違うのなんて、ざまぁ系の話にいっぱいあったしっ、そ、それなら! 私が! 悪役令嬢の私がヒロインになって、断罪してくる相手をざまぁしてやり込める話にしたっていいじゃない!」

 アインホルン公女は、次第に僕に向かって『話している』のではなく、自分の考えを思い起こして『喋る』方向にチェンジし始めた。

「だって、私が悪いわけじゃないのに断罪なんて、そんなの、許せないでしょう! 悪いのは王命で決められた婚約者がいるのに、婚約者をほったらかしにしたりするほうじゃない?! 条件はこっちだっておなじなのに、自分だけが我慢してるとか被害者ぶって、自分の行動を正当化して! そんなの不公平だわ! やってることは浮気なのに、ヒロインとくっつくからって、それが正しいことになって! でも実際は全然正しくないじゃない! それなら、そんな相手を私がざまぁして、やり込めたっていいでしょう?!」

 一気に喋って息を切らしているアインホルン公女に、僕は声を掛ける。

「確かに、王命で決められた婚約なのに、自分だけが我慢していると思って、相手の婚約者を邪険にするのは傾聴力が皆無だし、婚約者をほったらかしにして、他の女性に心を移すのは不誠実だ」

「そうでしょう?!」


「だけどその状況は、僕らに当てはまるものなのかな?」


 意を得たと言わんばかりのアインホルン公女は、僕が発した言葉を聞いた途端、固まった。

「『悪役令嬢』になりたくなかった。君は、他の貴族令嬢から、令嬢の見本だと言われてる。そう言われるように、常に所作や態度に気を使って、マナーも努力して身に付けたんだろうね」

「……」

「すでに周囲の人たちは、完璧な令嬢と君を評価して、褒め称えている。誰も君を『悪役令嬢』などと言って貶めることはない。そしてこの世界の僕は君の知るラノベの世界の僕ではないし、君が愛読していただろうざまぁ系の王子のように、初対面で君を貶めるようなことを言う人間じゃない」

「わ、わた、し」

「なのに、アインホルン公女。君は自分が『悪役令嬢』になりたくないから、僕を避けたと言うんだよね?」

 ねぇ? 僕が何を言いたいか、気が付いているよね?

「だ、だって」

 また、『だって』か。

「だって……、ざまぁする悪役令嬢っていうヒロインになれると思ったんだもの! 『ざまぁ』ってやつをしたかったのよ!! そういうの、やってみたかったの!!」

 だと思ったよ。

 アインホルン公女が、『悪役令嬢』になりたくないって言うのは本当だと思う。そのために『悪役令嬢』からかけ離れた、お手本のような完璧な令嬢になるために、なみなみならない努力をしたのだろう。

 でもだ、『悪役令嬢』のルートから外れようとする割には、僕に対するアクションがただ遠ざけるだけというのがね。どうも、作為を感じたんだよ。

 だって、アインホルン公女は、あの元愉快なお仲間たちが流した僕の悪評、これを確かめるために、動かなかったんだよ。

 四年前の件は、王宮内を巻き込んでの大騒動だったし、国議に出ている貴族はその理由だって耳にしている。

 アインホルン公女が、僕を中心としたそういった騒動があったと知っている立場にいたにも関わらず、僕の悪評に対しての虚偽を確かめることはしなかった。自分の知っているラノベと、この現実世界との差異は分かっていたはずなのにだ。

 『悪役令嬢』にならないための行動力はあるというのに、『悪役令嬢』になる不確定要素をほったらかしにしておくなんて、おかしすぎるだろう?

 それはもう、ざまぁ状態になることを期待していたからだって気が付いちゃうよ。


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モチベ上がりますのでよろしくお願いします。

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