74 フルフトバールで魔獣狩りだぁ! そのじゅうよん
「ほらみんな話したぞ!! 次はアルの番だろ!」
なんでそうなるんだよ。
そもそもテオが最初に話し始めたことなのに。
でも話さないと、ずーっとうるさく聞いてくるぞ、これは。
ネーベル以外の全員が、期待の視線を向けてくるので、腹をくくって話す。
「好きな子はいるよ。告白もした。返事待ち」
「誰?!」
「好きな方がいるというのは聞いてましたが、告白はしたのですか?」
テオとイジーが同時に訊いてくる。
イジーの問いかけにテオがイジーと顔を見合わせたあと僕の方を見てきた。
「聞いてない!!」
「言ってない」
「なんでー?!」
端的に答えると、またしてもテオはワーワーと騒ぎだす。
「イジーには教えたのに、なんで俺には教えてくれねーんだよ!!」
「俺だっているという話を聞いただけで、お相手の名前は聞いてないぞ」
ふくれっ面を見せるテオに、イジーは宥めるように言う。
「いつ? いつ聞いたんだよ?」
「三年生の時だったか? ほら前上学部学長が、兄上に……」
途中で言葉を濁したのは、傍にマルクスがいたからだろう。
そしてテオも、それだけでイジーが何のこと言っているのかわかったようで、『どういうことだよ』なんて野暮なことは言ってこなかった。
「その時に、同じ科にいるオティーリエたちと、将来の結婚の話題になって、兄上が……好きな人はいると、教えてくれた」
「うん、教えた」
「誰だよ」
まぁ、僕に好きな人がいると知った次は、誰?って話になるのはわかる。
テオは自分の好きな相手の名前を言ったから、お前らも教えろよーって気持ちになってるんだろう。
教えるのはいいんだよ。
テオの好きな子を僕らは知ってるわけだし、イジーもヘレーネが気になるって言ってたけど、あれはもう、完全に意識してるんだと思うし。
「……ネーベルは、相手が誰か知ってるんだよな?」
「アルベルト様の許可なく、相手のお名前を口にすることはできません」
敬語で話すネーベルに、僕の側近バージョンになってると悟ったのか、テオはますますぶーっと頬を膨らませる。
「いいじゃんかよー。教えろよー」
「……」
なんか……、言いたくないなぁ。
腕を組んで口を閉ざす。
僕の言いたくないよという態度に、追求をするのは諦めたようだけど、今度はとんでもないことを言い出してきた。
「あのさ、その相手って、オリーじゃないよな?」
なんでオティーリエの名前が出てくるんだよ。
「どうしてそう思うの?」
僕が聞き返すと、テオは不思議そうな顔をして言った。
「だって、オリー。アルのこと好きじゃん」
好意は向けられてると思う。
けど、それが恋愛感情なのかっていうのは、微妙なところ。
「テオ。僕とオティーリエの間に、昔なにがあったか覚えてるよね?」
「もちろん。オリーがアルの婚約者になりたくないっていうんで、顔を合わせてもいないアルとの話題を避けたことだろう? で、結果的に貴族間でアルとオリーの不仲説が流れて、もともとアルには良くない噂が流されてたし、アルが悪いって感じになった話だろ?」
「そう。前提として、オティーリエは僕の婚約者になりたくないんだよ。あの頃と今では、状況が違う。でも基本的に、オティーリエが僕の婚約者になりたくないっていうのは、たぶん今も変わっていないはずなんだ」
そこが、オティーリエにとってのざまぁフラグだからね。
「僕らは貴族だから、結婚と恋愛は違うんだろうけど、でもオティーリエは結婚に関して、結構ロマンチストなところがあるからね。好きな人と結婚したいと思っているはずだよ」
そしてその相手は、僕ではない。
「それはわかってるんだけどさぁ。あれから結構時間が経ってるじゃん。オリーの中で、アルに対しての変化っていうかさ……。そういうのあるじゃん? 俺から見ると、オリーはアルのことが好きなんじゃねーかなーって、見える」
「でもオティーリエから、直接話を訊いたわけじゃないよね?」
訊いたところで、オティーリエは素直に話すかなぁ?
ジュスティスのこともあるし、男性嫌悪症発症してるから、そうそう簡単に誰かに恋愛感情を持つとは思えないんだよ。
「オティーリエが僕のことを好きだって、テオがそう見えるんだとしたら、それはたぶん恋愛感情ではなくって……」
どういったらいいかなー。
誤解されるような言い方はしたくない。
一番あてはまるとしたら……。
「安心、かな?」
「安心って、どうゆうことだよ」
ますますわからないって顔をするテオに、僕は説明する。
「僕がオティーリエに対して、そういう感情を持たない相手だっていう安心。たぶんオティーリエ本人が、一番それをわかってるんじゃないかなぁ」
僕から好意を向けられないとわかってるから、自分の想いのままの感情を僕に向けることができると、オティーリエは考えてる……のではないかなーっと。
本当のところどう思ってるのかは、オティーリエにしかわからないけどね。
でも前世のこともあるし、ジュスティスのこともあるし、そうそう簡単に恋愛をしたいって、オティーリエが思うようになるとは、僕は考えられないんだよなぁ。
「なんでそう思うんだ?」
テオは、オティーリエが僕に恋愛感情を持ってるって説を押したいみたいだな。
「そのなんでっていうのは、どっちの話? オティーリエが僕に対して持ってるのは恋愛感情じゃないって話? それとも、そう見えるのは安心してるからって話?」
「う~ん。どっちかって言うと、恋愛の方?」
そっちのほうかぁ~。
「この辺の話は複雑なんだよねぇ。オティーリエも誰かに言いたい話ではないはず」
前世の話に繋がることだし、おいそれと誰かに話せるものでもない。
「だってテオはオティーリエから、直接僕のことが好きだなんて話は聞いてないんでしょ? 態度からそうなんじゃないかなーっていう予想だよね?」
「うん」
「わかってないことを、そうだって決めつけて話すのは良くないよ。もしその話をするなら、オティーリエからちゃんと話を聞いてからにしてよ。僕の見解としては、オティーリエが僕に対して気を許しているのだとしたら、それは、恋愛感情からくるものではないって認識だ」
それ以上、僕から話せることはない。
「明日も魔獣狩りだから、もう寝るよ。おやすみ」
これ以上オティーリエが~って話は、僕はもうしたくない。
だから、逃げる。
はいはい、おやすみ~。また明日~。





