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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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50 アインホルン公女の前世 そのいち

 イヴと一緒に寮に帰ってから数日後、オティーリエが復帰した。

 見た感じ完全復帰というわけではなさそうだけど、あの時の不安定さは落ち着いたと見ていいだろう。でなきゃ、ヘッダが登校のゴーサインを出すわけがない。

「ご迷惑をおかけしました」

 登校したオティーリエは、教室内にいる僕とイジーの姿を見ると、一目散に近づいてきて頭を下げる。

「まだ少し顔色悪いね?」

「そ、そうでしょうか?」

 オティーリエは片手で頬を押さえながら答える。

「緊張しているからだと思います」

 まぁ、いつジュスティスに会うか、わからんからだろうな。

「……アルベルト様にお話ししたいことがあります」

「あの時のこと?」

 話したいのは、取り乱した理由……だよなぁ。

「はい」

 言いながらオティーリエは、僕の隣にいるイジーを見る。

 イジーには話せないって感じかな? ってことは、やっぱり、前世がらみってことか。

「良いよ。放課後でいい?」

「はい」

 オティーリエはそう返事をすると、ヘレーネとアンジェリカの元に戻っていった。


 放課後、イジーにはジュスティスを煽るのにちょうどいいから、僕だけで話を聞くと言って、先に帰ってもらうことにした。

 上学部の中庭にある温室で、オティーリエの話を聞くことになってる。

 この温室、あまり生徒に知られてないみたいなんだよね。どちらかというと、表にある庭園の方が広いし、人が集まるからだと思うなぁ。

 僕が温室に来たときは、ネーベルはもうすでに温室の中にいて、外から見えない場所にいた。

「オティーリエが今日、学園に出てきたことは、まだ知らないと思う?」

「領地経営科に伝手がないなら知らないかもしれないけど、テオドーア様が言うには女子受けがいいんだろう? 淑女科にいる女子から、情報引っ張ってんじゃないか?」

 伯爵家辺りのご令嬢、もしくはオティーリエの家門の女子生徒と親密ならそれもありか。

 温室のガラス窓越しに、オティーリエがこちらに向かって小走りにやってくる姿が見える。

「お待たせしました」

「大丈夫、僕もさっき来たところだから」

 僕の返事に、オティーリエはほっと息をつく。

「それで、話はジュスティスのこと?」

 ジュスティスの名を出した途端に、オティーリエは一瞬怯えたように身体を強張らせたが、頷きながら同意した。

「そう、です。あの方は、わたくしの前世であった『彼女』の幼馴染みです」

「……イケメンの?」

「はい」

「女子にモテてた?」

「はい」

「『彼女』が亡くなる要因になった相手?」

「そうです」

 まぁ、オティーリエのあの取り乱しっぷりから、何となくそうなんじゃないかなとは思った。 

「オティーリエがそう思う根拠は何だろう? 疑ってるわけじゃないんだよ? 同じだと言い切れるなにかがあったんだよね?」


 オティーリエの前世の話は、僕も軽くしか知らないからなぁ。

 異性に異様なほどモテていた。そのせいで、同世代の女子からやっかまれて同性の友達ができなかった。その一番の理由は、これまた異性にモテるイケメン幼馴染みが常に傍にいて、『彼女』を構い倒していたから。『彼女』は自分の傍に侍ってくる異性は疎ましく、傍にいるイケメン幼馴染みも好きじゃなかった。それから、『彼女』が異性関係で嫌だと思うような出来事に遭遇すると、女神の笑い声が聞こえた。ってことぐらいなんだよね。

 あと、そのイケメン幼馴染みに惚れていた女子に、駅の階段で突き落とされて、お亡くなりになったってことぐらい。

 当人である『彼女』の記憶を持つオティーリエは、もっといろいろ知ってる、それとも覚えてる、かな? とにかくそんな感じだから、ジュスティスが、例のイケメン幼馴染みと同じだとわかったのかもしれない。


 僕の問いかけに、オティーリエはなかなか返事をしなかった。それは、言いたくないのではなく、どう言えば伝わるのかと悩んでいるのだろう。

 しばらくして、ゆっくりと語り始めた。

「目が……」

「目?」

「はい、わたくしを見る目が、『彼』と同じで……。それで、声には、出していなかったのですが、あの方の口の動きが……、『彼女』の名を呼んでいたのです」

 確定、かな。

 口の動き。日本語って、欧米圏とは違って口の動きは母音の形になる。だから名前ぐらいなら、声に出さなくても口の動きで何となくわかる。

「そう……。『彼女』の名前を口にしたということは、間違いなくジュスティスも記憶を持ってるね」

 僕の返事を聞いてオティーリエは肩を揺らす。

 オティーリエも同じことを考えていたのだろう。だからこその怯えか。

 だって男性嫌悪症になった原因だもんね。昔に比べればずいぶん緩和しているけれど、それでもオティーリエは、男性に対して壁を作っている。

 お昼を一緒にしてる男子メンバーだけが、いまのところ警戒を持たずにいられる相手って感じだ。

「オティーリエ。オクタヴィア・ギーア男爵令嬢なんだけどね。彼女、リトス王国の孤児院の出身で、カプラ大公家に使用人として雇われていたんだって。今ね、その経歴を調べて貰ってる」

「え? リトス……。でも、ギーア男爵家の娘なんですよね?」

 エウラリア様に、リトス王国にいたギーア男爵令嬢というか『リステア嬢』の身辺を洗い出しをお願いしていたけど、それよりも前から、僕の方でもアッテンティータに少し調べてもらっていたんだよね。


「ヘレーネが教えてくれたギーア男爵家の話、覚えてる?」

 現ギーア男爵には娘がいないのに、そこの娘を名乗ってるって聞いたらさぁ、どうなってるのか調べるよ。

「本家といざこざを起こして、別の家門になったことですか?」

 その辺はおじい様に聞いたから、詳細わかってるんだけどそのあとの話だ。

「女子が生まれると外に出されるって話」

 エウラリア様との話の後に、アッテンティータから報告が来て驚いた。

「オクタヴィア・ギーア嬢はね、その養子に出された娘の血を引いているそうだよ」

 ヘンカー家に残されている情報と、アッテンティータの調べによると、最初に養子に出された子の血を引いている()()()のだ。


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