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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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43 新参者への特別講義 そのに

 僕の説明を聞いたソーニョは、大きく頷き同意した。

「ここにいるみんなに迷惑をかけることはしないよ。むしろみんなが気持ちよく過ごせるように、率先して行動するつもりだよ」

 模範的な返事だなぁ。

 はたから見れば、非の打ち所がないんだけど、なーんか嘘っぽいというか、軽薄さが滲みでてるんだよなぁ。

 テオは黙ってるけれど、笑いをこらえているのか、かすかに口元が歪んでる。

 教室内のソーニョとは違うってことかな?


「三つ目。客人について。クラスメイトや友人をこの寮館に招き入れる場合、事前の連絡を入れて許可をとってほしいね。寮館全体の防犯と僕らの安全を確保するためには、外部の者を中に入れないのが最良だ。かといって、個人の付き合いもあるだろうし、外部から人を招き入れる場合は、応接室を使ってほしいな。基本的にこの談話室は、内部の者だけで使うことになってる。来客は来客用の応接室があるからね」

 寮館内を見知らぬ生徒があっちこっち歩き回るなんてぞっとするわ。

 まぁ、その場合はシルトとランツェが止めるだろうし、話を聞かない相手なら容赦なく叩き出せと言ってあるから大丈夫だろうけどね。


「ついでに言うと、恋人だろうと婚約者だろうと、女生徒を自室に連れ込むのは禁止だよ」

 ネーベルとイジーだって、そんなことしてないからね!

 もっともヒルトとヘッダは、基本的にこの寮館を訪れることはない。殆ど外で会うことにしている。

 これはほら、王子殿下たちや辺境伯令息と仲がいいなんてって言うやっかみを避けるって言うのもあるんだよね。

 イジーとヘッダの婚約はまだ伏せられているし、ヒルトは別に隠していないけれど、ヒルトの立場に全くやっかみがないって言いきれないわけだからね。

 だからわざわざ寮館に来てもらって、一緒に過ごすということはない。

 女子がここに来たのって、一年の時にオティーリエの話を聞いた時ぐらいだったとおもう。


「君が女生徒とどんなお付き合いの仕方をしているか、それはプライベートだから勝手にすればいい。だけど、この寮館で風紀の乱れるようなことをするのは許さないよ。同じ寮にいる以上、連帯責任というものが付いてくる。一緒に暮らしている僕らの品性を貶めるような噂が出てこないように、自分の行動に責任もってね?」

「もちろんです。寮のルールを守るのは当然のこと。友人を招く際には、必ずリューゲン殿下に許可をいただきます。もちろん女子を自室に招くことは致しません。信頼は何よりも大事ですから」

 すでに日付変更ぎりぎりに帰寮したおめーが、ルールを守るとか言うな。

 お返事はちゃんとしてるけれど、実際の行動と言ってることがあってないから、どーにも本心からの言葉じゃなく、その場しのぎというか『こー言っとけば、これ以上文句は言ってこねーだろー』って考えが透けて見えるんだよ。


 談話室は緊迫した空気に包まれている。

 僕がソーニョの返事に無反応で、その顔を凝視しているせいか、ソーニョは爽やかな笑顔を保っているものの、早く終わらせてほしい、解放されたい、この場から立ち去りたいと願っているように見えた。


「今言ったことは、ほんの一部だけど、特に重要な事項だと思ってほしいな。この寮館で過ごす間は、規律を意識して行動してね。他に不明なことがあるなら僕らか、もしくは君のところの使用人に訊ねると良いよ」

 そう言って、僕はソーニョに笑顔を向ける。

「規律の説明は以上だよ。本来ならもっと早くに行うことだったけど、君の帰りが遅かったのだから仕方がないよね。明日からは、この寮館での生活に慣れてもらうことになるけれど、他に何か質問はあるかな?」

 ソーニョは考えるそぶりを見せたけれど、すぐに『ありません』と答える。

 でもその顔は、やっとこの場から解放されるという安堵がにじみ出ていた。


「じゃあ、部屋に戻っていいよ。部屋は君の使用人が案内してくれるから。明日からよろしくね」

 僕の終了の言葉にソーニョは立ち上がり、僕らに向かって『お先に失礼します』と声をかけ出ていこうとする。

「あぁ、そうだ。ジュスティス・レオナルド・ソーニョ・カプラ」

 談話室を出ていく直前で、フルネームで呼び止めると、ソーニョはまだ何かあるのかという顔で振り返る。

 腹芸ができないのか、あからさまに感情を出す人物だね。

 これならうちのイジーの無表情の方が、上に立つ者として相応しいよ。

「君のことは何て呼べばいいかな?」

「え?」

「今まで使っていたソーニョ? それとカプラ公子? どっちがいい?」

 リトス王国内で分裂して公国になっているわけではないから、公子に殿下をつけることはしない。

 父親の大公爵位は、実情が伴っていない一代だけのお飾りのものだ。継承できない爵位の子息に、『公子殿下』はどうなのかなぁ?

 僕は彼に『殿下』をつけたくないなぁ。

「……リューゲン殿下のお好きに呼んでいただいてかまいません」

 おぉ、そーくるかい。

 そんなこと言われたらさぁ、意地の悪いことを言いたくなっちゃうよねぇ?


「わかった。じゃあ、ジュスティス・レオナルド・ソーニョ・カプラと呼ぼう」


 フルネームで呼ばれるとは思わなかったのか、目を見開いて固まってしまったソーニョは咳ばらいをして取り繕った。

「訂正しますジュスティスとお呼びください」

 名前呼びするほど親しくねーのに、呼ばせる気はあるんだ。

「そう。あぁ、僕のことは、殿下はつけなくていいよ。イジーは?」

「俺もつけなくていい」

「だそうだよ。それじゃぁ今度こそ、おやすみなさい。良い夢見てね」

 以前このセリフを言った相手は、シルトに始末させちゃったけれど、ソーニョ……ジュスティスはそうならないように気を付けてほしいものだ。





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