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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)
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38 つるし上げではなく、事情聴取そのに

 エウラリア様はリトス王家の代表として、ソーニョと対面している。

 もし、この場にいるのがエウラリア様とソーニョだけだったなら、話を誤魔化して返事をしないで逃げたかもしれないけれど、他国の人間がいるのだから、返事をしないわけにはいかない。

「……留学を続けます」

「では、名称は全て本名に変更させていただき、これからは本名を名乗っていただくということでよろしいですね?」

 トーア学長の確認に、ソーニョはまだ何か抜け道を捜しているのか黙したままだ。

 黙ってしまっているソーニョの代わりに応えたのはエウラリア様だった。

「そのようにお願いします」


「次は、私の方からよろしいだろうか?」

 エウラリア様の返事を聞いて挙手しながらそう言ったのは、騎士科の担任である。

「名称を本名にとなれば、この件は教師陣営への通達は必須だ。もちろん、共に学んでいるクラスの生徒にもということになりる。その辺りはどうするのだろうか?」

「明日にでも、ジュスティスの素性をクラスメイトに通達してください」

 ソーニョが何か言うよりも先にエウラリア様が返事をしてしまう。

「なっ! 勝手に返事をしないでください!」

「お前にそのようなことを言う資格はありません!」

 横暴だと抗議をするソーニョだけど、エウラリア様も負けじと声を張って一蹴する。

「お前はこのラーヴェ王国で、一年ものあいだ身分を偽っていたのです。ラーヴェ王国民である学園関係者の方々は、お前に対しての信用が持てない。トーア学長に言われたことをもう忘れたのですか? ラーヴェ王国に損害を与える人物ではないと証明するためには、私的なことも明らかにしなければならない立場であることを自覚なさい」

 それを言われては、反論などできようはずもない。

「それでは、ソーニョ……。いや、カプラ公子。明日の朝のミーティングで、貴殿のことはクラスメイトに通達しよう。それでいいだろうか?」

「わ、わかりました」

 騎士科の担任の言葉に、しぶしぶといった様子で、ソーニョは同意した。


 ソーニョの返事を聞いて、トーア学長は次の議題に移る。

「留学を続行されるのでしたなら、次は寮の件を話しましょう」

 ソーニョが留学を続行するということは、自分の身分を明かすことになるのだから、当然寮も変更だ。

 こっちの話の方が僕には重要なんだよね。

「現在、貴族子息の生徒の中でも、高位の貴族子息である生徒は、王族の方々が入学した際に使われている寮館の方を利用してもらうことになっています。これは他国からの留学生であっても同様です。カプラ大公令息。貴方には、ジュスティス・レオナルド・ソーニョ・カプラ大公令息であるという確認が取れた時点で寮移動の要請を出していました。こちらの貴族男子寮の管理人から、理由と一緒に寮移動を通達しているはずです」

 トーア学長の説明に面識がなかった中年男性が何度も頷く。

 そっか、この人が貴族男子寮の寮管理人なのか。

「聞いていなかったというわけではないですよね? なぜ通達を無視されたのですか?」

 これもねぇ~、意味不明だったんだよねぇ~。


 ソーニョはたぶん、自分の素性を学園関係者の人たちにも知られたくなかったんだろうね。

 徹底して自分の素性を隠したかったんだろうな。

 でも、寮移動の連絡があって、しかも移動する理由だってちゃんと伝えていたって言うなら、もう自分のことは生徒以外の学園関係者にはバレてるってわかったはずだ。

 ソーニョが自分の素性を知られたくないと思う対象は、ラーヴェ王国民なんだろうけれど、とりわけ同世代である生徒たちだったんじゃないかなと思う。

 特にオティーリエや、オティーリエの周囲にいる友人。

 それから僕というか、王子殿下である僕やイジー、たぶんそこにはオティーリエの従兄であるテオも入るだろう。

 リトスでやったことを知られたくないという警戒もあっただろうし。

 ただねー、学園関係者や王族に、ソーニョの情報が入ってないと思うところが甘いなと思う。


 ラーヴェ王国のこと舐めすぎてるでしょう。

 確かに通常なら、他国からの留学生にそこまで不審な目を向けなかったと思う。

 ただね、リトス王国は僕らの親の代からの因縁がある。

 特に王妃様にとっては、故国であると同時に、本来の計画をおしゃかにしてくれた恨み辛みを募らせている相手がいる国だ。

 しかもリトス王家……というか、リトスの国王陛下からうちの王妃様へ、何としてでもイジーを王太子にしろという口出しまでしてきている。

 これがねー、今の国王陛下ではなく先王陛下が現役の国王であったなら、また状況は違ったかもしれない。

 けど、自分がされたことを思えば、王妃様は今のリトス王国のために、指一本だって動かす気はない。

 ラーヴェ王国民として、この地に骨を埋めると覚悟を決めてしまっている。

 そこにきて、故国から留学生がやって来ると知れば、徹底して留学生を洗い出すように、王立学園と学園都市を管理・運営しているハント゠エアフォルク公爵家へ直々に指示をするだろう。


 王家からの指示があれば、王立学園の関係者だって無下にできない。

 しかも現在王立学園には、王族二人に公爵家二人、その公爵家のうち一人は継承権持ちで、もう一人は王子殿下の婚約者であろうと言われてる人物が在籍しているのだ。

 トーア理事長がソーニョに言ったように、自国の重要人物と目されている人物が、在学するなら、万全を期すためにも、万が一に備えて同学年の留学生は徹底して調べる。

 王族が在籍している間は、いない時期に比べると警備の警戒度はダンチだよ?

 しかも一人二人じゃなく複数人だもの。

 学園関係者は通常よりも神経質になると思うんだよねぇ。

 たぶんソーニョはそこをちゃんと理解してないんだろうなぁ。

 貴族よりも偉いって認識はあれど、その血が代えがたく貴いという認識じゃない。

 なんだろうこの違和感。

 前にも感じたんだけど、結局わからなかったんだよな。



次回更新は8/5


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