25 懸念はあるけれど、そのまま進めよう
第三王女殿下自身、王妃殿下たちの内心や思惑がどうであれ、立場を庇護してくれて、王族としてきちんとした待遇に教育を受けさせてくれているのだから、感謝しかないのだろう。
「だからこそ全部の泥を自分が被って、後始末として出家するってことなのかな?」
第三王女殿下が学園を卒業したら出家するというのは、波風を立たせない終結の仕方だからね。
「それも、ありますが……。わたくし、王の娘に生まれはしたものの、政治も社交も興味がないのです。シュッツ神道の神に祈りをささげたり、奉仕活動することに、やりがいを感じるのです。特定の人に尽くすのではなく、多くの人と触れ合い支えたいとおもってます」
ふ~ん。そういう考えかぁ。
なら、ソーニョの件は王家に対しての最後の恩返しなんだろう。
ソーニョに対してリトス王家は決定的な処罰に躊躇いのようなものがある。手を汚したくない的な意味合いなのかな? それとも処罰を下すのに情がある?
まぁともかく踏ん切りがつかない国王陛下や王妃殿下それに追従する側妃や王女殿下たちに代わり、出家することが決まっている自分がやった方が、王家の威信を傷つけることはないだろうと考えたんだろうね。
おそらく第三王女殿下がソーニョをコロコロしたとしても、表向きはソーニョは事故に巻き込まれたって形にすると思うよ?
ソーニョがやったことはかなり悪質だもん。正当性を持たせるために、第三王女殿下がしたことは、王家をコケにしたソーニョに対しての報復ってことにされると思う。
実際そうだしね。
それならさぁ、出家するって決まってるなら、もう表向きソーニョを事故死させて、実際は逃げ出せない場所に隔離して、気が済むまで拷問かけりゃいいじゃないの。
もしくは自分が出家するまでの間は拷問して、んで出家の前日辺りにコロコロしちゃえばいいじゃない。あと腐れないよぉ?
まぁそれでも恨みは消えないだろうけれど、そこはね? 神殿での奉仕で自分の感情と折り合いをつければいいんだし、そのための出家でしょう?
リトスってラーヴェに戦争吹っ掛けるようなことやってる割には、その辺が甘い感じがするんだよねぇ。
いやリトスって言うよりも今の国王陛下だね。
「国王陛下はこの件に関しては特に何も言ってないのですか?」
「注意しておかなければいけないという危機感はあると思います。ただ、対応が……」
「学園に入学する時期になるまでカプラ大公子息がどうしているか知らなかった、ってことですよね?」
「はい。我が国の学園にアレが入学していないと知って、どうなっているのだと調べたら、カプラ大公の屋敷には居らず、大公夫妻は息子がどこにいるか知らないとのこと」
おかしいなぁ、確かヴァッハから聞いた話では、ラーヴェに留学することを伝えて、こっちに来たって感じだったんだけど?
これは、あれか? コミュニケーション不全家族。
ソーニョはちゃんと言って出てきたけれど、親であるカプラ大公夫妻は、子供のことよりも自分たちの遊楽スケジュールで頭がいっぱい。
ある程度大きくなった子供は、親が手を出さなくてもほとんどのことはできるから、自分たちの遊興を優先してもいいよねーって放置。
もっとも、おめーらは最初から親としてなんもやってねーだろ? 全部王家、王妃殿下が面倒見てくれてたんだろ? 元がそうなんだからなおのこと、子供とどんな会話をしていたか覚えていないってことなんじゃないかなー? 推測だけど。
そしてこんな調子の親なのだから、ソーニョが第四王女殿下を貶めて王宮に立ち入り禁止令出されて、自宅謹慎中って言うのも知らなかったんじゃあるまいか?
「まぁいいかぁ。先王陛下が出てこないだけでも儲けものかなぁ」
「先王陛下……、ですか?」
「第三王女殿下にとってはおじい様ですね」
「あ、はい。肉親という感じは全くないですけれども……。その先王陛下が何か?」
「僕としてはリトス王国で一番出てきてほしくない相手ですよ。わかりませんか?」
どう反応していいかわからない様子の第三王女殿下に、僕もこれ以上突っ込んだ話はしたくない。
「国際問題になりそうな気がしますので、自国の経済状況を調べてください。その上で、先王陛下がこの状況でどうするかと考えれば、僕が何を言いたいのかわかると思います」
国庫がひっ迫している問題を解決するために、うちから金を引き出そうとしてるのが今のリトスの王国の考えだ。
そのためイジーを国王にしてリトス出身の王妃様の力を強めて、ラーヴェ王国をリトスの属国にしようと考えているわけなんだけど、これじゃぁ時間がかかりすぎる。
最終的にそうする計画なんだけれど、できれば金は今すぐほしいはず。
そこで、ラーヴェから金を引き出したいんで、どうすれば良いですかって先王陛下に相談してごらんよ。先王陛下なら、ソーニョを利用する方法を考えるよ。『うちの国民を害したのはおめーらの国だよね? 賠償金払って』って流れに持っていけばいいじゃんって言うと思う。
だから先王陛下には出てきてほしくないんだよ。
だけど王妃様の話を聞く限り、一線を退いた先王陛下は、リトスの政にはかかわらないんじゃないかって思う。
だって自分を降ろしたのは今の国王陛下とその重鎮たちなわけだから、勝手にやってろってなるんじゃない? 先王陛下はたぶん独自で金を稼いで資産を持ってるだろうから、国庫がひっ迫していても自分は関係ねーってなるんじゃない?
ここはあんまり心配しすぎても仕方がねーわ。
要は証拠を残さなきゃいいわけだ。そーいうのはアッテンテータは得意だからね!!
次回更新は5/6です
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