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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)
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09 ターゲットとして狙われるのは

 僕の予想では、ウイス教の総本山としては、今回の聖女の世話役を僕とイジーにやれって言ったのは、支部の司教たちの独断で、そんな指示は出していないって回答が来ると思うんだよね。

 ウイス教の総本山が指示してないって回答を出せば、バウチ司教たちは自分たちが勝手に言い出しましたって言うと思うんだよ。

 この辺は貴族とおんなじ。地位の高いものには逆らえない。

 でも、ウイス教の総本山はこれでラーヴェ王国に対して慎重に対応しなければいけなくなった。

 一国の王子に小間使いをやれって言い出したことは間違いない。外交問題になることを下っ端の人間がやったことです、で済ますほど、うちはやっすい国じゃないからね。

 下っ端の人間が勝手にやったことなら、お前らの指導はどうなってるってことだ。

 責任取るのはいつだって上に立ってる人間だよ?

 だから、今回のことはウイス教の総本山も、軽く考えてた。

 国が抗議してくるなんて思ってなかった。

「王子が聖女に心惹かれて、自らお世話係をしますと言い出すことを期待したんだろうね」

「心惹かれるって……」

 ネーベルがそんなことあるかって顔をする。

「無理ですね」

 ヒルトもうちの王子のことなんもわかってねーなって口調だ。

「でも……、王子殿下には婚約者がいるって、発表してるじゃない? それなのに聖女に惹かれるようにって……、そんなことしていいの?」

 一応ね、ラーヴェ王国の王子殿下には婚約者がいる。相手の発表と正式な婚約は、成人してからになるって言う公式発表はしてるんだよね。

 ただしここで注目するべき点は、ラーヴェ王国の王子は二人いて、どっちの婚約なのかははっきり言ってないこと。

 これはわざと曖昧にぼかした発表をしたのだ。

 成人したら、イジーが立太子して、王太子となることは決定してるけれど、それを知っているのは一部の人だけだ。

 ラーヴェ王国の王位継承権は、第一王子が一番目になっているから、誰もが成人後、僕が王太子となり次期国王になると思っているだろう。

 僕が王太子になることを阻止したいと思っている相手と、継承権第一位の僕が王太子になることはわかっているけれど、念には念を入れてイジーを始末したいと思っている相手。

 両方のあぶり出しを行っている真っ最中だ。

 この辺は政治のお話になるので、王妃様と宰相閣下、それから大臣たちの方でいろいろしているらしい。

 あと、たぶんおじい様やヒルトの家族、あとヘッダの家もいろいろ動いているはず。

 こういった裏事情の情報をウイス教は入手していない。

 だから、聖女を使ったハニトラを王子の両方に仕掛けたのだ。


「ウイス教としては、ハニトラに聖女を使った時点で、僕らに婚約者がいてもいなくても、どっちでも良かったのかもしれない。いなければそのまま聖女と婚約と王子本人に言わせればいいだけの話だし、いるのだったら、今の婚約者よりも聖女と婚約したいと言わせればいいだけの話だからね」

「……この話、私が訊いてもいい話?」

 イヴが神妙な顔をして呟く。おや、鋭い。

 僕はイヴに笑顔を向けて、言葉で返事は返さない。ネーベルとヒルトは気の毒そうな顔をする。

 そんな僕らの反応を見て、イヴは僕を睨みつけ何かを言おうと口を開くけれど、すぐにぎゅっと口を結ぶ。

 そして一拍、二拍と時間をおいて、呟いた。

「卑怯なのは私も同じだもの。返事、まだしてないし」

「イヴ。僕への返事はイヴが言いたいタイミングで言ってくれればいいんだけど、でもどうしてもその気になれないって場合は、できるだけ早めに言ってほしいな。僕だってそうそう簡単に諦める気はないけれど、イヴを危険な目にあわせたいとは思ってないからね」

「それって……、アルベルト様の傍にいるのは危険って言ってるようなものじゃない」

「だって王子だもん。そりゃ危険だよ。僕の傍に付け込めそうな要素があったら、利用しようって考える奴は絶対いるよ?」

「え……?」

「だから私がイヴの傍にいる」

 ヒルトの言葉に、ようやくイヴは気が付いたようだ。

 イヴはきっと、ヒルトがそばにいるのは仲良くなったと言うのもあるけれど、貴族社会に覚束ない自分を指導してくれてるためだと思っていたのだろう。

 まぁ、ヒルトとしてはその考えも無きにしも非ず。前に僕のお嫁さん候補であるイヴに、高位貴族の礼儀作法を学ばせるって言ってたからね。

 僕が、イヴがいいって言ったから、ヒルトはイヴが僕の隣に立つに相応しい作法、それから知識を学ばせて、その身を守ることにしたのだ。


 対外的にはヒルトの侍女候補みたいに思われているだろうし、ヒルトのお気に入りと思わせておけば抑止になる。

 実際はその逆で、ヒルトが侍女兼護衛としてイヴの周囲に目を光らせているのだけれど。

 そしてイヴは、今、ヒルトの言葉でそれに気が付いた。

 ヒルトが自分の傍にいるのは、僕の想い人であるために、その身を狙うものから守るためなのだと。


「私……、そんなことしてもらっても、何も返せない」

「返さなくていい。何かを返してもらうために、イヴの傍にいるわけじゃない」

「ヒルト」

「先のことはわからない。でもどうしたいかって、考えることはできるだろう?」

「うん」

「私の望み、願いは、イヴが自分の気持ちを偽らずに、アルベルト様にお伝えすることだ。結果がどうであれ、私はそれを受け止める。だからイヴは、自分の心に偽ったことをアルベルト様には言わないでほしい」

 ヒルトー! そーゆうところが、女子をメロメロにさせるんだぞー!!

 イヴちゃん、お願い。ヒルトにはネーベルがいるから、ヒルトに惚れたからごめんなさいって言うのだけはやらないでぇ!!




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