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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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110 火を囲んでみんなと踊ろう

 学園祭最終日、僕は奉納演武をしたんだけど、なぜか神官さんたちが演奏を手伝ってくれた。

 別に演奏なくても良かったのに、なんか申し訳ない。

 演武が終わった後は、みんなにもみくちゃにされて、おじい様やおばあ様からも、「今年もアルベルトの奉納演武が見れてよかった」と楽しんでくれた。

 もー、おじい様とおばあ様に言われちゃったら、やってよかったーって思っちゃうよー。調子よくってごめんねー。

 演奏してくれた神官さんたちにもお礼を言ったら、なんか感極まった顔をされて。

「こちらこそ、何にも代え難い名誉をいただきました」

 といいながら、何度も握手を求められてしまった。

 神事のことはよくわからん。


 そうして学園祭は終了し、来園客は学園都市から去っていったわけなのだが、僕らにはまだ片付けや清掃が待っている。

 作成した展示物は、欲しいものがあったら持ち帰ってもらい、あとはお焚き上げではないけれど、学園祭中に使用されてもう使わなくなったお手製看板や垂れ幕、端材やごみを学舎の広場で燃やすキャンプファイヤーが行われる。キャンプじゃないけど。

 キャンプファイヤーは上学部の学舎の広場で行われる。

 下学部のごみを運ぶのは少し大変だけど、学舎は隣接してるし、上学部の生徒も荷物の運び出しのお手伝いをするから、それほど手間ではないのだ。


 日が暮れるとゴミの櫓に火がともる。

 それを離れたところで見たり、近くで民族ダンスを踊ったり、毎年の光景だけど、お祭りが終わる哀愁感にちょっとだけ浸ってしまうのだ。

「今年も無事に終わってよかったな」

 ネーベルの言葉にちょっとドキリとしてしまう。

「うん」

「例の男爵令嬢、オティーリエ様に突っかかるようになったんだって?」

「うん、そこから何を期待してるのかって感じだよね」

 いやほんと、あの行動はさぁ、悪役令嬢ヒロイン物の話に出てくる、逆ハー狙いの転生ヒロインまんまだよね?

 自分をイジメない悪役令嬢に腹を立てて、自作自演でイジメを捏造する頭の悪いお嬢さん。

 んー、ギーア男爵令嬢。本当に転生者じゃないのかね?

 そこを確認しておきたいけれど、僕が下手に近づくと、王子殿下の恋人になったとか吹聴されそうなんだよなぁ。

 やだー、ただでさえイヴに一生懸命アプローチしてる状態で、そんな面倒なお嬢さんの相手なんかしてられるかー!

 そんな暇があるなら、イヴとデートしてぇわ! デートじゃなくても、一緒にいるだけでもいい。とにかく一緒に過ごしたい。

「ソーニョの動きはどうなんだ?」

「アンジェリカが言うには、様子を窺ってる男子生徒がちらほらいたそうだよ。でも本人は直接オティーリエに近づいてきてはいないんだよね」

 思うに、違和感なく近づくための決定的なことが起きてないからだと思う。

 ヴァッハみたいにナンパするような行動を見せたくない。特にオティーリエにそう思われたくない。

 あくまで、偶然を装った近づき方を狙っている。

 ソーニョはリトスの大公子息以外に何かあるってことなのかな?

 僕が思考を巡らしている横で、ネーベルが何か言いたそうな顔をしていた。

「どうしたの?」

「……名前」

 すぐに気が付いたようだ。

「本人から名前で呼んでほしいって言ってきた」

「イヴに誤解されないか?」

「それなんだよねぇ。あとで会ったら言おうと思って」

 返事をもらってないんだし、疚しい気持ちがあるわけじゃないんだから、いちいち言うことはないんじゃないかと思われそうだけど、僕が嫌なんだよね。話してもらえないのって。

 何も言わないで誤解されるのが一番嫌なんだ。

 言わなくてもわかってくれるっていうのはさ、相手を信頼してるからではなくって、そういった行動を相手にかける手間を省きたいってことだと僕は思うんだよね。

 だからさ、くだらない話でも、相手にとって『なんだそんなこと』って言われてしまうことでも、僕はちゃんと伝えたい。

 僕に関することでイヴに憂いを持たせたくないんだ。


「アルベルト様! ネーベル!」

 ヒルトがイヴと手を繋ぎながら駆け寄ってくる。

「探しました」

 ヒルトに引っ張られたせいか、イヴははーはーと息を切らしてる。

 こうやって見るとやっぱりヒルトってめっちゃ体力あるよね? でも筋肉質ってわけでもないんだよなぁ。

「片付け終わったの?」

「はい」

 ヒルトたちのクラスのレースどうするんだろう?

「あのレースはどうなるの?」

「資料室に飾るそうです」

 納得。すごく出来が良かったもんなぁ。ご婦人たちはヒルトたちのクラスに集中してたよね。

「アルベルト様も奉納演武お疲れさまでした」

「うん」

「来年も舞われるのですか?」

「卒業まで毎年やれって言ってきそうだよね」

 不貞腐れながら言ったらヒルトは困ったような笑顔を見せる。

「来年、お手伝いします。ネーベルも」

 さりげなーく、ネーベルを巻き込んだね?

 まぁ二人が協力してくれるなら、来年もやっていいかな?


 そういえば一年生の学園祭の時、僕はこの櫓の火を見ながら、いつか恋人とこの火を見るのかなーっと思った。思ってはいたけれど、そもそも好きな子ができるとは思ってなかったから、そんな日は来ないんだろうなとも思っていたのだ。

 でも、好きな子できたし。

 学園での思い出づくりだよ。

「イヴ、踊ろう! ネーベルとヒルトも!」

 火を囲んで民族ダンスを踊っている生徒たちを指さしながら、ダンスに誘う。

「うん」

 イヴは返事をしながら、僕が差し出した手を取ってくれた。

 イヴの手を掴んで、火を囲って楽しげに踊っている生徒たちのもとへと近づいて、踊り方を教わる。

 火を囲んで踊っている民族ダンスは、前世で言うところのフォークダンスのようなものだ。

 社交ダンスのように体を密着させて、リードしたりされたりしながら、ステップを踏むものではない。触れるとしても手を繋いだり腕を組んだりする程度のものだ。

 誰でも気軽に踊れるダンス。

 来年もイヴと、それからみんなと一緒に踊りたいと思った。



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