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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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95 学園祭準備期間に起こる騒ぎ

 ヘレーネ嬢はイジーが王太子そして国王陛下になる立場であることを知っているから、こんなことが起きた時にすぐ動かないなんて、と思ったんだろうなぁ。

 それは確かに間違っていないけれど、その場合は、他に騒ぎを収められる立場の者がいないのが前提かな?

 僕らのような立場の人間が前に出てくるのはね、それ相応の理由がある場合のみなんだよ。そうそう簡単に前に出て、口を挟むのは良くないんだ。ちゃんと物事をよく見て把握してからじゃないとね。

 んー、ヘレーネ嬢もしっかりしていそうで、その辺のことはまだまだだね。

 しゃーないわ。こういうのは経験積まなきゃわかんないもん。

 当主教育、王子教育、王妃教育とか、いろいろあるけれどさ。実際その場に直面したら、教わった通りにできるか?と問われたら、できねーよと僕は答えるよ。

 失敗は許されない。だから厳しい教育を施す。あぁ、それはわかるよ? でもそうやって教わったとしても、いざその状況に直面してその通りにできるか? 何度も練習してるからできるはず。なんて言ってるんじゃないよ。練習はあくまで練習だ。そういったことが起きると前もって身構えてるからできるんだよ。


「俺は間違ってないと思ってます。王子だからって、本来クラス長がすることに手を出すのは、役目を奪うのと同じことだ。余計なことだと思います」

「うん」

「でも……、言い方。きつい言い方をしてしまいました。頭にきて、なんか自分の感情が、止まらなかった」

 あぁ~!! イジーが青春してるー!! 不謹慎だけど、ワクワクしちゃう!

「そんな風に言わなくたっていいだろうって、カッとなってしまった。それで勢いあまってきつい言い方で返して……。そうしたら……、ヘンカー嬢が傷ついた顔をしてしまった。すぐ、言いすぎた、謝らなくってはと思ったんだけど、でもなんで俺がって気持ちになったんです」

 それで? それで? Kwsk。もっとちょうだい。

「俺は間違ってないって思っても、ヘンカー嬢の傷ついた顔を思い出すと、俺の態度は、よくなかった。キツイ言い方をして、すぐに謝れなかった。もやもやするのは、そのせいですか?」

 イジー……。

 ど、どうしよう。僕、イジーがこんな風に自分に気持ちを吐露してくれたり、他人に関心を持ってくれたり、そんな感じに成長してくれてるのはすごく嬉しい。

 イジーの話をもっと聞きたいって思うんだけど、そう、思うんだけど!! それと同様にハラハラする。イジー……、もしかして……。

 いや、やめよう。僕からこの件で何か言うのは、やめておこう。イジーが自分でちゃんと自覚するまで待つんだ。

 まだ、大丈夫。まだ、余裕があるから。

 あ~!! でも気持ちとしては、推しに投げ銭して、話を聞きたい!!


「あっ! アルベルト様! 戻ってた! イグナーツ様も!!」

 そう言って教室に飛び込んできたのは、たぶんヘレーネ嬢と一緒に出て行った女生徒のはず。

「アルベルト様! イグナーツ様! オティーリエ様が変な女生徒に絡まれてます! 助けてください!!」

 なんてこったい! 今日は次から次へどうしたんだ!!

 ヘレーネ嬢のことでしょぼんとしていたイジーだけど、クラスメイトの呼びかけに反応して僕と一緒に教室を出る。

 知らせに来てくれたクラスメイトが、僕らをオティーリエがいるところに案内してくれる。

 三学年の教室があるのは最上階の三階で、オティーリエたちがいたのは中央の階段付近だった。

 すでに野次馬ができていたけれど、僕らの姿を見て気が付いた生徒が、一人また一人とよけていく。

「あの方がオティーリエ様に変な言いがかりをつけたんです」

 僕らを案内してくれたクラスメイトが指さす方向にいたのは、オティーリエと向かい合うように立っている桃色の髪に浅葱色の瞳の女生徒。

 例の、オクタヴィア・ギーア男爵令嬢だ。

 オティーリエの斜め後ろにはヘレーネ嬢がいて、その二人の後ろに怯えた様子のブルーメ嬢と、ブルーメ嬢を守るように抱きしめているルイーザ先輩がいた。


 僕らを案内してくれたクラスメイトの声に、オティーリエたちも僕らがやってきたことに気が付く。

「リュ、リューゲン様! イグナーツ様!」

 僕らの名を声に出し、涙を浮かべながら駆け寄ってきたギーア嬢だけど、僕はイジーの腕を引っ張り、駆け寄ってきたギーア嬢をさっと避ける。

 だって、そのままボケーと突っ立ってたら、ぶつかって後ろにいるイジーも巻き込んでドミノ倒しで倒れそうだったんだもーん。

 女の子ぐらい余裕で受け止められるだろうって? 僕が余裕で受け止められるのは、イヴだけだもんねー。それ以外の女子は、お相手がいない他の紳士にお任せだよ。

 まぁ、そんなわけで僕が避けたせいか、結果、ギーア嬢はズサァァァーッと廊下をうつ伏せで滑っていく。

 まるで、古き良き時代の芸人のようなリアクションだ。もうちょっとこう、勢いづけて壁に当たるまでがお約束だぞ。

 志村大先輩だったなら、それぐらいやって笑いを取ってくださるからな?


 何とも言えない空気が流れる中、僕は構わずオティーリエたちへと近づく。

「難癖付けられたって聞いたけど、酷いこと言われた?」

「酷い……? いえ。酷いと言うよりも、何を仰っているのか、よくわからなくて……」

 オティーリエも動揺というよりは戸惑っている感じで、なんでこんなことになったのかわからない様子だ。

 ちょうど時計塔の鐘がなって、午前中の授業終わりを知らせる。

「知らせてくれてありがとうね? 僕らこのままお昼に行くから、教室にいるクラス長とみんなに伝えてくれる?」

 僕とイジーを案内してくれたクラスメイトに、教室に残ってるクラスメイトへ伝言を頼む。

「はい、わかりました。お疲れ様です」

 学園祭準備期間は、授業はなくそして作業も午前中までと決められているので、一応教室にいるクラスメイト達へ、このまま僕らが抜けることを伝言してもらった。

「ルイーザ先輩も特に予定がなければ、一緒にお昼どうですか?」

「あら? いいのかしら?」

「ヒルトやヘッダもいるので、是非、どうぞ」

「なら、ご一緒させていただこうかしら」

 オティーリエたちと一緒にいてくれたお礼として、ルイーザ先輩もお昼に誘うと快くオッケーを貰った。




カバーイラスト公開してます。


▼プロダクトサイト▼

https://www.sbcr.jp/product/4815628789/


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