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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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94 秋だけど、アオハル!

 奉納演武をするのは別にいいんだけどさ、クラスの展示品を作らないといけないし、それに何度も奉納演武を踊ってるからって、ぶっつけ本番は無理なんだって。

 練習は必須だよ。奉納つまり神様に捧げる演武なんだから。

 時間が、時間が足りんのだ!!

 シューレ先輩は僕が奉納演武をするなら、講堂の使用時間の調整はできると言ってくれたのだけど、でも勝手に、『はい、やります』なんて返事はしない。

 クラスのみんなに確認しなきゃダメだもん!

 僕、クラスみんなでやる作業は、疎かにしたくない。ちゃんと参加したい派。みんなでワイワイしたいし、やりたいのだ。仲間外れ寂しいよー。


 教室に戻ってクラスのみんなに相談しようと思ったら、なんだか……空気がギクシャクしてる?

「あれ? どーしたの?」

 僕が声をかけるとみんなが一斉にこっちを見る。

 うおっ! なんだ、なんだ?!

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」」」」

「「「「アルベルト様ぁぁぁぁ!!」」」」

「「「「戻ってきてよかったぁ!!」」」」

 クラスメイト達が涙目で駆け寄ってきた。一部先輩たちも交ざってるが、いったい何があった?

「戻ってきたぁ!」

「よかったぁ!」

「助けてください!」

「怖かったよぉ!」

 なんだ君らは! どさくさに紛れて抱き着いてくるんじゃない! 僕の背が低いからって、抱きぬいぐるみ代わりにするな! マスコット扱いすんな! 僕はライナスの毛布じゃないぞ! ちょ、先輩たちも、クンクンしてくるな! 僕にはイヴっていう求愛中の好きな子がいるんだから、誤解されたらどーするんだ! やめろー!


 僕をもみくちゃにしてきたクラスメイトと先輩たちを引っぺがし話を聞くと、なんとイジーとヘレーネ嬢が言い争ってしまったそうだ。

 えー?! どうしたイジー。君が女生徒と言い争うなんて……、あれ? そういえば一回あったっけ? ブルーメ嬢の婚約者の件でヘレーネ嬢からの問いかけに、イジーの何かが引っ掛かったのか、プンプンしちゃったんだよね。

 ヘレーネ嬢は、オティーリエとブルーメ嬢他数人の女生徒たちと一緒に少し席を外しているそうだ。

 それでイジーは、一人で黙々と石膏粘土を捏ねながら何かを作ってる。

 う~ん、相変わらずの無表情。無表情でも怒っているわけでもないんだよねぇ。

 イジーが怒ってる場合は、結構わかるよ? 魔力制御はできてるけれど、ちょっと漏れちゃうんだよね。だから、空気がひや~っとするんだ。

 この辺はマティルデ様と同じ。

 でも僕が戻ってきたとき、教室内は冷やっとはしてなかったから、イジーは怒ってはいないんだよね。

「イジー、何作ってるの? これはー、リューベックにあるエッセン遺跡かな?」

 リューベックは王領のうちの一つで、王太子が拝領する土地だ。

「……はい」

「僕も手伝おう。崩れた城壁路は僕が作るよ」

 イジーの隣に座って、一緒に石膏粘土をこねて形をつくる。

 むむ、意外に、なんか、難しいぞ?

 僕がう~っと唸っていると、そばで僕らの様子を窺っていたクラスメイトが、見かねて『ここはヘラを使って削ってみてはどうですか?』と、声をかけてくれた。

 手本を見せてもらって、思わず感嘆の声を出してしまう。

「凄い。ちゃんと削れてる」

「アルベルト様は意外と不器用ですね?」

「僕、こういう細かいの苦手ぇ。ネーベルは上手いよ。でもさぁ、手伝ってくれないの。自分でやれって言うんだよ」

「へー、クレフティゲ様って、アルベルト様のこと甘やかさない方なんですね。何でもやってあげてそうに見えますけど」

「うん。ネーベルはそういうところは厳しい」

 でも頼りがいのある片腕だからね。本当に困ってると手を貸してくれるんだよね。

「イグナーツ様はアルベルト様とは逆ですね」

 そうなんだよねー。イジーはね、テオと同じく剣術やりたい、身体動かしたいってタイプだけど、脳筋じゃないんだ。

 テオとの打ち合いも、頭を使ってフェイント入れる。テオは野生の勘? 天性の才能? 勝手に体が動くって感じでうまく避ける。だからなかなか勝負がつかない。

 体を動かすのも好きだけど、こういう細かい作業も好きだと思う。

「聞かないんですか?」

 しばらく黙々と作業していたら、ぽつりとイジーが呟いた。

「ヘレーネ嬢と言い争った理由?」

 逆に訊ね返すと、イジーは小さく頷く。でも手は止めない。器用だな。

「兄上は、理由はともかく女性を泣かすようなことはするなと、そう仰ると思った」

 まぁ、確かにそう。フェミニストというわけじゃないけれど、この世界の女性って言うのは、長という立場でないと、男のアクセサリー扱いだ。どれだけ正しい主張をしても認められない。

 だからこそ、そんな目に遭わせないように気を配るべきだと、僕は思う。

 けどねー。

「僕、二人がどんな言い争いをしたのか、見てないし聞いてないもん。なのにイジーを責めるの? 女の子を泣かすんじゃないって? それは酷いお兄ちゃんだねぇ。ヘレーネ嬢に理由があったように、イジーにだって理由があったんだろうにね」

「……作業をしないで、騒いでる生徒がいたんです」

「僕がいなくなってから?」

「はい。それだけなら、俺も何も言いませんでした。作業が遅れて困るのは本人だし」

 せやな。

「だけど他の作業している相手の邪魔をし始めたんです」

 あらら、いつもと違う非日常的な空間にはっちゃけたのかな?

「クラス長が止めても言うこと聞かなかったんで、俺が注意しました。騒ぐのは構わないけれど、他の人を巻き込むなと」

 まぁ、こういう時に仲裁に入るのが、クラス長のお仕事だしね。それでも止まらなかったら、イジーが出るのは、そんなおかしな流れじゃない。

「そうしたらヘンカー嬢が」

「うん」

「止めるならもっと早くやってほしかったって。それで……」

 あー、それで売り言葉に買い言葉。言い争いが始まってしまったわけか。

 真剣な本人たちには面と向かって言えないけど、青春だなー。あまずっぺー。



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