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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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93 三年目の学園祭準備

 手伝いに来た五年生の先輩たちに、ジオラマ造りを説明したら、逆に先輩たちが興味津々になってしまい、当初の倍の大きさのジオラマを作ることになってしまった。

 まぁそれはそれで面白いからいいけれどね。

 あと各領地の特産品は目印になるものを、木彫りや石膏粘土などで作って、レポートと一緒に飾ることにした。

 そんな準備をしていると、ミュッテル先生が顔を出して呼びに来た。

「アルベルト様、すみません。教員室に来ていただけませんか?」

「かまいませんけど何かあったんですか?」

「い、以前のようなことではないですから! そこだけは安心なさっていただけたら!!」

 僕の返しにミュッテル先生は慌てて言いつくろう。

 責めてるわけじゃないのだから、そんな慌てなくってもいいのに。

 とりあえず、クラスメイト達に抜けることを声掛けして、ミュッテル先生と教員室に行くと、前に一度見たことのある生徒と、それからシュッツ神道の神官さんがいた。

「こんにちは、リューゲン殿下」

「……シューレ先輩?」

「今、名前出てきませんでしたね?」

 だって、下学部の時にシュタム会に勧誘された時以来なんだもん。

「まさか、この忙しい時期に、また勧誘ですか?」

「それはもう諦めてますよ」

 実はシューレ先輩の勧誘を断った後も、他のブラット(役員)や、ヴルツェル(長)に、シュタム会に入って欲しいっていう勧誘されたんだよね。でも、僕もイジーも、それからテオも、無理と言って断っている。

「えっと……」

「王国の新風にご挨拶を申し上げます」

 シューレ先輩と一緒にいた神官さんは、深々と僕に頭を下げる。

 ん~? 直系王族への挨拶って、国王陛下には『太陽』で王妃殿下には『月』。それで王子殿下と王女殿下には『新しい光』、王太子だとこれが『眩い光』になるわけなんだけど、今この人僕のことなんて言った? 『新風』って言ったよね?

 嫌味って感じでも、悪意があるって感じでもない。悪い感じよりも、好意的な感じだ。

 不思議そうな顔をしている僕に、神官さんは人のよさそうな笑顔で言った。

「アルベルト殿下は『新風』でございますれば」

 それ以外ではないと、言外に伝えられた気がする。

 まぁ、比喩表現が何だろうと、僕はどうでもいいんだけどね。


 たぶんこのシュッツ神道の神官さんは、学園都市内にある神殿に住んでいる神官さんのはず。

 学園都市内の神殿は全能神・ヴォータンと、知恵神もしくは学問神であるヴァイスハイトの二柱を祀っている。

 去年の学園祭で、奉納演武をしても大丈夫かって確認しに行ったときに、学園都市内の神殿のこともちょろっと訊いたから間違いないはず。

 もしかしてその時に対応してくれた神官さんかな? 剃髪してるからわかりにくいんだよぉ。

「アルベルト殿下にお訊ねしたくお伺いしました」

 戸惑っている僕をよそに、神官さんに声をかけられる。

「なんでしょう?」

「今年は、奉納演武はなさらないのでしょうか?」


 は? どーいうことー?


 ちょっと思考が付いていけない。

 いやいや、言われた意味は分かるけれど、でも去年のあれは、ほら、学園祭のクラスの催しだったでしょ?

 去年、講堂使用クラスが少ないってことで、じゃぁ展示系ではなく催し物系にしようってなったんだよ。

 でも演劇だと誰かが主演にならなきゃいけないし、やりたい人がいるのなら別に良いけど、なんだかみんな乗り気じゃなかった。演奏会も楽器が使えない生徒もいたからね。一か月じゃぁ練習量が足らない。

 それに演劇や歌劇、それから演奏会という、定番はやりたくないっていう意見も多くあったのだ。

 なかなか案が出てこなかったから、僕が奉納演武にしようか?って、アドバイスして、それが採用されたんだよね。

 個人の出し物じゃなくってクラスの出し物だよ。

「楽しみにされているのです」

「……誰が?」

 神官さんの言葉に思わず問い返してしまった。

 いや、わかってる。わかってるよー! たぶんね、たぶん、風神ヴィントだよね? 楽しみにしてるのは。

 僕、加護を貰ってるしさぁ。

 昔なら『はーん? そんなんあるわけねーだろ。神とか偶像やで?』って言ってた。

 実際、僕はフルフトバールでシルバードラゴンに会うまで、神様なんか本当にいるわけなかろう? それは信仰するには必要だから、って考えてたよ。

 でもシルバードラゴンと出会って、いろいろ勉強して、この世界は前世とは違って、神と人の関りが近いと知った。この『加護』もその一つだ。

 それから僕自身が、神……によって転生を繰り返してる。あと一番は夏にヒルトの神様、シュヴェル神の祝福貰いに行ったら、声を聴いちゃったからさぁ。

 もう簡単に『神様なんかいるわけねーべ』とは言えないよねぇ。


「後日、神殿で奉納演武するのではダメなんですか?」

「自慢されたいそうなので」

 誰にー?!

「シュッツ神道の神々は、子供が大好きなのです。この学園都市で行われる催し事、学園祭や剣術大会には、よく神々が覗きにいらっしゃいます」

 聞いてないよー!! そんな話は初耳だよー!!

「学園祭では未来あるお子達が演劇や歌劇を披露してくれるので、テンツェ神やキュンスト神、ムズィーク神がことさらお悦びになるのです」

 テンツェ神ってたしか芸能とか芸事の神様、キュンスト神は芸術神、ムズィーク神はヴァッハの家が祀ってたから知ってる。音楽神だ。

 つまり学園祭と剣術大会は、その手のことを司ってる神々が覗きに来やすいのね?

「去年、アルベルト殿下がヴィント神の奉納演武をされたことで、ヴィント神は大変お悦びになり、今年も見たいとヴァイスハイト神を通してのお声がありました」

 何してんの? 何やってんの? だって僕、今年の夏の長期休暇の時も、ヴィントの主神殿からお声がかかって、奉納演武してきたよ? 

 なのに自慢したいから、またやってって、そりゃないよー。



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