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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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86 人を呪わば穴二つ

 トーア新学長が咳ばらいをして、黙ってしまったザルツ秘書の代わりに話し始める。

「リューゲン殿下。その辺で終わりにしておきませんか? 追い詰めては可哀想ですよ」

「では冤罪をかけられた僕は、その可哀想には値しないと?」

 追い詰めるもクソもあるか。仕掛けてきたのはアインホルン学長とザルツ秘書の方だ。当然、反撃される覚悟があって僕に喧嘩を売ってきたはずだ。


 昔、僕の悪い流言が広まった。いろいろ言われていたけれど、簡潔にまとめれば『人の話を聞かない、我儘で堪え性のない暴君』だ。

 そう思われるように印象操作をされたし、僕と直接対面したことがない人でも、その話を鵜吞みにして信じた。

 だけど実際顔を合わせた人たちは、聞いた人物像とは違う僕に驚く。

 ちゃんと相手の言葉に耳を傾けるし、あっちこっちで騒ぎを起こすどころか、勝手に動き回って護衛の手を煩わせる、なんてこともしていない。

 実際の僕は、話で聞いたような暴君ではないし、教師の言うことに素直に従うし、先輩にも丁寧に接している。

 話ほど暴君ではない。それどころかやんちゃをして騒ぎを起こすどころか、どちらかといえばおとなしめの子供だと思ったはずだ。

 これなら簡単に言うことを聞かせられると思ったんだろう?

 確かに僕は、やみくもに反抗することはないよ。でもそれは、相手が僕のことをちゃんと見てくれて、一個人として尊重した態度をとってくれているからだ。

 僕を馬鹿にし見下した相手には、年長者だろうと国王陛下だろうと、しっかり意見を言わせてもらうし、泣き寝入りもせんからな。

「僕は知る権利を行使しただけです。不正をしたと冤罪を吹っかけてきたのはアインホルン学長とザルツ秘書だ。冤罪が起きた流れを明確にすることの何が悪いんですか?」

「それは確かにリューゲン殿下の仰る通りです。しかし殿下は王族であらせる」

「王族なら下々に慈悲の心を持てと? 王族を冤罪にかけようとしていた者たちを許せと?」

「そのようなことは言っていません」

 じゃあ、何が言いたいんだっつーの。

「手心を……」

「散々やってきましたよ。アインホルン公爵の継嗣と次子のお二方には」

 目溢しならやっていた。第一王子殿下を貶める不敬な発言を、ずっと黙殺してやっていただろう?

 仲間内の寄子家の貴族相手に、僕への悪意を持った見方で愚痴ったことを、僕に面と向かって言っていないから見逃してやっていたじゃないか。

「トーア新学長、疑惑は明確にするべきではありませんこと?」

 ずっと黙っていたヘッダが軽やかな口調で口をはさんできた。

「アルベルト殿下は、アインホルン学長とザルツ卿の動機をお聞きしているのではありませんわ。お二方がやったことを正確に把握しておくべきだと仰っているのです。後から、言った言わなかった。認めた認めてない。そんなことが起きては大変ではありませんこと?」

 そう告げてから、目を細めて猫のような笑みを浮かべる。

「トーア新学長が、アインホルン学長を支持しているから庇われているのならば、この件はもっと明るみにせねばなりませんわよねぇ?」

 まるで獲物を前にした猛獣だな。

「ヘドヴィック様」

「モノを教える立場にいる長なのですから、責任は果たしていただかなければ。大人の事情とやらは大人の間だけで済ませてくださいな。子供を交ぜた席でそれを持ち出されても、わたくしどもは『なぜ?』『どうして?』と訊ねますわよ? 子供は知りたがりですものね?」

 ヘッダの口撃にトーア新学長は深くため息を吐く。

「ザルツ卿。リューゲン殿下のご質問にお答えください」

 ほう? ヘッダの方が権力的に上なのか。まぁ、理事の一人だしね。

「え?」

「学生の会話を歪曲しアインホルン学長にお伝えした。それでよろしいですか? 違うのでしたら、正しい説明をなさってください」

 戸惑うザルツ秘書に、トーア新学長は告げる。

「わ、私は……、せ、生徒の話をローレンツ様へお伝えしただけです。そ、その時、不正があったのかも、とは言いましたが、リューゲン殿下がカンニングをしたとは言ってません!」

「ダーフット!」

「私は、嘘は言ってません! カンニングをしたなんて一言も言ってない!」

「そんなことはない! お前が言ったんだ!」

 結局こうなったか。罪の擦り付け合い。

 ザルツ秘書がアインホルン学長を諫めない時点で、こんな風になるとは思ったよ。どっちも小物で、やらかした時の尻拭いを自分でやるってことすら考えてなかったんだろう。

 ぎゃぁぎゃぁ言い合いを始める二人に、トーア新学長はまたしてもため息をつき、ミュッテル先生は真っ青のままで、ヘッダは笑顔を崩さない。オティーリエは冷たい視線を兄とその側近に向けたままだ。


「見苦しい」


 僕の一言で、ぴたりと会話が止まる。

「自分の首をかける覚悟がないのに、王族を貶めるなんて、舐めてるんですか?」

 そう考えると、国王陛下の元側近たちの方が、まだ肝が据わっていた。

「ハント゠エアフォルク公爵令嬢が言ったように、僕は二人の動機を聞きたいんじゃないんですよ。なんで僕が不正をしたという冤罪になったのか。その原因が知りたいと言ってるんです」

 動機を追及されないから許してもらったと思うのは、早合点だからな? 

 僕への冤罪がどんな会話で発展したのか、それが明らかになれば、次は『なんでそんなことをしたんだ?』と、誰もが考えるだろう。

 僕が聞かなくても誰かが聞くよ? なんでそんなことしたんですか、ってね。

 だからなかなか話さないのかな? でも、僕に喧嘩を吹っかけてきたのはアインホルン学長とザルツ秘書だ。

 後始末はオティーリエがつけるだろうけれど、その前に僕に対して二人がやった名誉の毀損を贖ってもらわなければね。



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