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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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79 突然の諍い

 ブルーメ前女伯のことは、全部憶測でしかない。だってもう本人が最果ての門を潜ってしまっているのだから、確認のしようがないのだ。

 あぁ、そうだ。日記をつけていたら何か書いてあるかもしれない。

「あるかどうかはわからないけれど、母上の日記があるかどうか探してみたら? もしかしたらそこに何か書いてあるかもしれないし」

「日記……。そうですね。今度の休みに探してみます」

 ブルーメ嬢は目を輝かせて答える。

「話がずれていったけれど、ブルーメ嬢に知ってもらいたかったことは、例の幼馴染みは退学していること。それによってフィッシャーの八つ当たりがあるとみていいってこと。僕らが一緒にいるときに八つ当たりしてきたなら、僕らが壁になることができるけど、いないときにやってくる可能性もあるから、そこは気を付けて。まぁ、今のところ一緒の行動をとってるから、大丈夫だとは思うけど」

 フィッシャーみたいなのは、誰かがそばにいると強く出れないタイプのはず。女子だけならともかく、そこに男子がいたら怖気づくと思うんだよなぁ。

 あともう一つ考えられることは、父親から一切合切説明されて、自分には後がないということを自覚した場合だ。

 次男の自分が貴族として裕福な生活を送るためには、ブルーメ嬢との結婚が一番いい条件であると気づいたら、どうなるかな?

 自分の方が上だというマウントをとってくるか。手のひら返しして、ゴマをすってくるか。

 どっちかだよなー。

「一番心配なのはさ、フィッシャーがブルーメ嬢は自分のことが好きだって思いこんでる場合ね。その場合、フィッシャーの都合のいいように、なんでも変換させると思うんだよ」

 僕がそう言ったら、女子組が『あぁ~』と呆れの顔をする。

「ありそうというか、アンジェリカ様は自分のことが好きだから、何をやっても許されると思っていそうな気も……」

 オティーリエはその手の物語をよく読んでいたようなので、そうはならないだろうという否定よりも、その光景が容易に想像できたのかもしれない。

「あとは八つ当たりからの、勘違い思考になっていきそうですね」

 ヘレーネ嬢は冷静に分析結果を口にした。

 二人に言われたアンジェリカ様は顔を歪ませて呟く。

「わ、私、一度もパウル様が好きだと言ったことはありませんよ?」

「言わなくても、あの手の方は脳内変換するのですよ。『自分たちの婚約が決まったのは、アンジェリカが自分のことを好きになって望んだから』そう思うのです」

 オティーリエの言葉に、ブルーメ嬢が信じられないと言わんばかりの顔をする。

「そ、そんな。だって私たちの婚約はフィッシャー伯爵が事業に失敗して借金を背負ったからなんですよ」

「その前に何度かお会いしていたのでしょう?」

「は、はい。伯爵夫人に連れられて。でも私はお母様のそばから離れたことはなくって、パウル様と二人っきりになったことなんてないです」

「あの手の勘違いをする方は、そういった細かい事情は、頭の中にはいっていません。詳しい事情など、どうでもいいのです。たとえ正しい情報を聞いていたとしても、自分の都合のいいように脳内変換をするのですよ」

 オティーリエ、厳しいこと言うなぁ。

「まず最初に、婚約前お二人が出会っている。その次にフィッシャー伯爵家が事業を失敗して、アンジェリカ様のお母様に借金をお願いした。最後に、その条件としてアンジェリカ様とフィッシャー様の婚約が結ばれた。これがお二人の時系列であり事実ですね?」

 指を一本ずつ立てながら、オティーリエが説明する。

「でもフィッシャー様の目線では、最初の出来事は、フィッシャー伯爵夫人に連れられてブルーメ家を訪れた。その次に、アンジェリカ様が自分に一目惚れをして、ブルーメ家から婚約の打診が来た。最後、その頃フィッシャー家は事業で失敗して借金を背負っていたから、ブルーメ家から婚約をすれば借金の肩代わりをするという話で婚約が結ばれた。こうなっているのですよ」

 言われてみれば幼馴染みをいじめるなと難癖付けていたんだよなぁ。あれって、ブルーメ嬢がフィッシャーのことが好きだから、やきもちを妬いて幼馴染みをいじめたっていう感じだったかも。

「な、なぜ?!」

 オティーリエの説明にブルーメ嬢は訳が分からないと言った様子だ。

「なぜそうなるの?! 信じられない!」

「なぜ……。そう、なぜなのかしら?」

「殿方の考えることはよく……」

 ヘレーネ嬢も困ったような顔をして、そして僕とイジーの方を見る。

「どうでしょうか?」

「どうって、なにが?」

「アルベルト様とイグナーツ様は、フィッシャー様と同じ男性ですので、何かお分かりではないでしょうか?」

 ヘレーネ嬢の問いかけに、僕は答えに窮する。

 フィッシャーの気持ちがわかるから答えられないというのではなく、むしろ全く気持ちがわからないから答えられないのだ。

「そんな考え方をしたことがないからわからない」

 むすっとした口調でイジーが言った。

「異性とか同性とか、それ以前の話だろう。人間性として、フィッシャーがそういうやつだということじゃないのか? 俺も兄上もあんな不誠実な人間じゃない」

 あらら、イジーが女子にこんな言い方をするなんて。

「そんな言い方をなさらなくてもいいじゃないですか。男子目線の意見をお聞きしたいと言っただけじゃないですか」

 ヘレーネ嬢までガルガルし始めちゃった。

「男子ならみんな同じ考えだと思ってもらいたくない。同じ男としてみても、フィッシャーの考え方は異常だ」

 いや、フィッシャーがブルーメ嬢は自分に惚れていると勘違いしているかどうかは、まだ不明だからね?

「……それは大変申し訳ありませんでした。以後気を付けます」

 あーあー、売り言葉に買い言葉じゃないか。

 物静かなイジーとヘレーネ嬢がこんな風に言い合うなんていったいどうしちゃったんだよ?



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