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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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77 ヒロインにも忠告

 僕の提案に、オティーリエは考えこんでしまった。

「無理強いはしないよ。これは提案だから、嫌だって言ってもいい。答えが出たら教えて。それまでは現状維持でやっていくから」

 んー、オティーリエの様子から見ると、無理かなぁ。他の手を考えるか。

「次はブルーメ嬢ね」

「え? わ、わたし、ですか?」

 いきなり話を振られたブルーメ嬢は驚いた顔をする。

「んー、まずね。ブルーメ嬢、フィッシャーとはどうなってる?」

「パウル様……?」

「うん。いうなれば、フィッシャーって婚約者がいる身で、平民の少女を追いかけまわしてたでしょう? ブルーメ嬢は寄親であるベッシュッツァー侯爵の後見を受けてるから、フィッシャーの浮気ともとれる態度は、ベッシュッツァー侯爵の方からもフィッシャー伯爵家に抗議がいってると思う。その辺りはどうなってる? まだ様子見状態?」

 僕の問いかけにブルーメ嬢は言いにくそうな顔をしていたので、ヘレーネ嬢へと視線を移す。

「どう?」

「アンジェリカ、話してもいいかしら?」

「え、あ、はい」

 はっきりしないブルーメ嬢にヘレーネ嬢はやれやれと言った様子で、僕の質問に答えた。

「お父様はアンジェリカの後見人として、フィッシャー伯爵へ婚約白紙の方向に話を持っていっています」

「あっちが拒否してる?」

「はい」

 それもそうか。フィッシャー伯爵としては、爵位を持つことができない我が子に、不自由のない生活を続けさせたい。そのためには貴族の婿に入れるのが一番いいって思惑がある。

 だからこそ、邪魔な平民娘は出荷したのだ。

 そこまでやっているのだから、婚約は続行させたいだろう。

「んー、じゃぁまだ話し合いは膠着状態なわけね?」

「そうです。アンジェリカの婚約に何か問題があるんですか?」

「問題があるのは、フィッシャーの方。昨日、ネーベルから聞いたんだけど、例の幼馴染みの女生徒。退学してるんだ」

「えっ?!」

 声を上げたのはブルーメ嬢だけだったが、この話はオティーリエとヘレーネ嬢も初耳だったようで驚いた顔を見せる。

「フィッシャーがブルーメ嬢に八つ当たりしてきそうな気がするんだよね」

 一年の頃の出来事を思い返せば、ずいぶんと直情的な性格のようだし、いくら親から何か言われたとしても、また同じようなことをしないとは言い切れない。

「あの……、八つ当たりというのは?」

 ブルーメ嬢に聞かれて、思わず『何言ってんの?』と言いそうになってしまった。いかんいかん。そんなこと言ったらブルーメ嬢が委縮してしまう。

「フィッシャーは幼馴染みのことが好きだったわけでしょう? その幼馴染みが学園を退学した。どうして退学したのか? と考えたとき、おそらく真っ先に思い浮かぶのは、自分の婚約者が何かしたんじゃないかということだよね」

 僕の返事に、女子組は納得した顔をする。

「愛する幼馴染みが学園を辞めた八つ当たりで、ブルーメ嬢に文句を言ってくる可能性がある。いや、たぶん絶対に言いにくると思うんだ」

「確かに……」

「文句を言いにくるでしょう」

 ぼそりと呟くブルーメ嬢に引き続き、ヘレーネ嬢もきっぱりと言い切る。

 それだけフィッシャーは短絡的というか、予想が付くことしかしないということだろう。

「それでね、ブルーメ嬢はこの婚約どうしたいのかなって思ったんだよね」

 前にもテオが破棄にすればいいじゃんって言ったことがあったけど、ブルーメ嬢はその案には消極的な感じだった。

 理由はその婚約を結んだのが、敬愛してやまない亡き母親が行ったものだからだ。

 亡くなってしまった敬愛してやまない母親が、自分のためを思って整えた婚約なのだから、無下にしたくない。婚約相手が屑であるということは、母の見る目がなかったことになる。母の評価を下げたくないという思いがある。

 その気持ちはわかる。わかるけれど、でもフィッシャーが婚約者としては屑であることは事実で、その屑とこの先夫婦としてやっていけるのかという話だ。

「ブルーメ嬢が開き直って、フィッシャーを自分の跡継ぎを作るためだけの道具としてみるなら、それはそれでいいよ? でも、『いつかは目を覚まして自分を見てもらえる』とか、『問題の幼馴染みがいなくなったから、婚約者としてちゃんとしてくれるだろう』とか、そういった甘い考えはやめておいた方がいいよ。親に言われているにもかかわらずフィッシャーの態度が変わらなかったんだ。幼馴染みがいなくなったところで、心を入れ替えて、ブルーメ嬢に寄り添うわけない」

 僕が言ったことはブルーメ嬢も薄々は理解していたのだろう。そんなことはないという否定は出てこなかった。

「あとね、フィッシャーと結婚したとして、自分の子供を自分と同じ目に遭わせるのはやめなよね」

「え……?」

「君のご両親は政略で婚約して、愛のない結婚生活だった。父親は外に愛人と子供まで作って、君は父親からの愛をもらえなかった。自分がそうだったからって、自分の子供も同じ目に遭わせるの?」

「あ……」

 その考えには至らなかったって感じだな。

「わ、私……」

 ブルーメ前女伯がどんな人か知らないから、憶測でしか考えられないんだけど、何を考えてこの婚約を受け入れたんだろう。

 ブルーメ嬢の婚約って本当にブルーメ家には利がないんだよ。唯一の利といったら、貴族の血統を残す相手としてじゃない? 出所不明の相手ではなく、一応そこそこ家門が続いている相手なわけだし。

 でもそれだって、フィッシャー家でなくてはダメというわけではない。

 条件のいい相手はほかにいるはずだし、親に決められた婚約が気に入らないから雑に扱うというのが、もう結婚相手としては除外だよね。



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