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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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72 側近からの報告

 自分で本人に聞いてごらんといった僕の提案に、テオは少し不服そうだった。きっと僕がもっと何か言うと思ったに違いない。

「ヴァッハのついた嘘って、テオが聞いていた以外では、『婚約者以外の女子と親密になりすぎて、婚約破棄されて跡継ぎから外されている』とか『本家の方から婿養子をとって妹と結婚するから、自分は家を引き継がない』とかいうのもあるんだよ」

「え?」

「ヴァッハには婚約者はいないし、ヴァッハ伯爵家が本家だから、どこかの家の分家ということもないから、それも嘘なんだけどね」

 婚約者がいないのは、ヴァッハの出生の件もあって、ご両親は慎重に決めたかったんだろうなとは思っている。

 さすがに馬鹿正直に全部話す必要はないけれど、だからと言って婚姻する相手に何一つ説明しないって言うのもね。後々リトスがらみで何かあったら問題になる。

「なんでそんな嘘ついたんだあいつ」

「血の繋がりがないからじゃない?」

 僕は昼メンバーに、ヴァッハが戸籍上は実子になってるけれど実際は違って、それを知って家を継ぐ資格がないって暴走したところをソーニョに利用されたようだと、おおざっぱな説明はしている。

「両親は、そのこと気にしてないのにか?」

「こればっかりは、当人じゃなければわからない葛藤だと思うよ? テオだって実は家族と血の繋がりがなかったと、ある日突然知ったとしたら動揺するだろう? これからどうしようって思わない?」

「それは、まぁ……」

 テオにもヴァッハがリトスの先王陛下の子供であることは言ってない。その気になればテオの方でも調べられることだ。

 僕とのこの会話で、それでもおかしいと思ったら自分で調べるだろう。

「ヴァッハの場合はそこも絡んでるから余計に悩んだんじゃないかな? 自分の評判を落とせば、妹さんを跡継ぎにする名目ができるとかさ。やりかたが下手すぎるのは事実だけどね。でも、結局のところ嘘をついた実際の理由は、本人じゃなきゃわからないよ」

 僕の返事にテオは小難しそうな顔をして黙ってしまった。

 テオがヴァッハを疑う理由は、やっぱり、嘘を教えられたことだろう。

 だけどなぁ、テオって嘘は絶対に許せないってタイプじゃないと思うんだよね。場合によっては嘘をつくのもありって考えるだろう。

 ヴァッハがついた嘘はたくさんあったけど、最終的に行き着くところは『自分は家の跡は継ぐことはなく、どこかに婿入り希望』なんだよ。そうすることに違和感を抱かれないように、いろいろ嘘をついたのかな? やっぱりそこは本人に聞かなきゃわかんないや。

「とりあえず、わかった。どのみちあいつと話さないとだめだなこりゃぁ。俺の気が済まない」

「話すのはいいけど、ソーニョには気を付けてよ? 今、僕の方では釣りをしようと思ってる真っ最中だからね」

「大丈夫、アルの邪魔はしねぇよ。俺がヴァッハに話しかけても違和感ないように、考えてやる。っていうか釣り?」

「そう釣り」

 笑顔で答える僕にテオはだれを思ってか気の毒そうな顔をする。

「可哀想に」

「狩りじゃないだけましですね」

 クルトも大概ひどいこと言うなぁ。

 あぁ、そうだ。

「狩りで思い出したよ。テオ。来年の夏、フルフトバールに来る?」

「え?」

「僕ねぇ、来年の夏の長期休暇。できるかどうかは不明だけど、イジーをフルフトバールに連れて行こうと思ってるんだ」

 去年、テオのいるメッケルに連れていくことができたから、来年行けるんじゃないかなぁとは思う。王妃様と宰相閣下には、来年の夏、イジーと一緒にフルフトバールに避暑に行きたいっていうことは伝えたんだよ。あと可能なら、王妃様も一緒にって。

 王立学園に入学して、学園都市内で問題行動を起こしてないし、勉強だってちゃんとやってるし、まじめにちゃんとしてるから、長期休暇の遠出の許可出してもらいやすいでしょう?

 なのに今回のカンニング騒動だよ。本当にさぁ、僕の予定を狂わせてくれたよね? 勉強も生活面もちゃんとやってますって、みんなにわかってもらうように頑張っていたのに、ケチをつけられたみたい。

「五年生の夏だと、最終学年だからやることいろいろ出てくるだろうと思う。ゆっくり遊べるとなったら、きっと来年が最後だと思うんだ。一度ぐらいイジーにも冒険らしいこと体験させたいじゃん? 来年、フルフトバールに連れて行って、不帰の樹海で魔獣狩りをしようかなって考えてんの。だからテオも一緒に来る?」

「行く!!」

 前のめりで返事をする。

「絶対に行く!!」

 約束だからな! と何度も念を押してくるテオは、さっきのヴァッハに対しての疑念なんて吹き飛ばしてしまったようだ。

 案外単純だなぁ。

 話が一段落ついたと思ったのか、ネーベルが僕に向かって口を開いた。

「アル。俺の方からも報告がある」

「なに?」

「ブルーメ嬢の婚約者、覚えてるよな?」

「幼馴染みファーストしてたフィッシャーね?」

「その例の幼馴染みが学園を辞めた」

 イヴやブルーメ嬢の話を聞くに、フィッシャーの幼馴染みは領地に住まう平民の子供で、貴族のご令嬢ではなかったはず。

 貴族の庶子でもない平民の子供が王立学園に来るのは、神殿か教会からの推薦で、その中でも上学部まで進級する場合は、将来貴族と関わる職に就く希望があるからだ。

 だから平民から上学部へ進級する場合、文官科か騎士科のどちらかになっている。

 例の幼馴染みは女生徒で、身体を動かす武術に能動的なタイプではなく、男子生徒に持ち上げられて、あれこれ世話を焼いてもらうタイプだった。つまり彼女の進級先は騎士科ではなく文官科ということだ。

 下学部ならまだコース選択もないし、基本的なマナーさえできていればそこそこうるさく言われない。あとは、庶民だから貴族社会のルールがわからないという言い訳も、ギリ通用する。世間知らずの坊ちゃんを騙すのはたやすいだろう。

 だけど上学部に進級したら、そうはいかなくなるだろう。

 そこそこの成績をとってなければ指導が入るし、異性と距離が近すぎれば注意もされる。

 フィッシャーは自分と同じ科に進級した幼馴染みに喜んだんだろうけれど、果たして当の幼馴染みはどうだったのかな?

 学園都市にはフィッシャーよりも金持ちでついでに美形な男子生徒がたくさんいるからね。



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