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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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61 どうせならその噂を利用させてもらおう

 僕の話を聞いて表情にこそ出さないけれど、イジーは不機嫌になってしまった。

 王妃様をコケにしてくれた元婚約者。その息子が、ラーヴェ王国の貴族令嬢、しかも最上位にいるオティーリエを婚姻相手に狙っていること、これがどうもイジーにとっては不愉快なことのようだ。

 イジーは昔、オティーリエの行動に辟易していたことがあった。

 オティーリエがというよりも、積極的にぐいぐいと距離を詰めてくる令嬢が嫌だったからだ。もっと言えば、人の話を聞かずにマシンガントークを行う女性が苦手だったとのこと。

 これはどうやら例の元乳母が関係していて、元乳母がそういう女性だったらしい。いわゆるイジーに異性を忌避するトラウマを植え付けた張本人。

 オティーリエはマシンガントークで話しかけたりはしなかったけれど、気が付いたら近くにいて、目があったらぐいぐいと距離を詰めてきていた。

 オティーリエの行動は、元乳母の行動を思い起こさせたに違いない。

 でも僕とのことがあって、オティーリエはイジーとは距離を置くようになったし、誘拐未遂があってからは領地に引きこもってしまった。

 オティーリエが僕らとちゃんと話すようになったのは、学園都市に来てから。

 僕に謝罪した後、イジーにも、幼少の頃追いかけまわして申し訳なかったと謝罪したそうだ。

 その頃にはイジーも、オティーリエにぐいぐい来られていたことは『あぁ、そんなこともあったか』と過去の出来事になっていた。それにしつこく言い寄られていたわけではなかったから、思ったほどオティーリエに対して、恨みや忌避感があったわけではない。

 よくよく考えれば血の繋がりがある親族だしね。

 だから、イジーにとってオティーリエは、昔ちょっと迷惑を掛けられたけど、今は仲良くしている親戚の女の子なのだ。

 身内認識があると思う。

 言葉は悪いが、オティーリエはイジーに何かあったときに王位に就く可能性がある、いわゆる王家のスペアだ。

 その人物に、かつて自分の母親を貶めた男の息子が近づいているのだから、そりゃぁ腹立たしくなるだろう。

 ラーヴェ王国の王の血を引く者として、我が国をバカにしてるのかと、そう思うのも当然のことだ。


「僕とオティーリエの噂なんだけどね、ソーニョへの牽制もかけて虫よけにも使わせてもらおうと思ってるんだ。この辺はオティーリエと他にも保護者や関係者と話し合いをして、どうするか決めようと思う。だから、僕とオティーリエの噂が広まっても驚かないでね? どうしても気になることが出来たら、人前じゃなくこっそり聞きに来て。ちゃんと答えるから」

「はい」

「あと、ヴァッハには引き続きソーニョの言うことを聞いてもらうことになってるけれど、こっちも過剰に反応しないでほしいな。そうだねー、今まで警戒していたのに、全く興味ありませんっていうのは、何かあるのか? って逆に勘ぐられるから、今まで通りちょっと警戒してますよって感じでヴァッハを見てね?」

「わかりました」

 そう言ってイジーはヴァッハを見る。

「兄上を裏切るな」

「し、しないっ。しません! そんなおっかないことしません!」

「おっかない? 何を言ってるんだ。兄上はむやみやたらと人を傷付けたりしない」

 イジーの言葉にヴァッハこそが何言ってるんだと言いたげだった。

 可愛い弟を騙してるって言いたいんでしょ? バレなきゃいいんだよ。僕イジーの頼りになるおにーちゃんでいたいんだから、余計なこと言わないでよね。

「兄上」

「なにかな?」

「まだ兄上がオティーリエと婚約するという噂を利用するかどうかは決まってないんですよね?」

「うん、僕も数日前にヴァッハからそんな噂があるって知ったばかりだからね。オティーリエにはどうだろうかっていう打診はしているよ」

「もし、決まったら教えていただけませんか? 兄上からではなくほかからその話を聞かされたら、驚くと思うので」

「わかった。この話が正式に決まったらイジーに伝えるね。……テオにも言っておいた方がいいかな?」

「そうですね。なんで教えてくれなかったんだって騒ぐと思います」

 テオって物分かりがいいなぁっと思うところもあるけれど、たまーに子供っぽく拗ねるときもあるからなぁ。

 学園都市に行ったら、テオたちにも話しておこう。


 そのあとヴァッハには、学園都市に行ったら直接連絡を取り合うのではなく、人を介して連絡を取ることや、くれぐれも独断でおかしなことはしないように言い含めた。

「もうしないって」

「僕にだけって話じゃないからね? ご両親や妹君に対してもだし、それから、もし家族とトラブってることを知ってる友人がいたら、仲直りしたこと教えてあげなよ? 心配してるだろうから」

 出生のことは言ってないだろうけれど、家族とトラブって疎遠になろうとしていたことは話しているかもしれないし、友人ならそんなことを考えているヴァッハをきっと心配しているだろう。

 僕の言葉にヴァッハはちょっと戸惑ってから、苦笑いを浮かべる。

「だ、大丈夫。俺、親しい友達っていないから」

「君、何言ってるの?」

「兄上が言ってるのは、そういうところだと思うんだが?」

 また変な思い込みしてと思ったら、ヴァッハは慌てて違う違うと手を振った。

「いや、ほんと。マジで! 話をする相手はいるけど、特別仲が良い、ゆ、友人は……。自分で言ってて虚しくなってきた」

 途中でヴァッハは両手で自分の顔を覆う。

 え? 思い込みとかじゃなくって、本当にボッチだったの?

 僕もイジーも思わず気の毒そうな視線をヴァッハに向けてしまった。



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