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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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58 律儀に報告にやってきた

 王妃様と宰相閣下との情報共有会議というお茶会が終わってから数日後に、僕のシュトゥルムヴィント宮に来客があった。

 先ぶれは来ていたからね。誰が来るかはわかっていたけれど、本当に来るとは思わなかったよ。

「えへ。お邪魔します」

 照れたように笑いながら顔を出したヴァッハは、ギュヴィッヒ領で会った時よりも晴れやかな表情になっていて、ちゃんとご両親と話し合ったんだということが見て取れた。

「あのおっかない従者の子たちいないの?」

「君と会ったギュヴィッヒ領はヒルトの実家だよ。ネーベルも今日は王都のタウンハウスでお休み」

「へー。なんかずっと一緒だと思った」

 休みぐらいちゃんとあげてますぅ。誰がそんな社畜のように働かせるかっていうの。

 立ち話もなんだから来客室に通して、ヴァッハの話を聞くことにした。


「殿下に言われたから、ちゃんと父上と母上、それから妹も一緒に話し合ったんだ」

「うん」

「二人の愛情はちゃんと身に染みて感じてるけど、でも家を継ぐっていうのはやっぱり正当性が必要だと思うんだ。俺がさ、少しでもヴァッハ家の血を引いていたら、意固地になって継がないとは思わなかったけど、やっぱり血を引いていない者が当主になるのは違うと思うし、俺も嫌だ。だからヴァッハ家を継ぐのは妹にして欲しいって言った」

 ヴァッハ伯爵は血の繋がりなんて気にしなくていい、お前は生まれてくる場所を間違えただけで、まぎれもなく自分たちの子供だと言って、ヴァッハを思いとどまらせようとしたそうだが、そこで伯爵夫人と妹君が、待ったをかけたそうだ。

 このままごり押しに事を進めて、ヴァッハを当主にしても、気が済むのは伯爵だけで、ヴァッハは心のしこりにして気を病んでしまうかもしれない。無理やり継がせて、ある日いきなり出奔して音信不通になったらどうするのだと、言ったらしい。

 血が繋がってなくても母と妹だ。ヴァッハのことをよく理解しているのだろう。

「思ってたより母上と妹のほうがしっかりしててさ。まぁ、とりあえず、跡継ぎは妹ってことになった。でもほら、一応ここまで育ててもらった恩もあるから、妹が結婚するまでは補佐って形で、ヴァッハ家の領地経営や事業を手伝うことにしたんだ」

 なるほどね。

 そのあたりが妥当なところだろうな。

「妹が成人してもしばらく補佐って形をとると思う。妹の婚約が決まってその相手と結婚ってことになったら、またどうするか考えようってことになった」

「よかったね」

「うん、殿下のおかげだ。殿下にガツンと言われなかったら、俺、バカなことやらかして、両親とそれから妹を泣かす羽目になってた。だから……、ありがとうございました」

 話し合いができたならそれで結構。

「それで、殿下はジュスティスのこと警戒っていうのか? なんかやってるんだろう? 俺、手伝う」

 まぁ~た変なことを言い出しやがりましたよ。このお坊ちゃんは!

「そっ、そんな蔑んだ目で見ないで! 癖になっちゃう」

「気持ち悪い」

「うそうそ! うそです! 冗談です! でも殿下の助けがしたいっていうのは本気! 結果的に俺がバカなことしなかったのは殿下のおかげだし、恩を返したいっていうの? 大げさとかじゃなく、俺にとってはそれだけのことしてもらったって思ってるんだ。その……、感謝。そう感謝してる」

 嘘じゃぁないんだろうけれどねぇ……。

「嬉しいけれど、そう思うなら、僕にではなくイジーに忠誠を誓ってほしいところ」

「イグナーツ殿下?」

「うん。僕には信頼できる側近がいる。でもイジーの周囲は手薄なんだよね。テオは……忠臣っていうよりも、イジーにとってはかけがえのない親友だから、もっとイジーの傍で親身になってあげる人を増やしたい」

 離れていても何かあったときに相談する相手の立ち位置は、きっとテオになると思う。そうではなく、もっとそばで支えてくれる相手が欲しいのだ。

「殿下は? イグナーツ殿下には殿下がいるじゃん」

「まぁそうなんだけど。ずっと一緒ってわけにもいかないからね」

 一緒にいられるのは成人するまでだ。

「んー、殿下はイグナーツ殿下のことが心配なんだ?」

 心配? いやそう言うのではないかな?

「イジーはきっと、僕がいなくてもちゃんとやっていけるし、自分の道をまっすぐ進んでいく子だよ。ただ……なんていうのかなぁ。う~ん、やれるうちはしてあげたいってやつなんだ」

 ずっと一緒にいられるわけじゃないから、傍にいられるうちに、たくさんいろんなことをしておいてあげたい。

 でも、きっとこういうのって、そのうちうざいとか……イジーは言うかな? 言わないかもしれないけれど、反抗期みたいなのがあってもおかしくない年齢だし、表面上はありがとうって言ってくれるかもしれないけど、『あー、また兄貴のお節介が始まった』って思われるんじゃないかなーとは、自覚してるんだ。構い過ぎかなぁって。

 だけど王妃様はきっとイジー以外の子供を産む気はないだろうし、母上はもう子供が産めないから、僕の兄弟はイジーだけなんだ。

 そう思ったらさぁ、手を出さずにはいられない。

 ブラコンだって? そうだよ僕はブラコンだよ。

「殿下って……」

「なに?」

「イグナーツ殿下のこと本当に好きなんだぁ」

「そうだよ」

 僕の返答にヴァッハは驚いた顔で僕を見る。

「言ってて照れない?」

 はーん、なるほどぉ? 家族が好きとか、人前で言って照れないのかって言いたいわけか。

 生憎と、そんなことでいちいち照れたり、反抗的な態度をとったりするほど、初々しくもなければ、気恥ずかしくて素直になれないなんて言うほど、若々しい考え方はできないからね。

 好きなものは好きで、愛おしいと思うものは愛おしいんだよ。

 こういうことはね、自分の心に素直にならないと後悔するんだ。

 僕はそんな後悔だけはしたくないんだ。



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