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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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57 何年かぶりの大きな頼み事

 ヴァッハの自分さえいなくなれば家族を守れるという考えは、僕としてはどうしても受け入れられないし、何度考えても独り善がりだと思う。

 そんな話を聞けば、何回だっておバカなことを考えるんじゃないって言うよ。

 でも、ヴァッハのほうだって、半端な気持ちではなかったのだろう。

「上手く言えないんですけれど、ヴァッハが家族と会えないということにはならないようにしてください」

 僕の話を聞いて、王妃様はクスクスと声を殺しながら笑う。

「アルベルト殿下から、こんなふうに頼み事をされるのは、これで二回目ですね」

「あぁ、一回目はリュディガーのことでしたか」

 そ、それは……、あ、あんまり声に出してもらいたくないなぁ。

「わかりました。ヴァッハ伯爵夫妻とご子息が離れ離れにならないように、最善を尽くしましょう」

「ありがとうございます」

 王妃様がそう言ってくれたなら、大丈夫かな。

 あと気になることは……。

「リトス王国からは、まだ何も言ってきていませんか?」

 ソーニョの調査が上がってきてすぐに、僕は王妃様と宰相閣下に、王立学園にジュスティス・レオナルド・ソーニョ・カプラ大公令息が留学してきていることを報告していたのだ。

「外交大臣からは、何の連絡も上がってきていません」

 宰相閣下の返事に、僕も王妃様もしかめっ面になってしまう。

 この様子では王妃様の方にも、リトス王国からソーニョが留学しているという連絡がないのだろう。

 当然のごとくカプラ大公からも、息子がラーヴェに行くからよろしくと言った連絡はない。

 随分と、ラーヴェ王国を舐めてやがるなぁ。

「ハント゠エアフォルク公爵令嬢に確認しましたが、学園への提出書類は、リトス王国の伯爵令息としての留学生という形になっているそうです」

 僕からソーニョの調査書類をヘッダに渡しているので、学園の理事会でも、問題になっているらしい。

 一番は警備の件だ。襲撃や事故などでケガを負った場合、絶対に外交問題になる。

 素性を隠しての留学なのだから、ラーヴェ王国の王立学園に非はないとなるだろうけれど、それで済ますわけにはいかないのだ。

 深読みすると、つまりラーヴェ王国の王立学園は、そういった調査がザルなので、要人の入学や留学に何の配慮も対策もしていないことになる。

 これの何が悪いの? と言いたい人も出てくると思うのだが、例えば、他国間の外交摩擦を行う場所として、ラーヴェ王国の王立学園を利用されかねないと言うことだ。

 他国の要人・それに連なる子供が素性を隠し入学しても、何の調べも行われないし、とがめもされない。事件や最悪なところ暗殺が行われた場合、何故ちゃんと入学してくる学生の素性を把握していなかったのかということになる。

 ラーヴェ王国の王立学園なら、好き放題出来るぞと舐められるのだ。

 王宮から他国の要人の留学の連絡がなかったから、は言い訳にならない。ラーヴェ王国の審査ってザルなの? っていう証明にもなってしまう。

「リトス王家は本当に気が付いていないのか、知っていてワザと知らないふりをしているのか。判断に迷うところですが……。我が国を下に見ていますね。まずはラーヴェ王国からリトス王国へ、国書として抗議の連絡を入れます」

 宰相閣下がはっきりと言い切った。

「それなんですけれど、この長期休暇が明けるまで、待って欲しいんです」

 僕の発言に王妃様と宰相閣下が不可解そうな顔をする。

「カプラ大公令息は、おそらく卒業まではリトスへ戻らないと思います。僕がこう思った理由は、アインホルン領にある観光地に借家を三年間借りているからです」

 これもアッテンテータに調べてもらって、判明している。

 オティーリエにはすでに連絡済みで、もし不安だったら、長期休みは王都のタウンハウスか、もしくはヘッダのハント゠エアフォルク領、でなければヘレーネ嬢のベッシュッツァー領で過ごすように言ってある。

 偶然を理由にソーニョとバッティングしない対策だ。

「長期休暇にリトス王国に戻らないとなれば、おそらくカプラ大公令息は、ラーヴェ王国で何かしたいことがあるのでしょう。もしかしたら、卒業後もラーヴェ王国に留まる気なのかもしれません」

 親のやらかしで、リトス王国での婿入り先がないなら、ラーヴェ王国で婿入り先を探すしかないからな。

「もし、ラーヴェ王国へ大公令息の留学を連絡し忘れたというなら、今回の長期休暇明けには、さすがに書類の提出か、もしくは我が国に留学していますと言う連絡がくると思うんです。しかし休みが明けてもそういったことがないのなら、わざと連絡をしなかったという証明になるのではないでしょうか? ついでにカプラ大公令息と、リトス王家との情報伝達ができていないという可能性もあります」

「相手に今しばらくの猶予を与えると言うことですか?」

 猶予っていうか泳がしだな。

「他意がない連絡のし忘れならば、ちゃんと手続きを行う筈です。リトス王国とてカプラ大公令息の行動を把握していたのなら、すぐにでも連絡をしてくるでしょう。その確認のために、休み明けまで待っていただきたい」

「では休み明けに、カプラ大公令息から王立学園に、素性を伏しての留学であるという連絡がなかった場合は、リトス王国へ抗議の連絡を入れると言うことでよろしいか?」

「はい、それでおねがいします」

 連絡を入れる期間を作ってやっているのだ。これで、休み明けにリトス王国からの連絡もなく、学園に書類の提出もなかった場合、ラーヴェ王国に内密で何かを企んでいるとみていい。

 僕の予想では、十中八九、女神の都合のいいシナリオの遂行だ。

 僕の人生、オティーリエの人生、女神にとっては娯楽の一部なのだろう。



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