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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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51 再び尋問、ではなく聞き取り調査

 僕は非人道な人間ではないので、ヴァッハから宿泊する宿屋を聞いて、宿屋のキャンセルとヴァッハの荷物をこっちに持ってくるようにシルトたちにお願いした。

 なんでって顔をするヴァッハに。

「長くなるからねぇ」

 と言ったら、再び涙目になって『何が? 何が長くなるんだ?!』と喚かれた。煩い。

 僕とネーベルとヒルトは、ヴァッハを連れて食堂に移動した。

 上座に僕、その左右の席にネーベルとヒルトが向かい合いように座って、ヴァッハは僕らから離れた場所に座ってもらう。

 ヴァッハの拘束は解いたけれど、その背後に二人の使用人を張り付かせてある。

 隙を狙って僕らの命を狙うとか、逃亡するとか、この萎びた様子を見ると、そんな気力もないだろうなとは思う。でも、絶対にないとは言い切れない。

 いちいち細かいけれど、僕はまだ王籍に入っているから、人為的な危険の疑いがある相手と同席の会食するなら、どうしてもこうやって阻止できる見張りを傍に張り付かせておかなきゃいけないんだ。

 ヴァッハはリトスの王族の血を引いてるんだから、この扱いはどうなのかと言われそうだけど、現状では公的にラーヴェ王国の伯爵家の嫡男として届けが出されてるからねぇ。国際問題になり様がない。

 問題になるとしたら、先王陛下と寵姫の間に出来た子供であると言う証拠があって、ヴァッハが僕を訴えると言った場合だ。

 いま一つ足りない感じのこのお坊ちゃんは、僕を訴える気があるのかね?

 あと、う~ん、ちょっといろいろ確認することが増えてしまった。

 食事が終わったら続きやるかぁ。本音を言えば、面倒になってきてるんだけど、だからってここでほったらかすわけにもいかない。

 なんだって、あんな思わせぶりな行動をしたんだよ。

 ソーニョに何か吹き込まれたとはいえ、ヴァッハはラーヴェ王国の人間なんだから、ソーニョに命令されるいわれはないんだよ。

 出生の秘密を脅しの材料にされたっていうなら、まずは親に相談してどうすればいいか指示を仰ぐか、それとも僕らに保護を頼んでよ。

 王家云々って話になったなら、ラーヴェ王国の王族だって、無関係ってわけにはいかないんだ。

 もうほんと、そういう報連相、ちゃんとやって!


 食事が終わった後は、ファミリールームに移動して、聞き取り調査の続きを行うことにした。

「とりあえず、ヴァッハが自分の出生を脅しのネタに使われて、ソーニョの言いなりになっていたことは分かった。アインホルン公女に接触しようと思っていたのも、下学部の時は婿入り先を探すためで、特にアインホルン公女を限定していたわけじゃなかった。上学部にあがってからはソーニョの命令でだった。間違いないね?」

 僕の言葉にヴァッハはひたすらに何度も頷く。

「アインホルン公女は下学部の頃は、まだアインホルンの後継者に名乗り出てはいなかったけど、それでも婿入りしようと思ってたのは、公女だから嫁に出されるのではなく、爵位を貰って婿を取るだろうって思ったから、でいい?」

「うん、でもよくよく考えれば継嗣がいるから、婿入りっていうのも無理だろうって、直ぐに候補から外したんだ」

 なるほどね。

「僕らを避けていたのはなんで?」

「そりゃぁ、王子殿下に……」

 言いかけて、口を閉ざす。

「あれ、なんでだろう?」

 なんか、いやぁな予感がするぞぉ?

「ソーニョになんか言われていた? 例えば僕らに見つからないように、とか」

「いや……、ジュスティスからは殿下たちについては。特に何も言われてなかった」

「じゃぁなんで、僕らを避けてた?」

「上手く言えないんだけど、殿下はアインホルンじょ、じゃなくって、公女。そう公女たちと仲が良いから、俺が言い寄ったりしたら咎めるだろう?」

「婚活という理由があるなら、口出ししないよ」

 そんな馬に蹴られるようなことはしない。

「こんかつ? いや、でも……。俺自身、アインホルン公女に声を掛けることに、疚しいって思う気持ちがあった。だから見つかったら咎められると思ったんだよ。それで、殿下が傍にいるときは、逃げた」

 気のせいか?

「例えばの話なんだけど、ヴァッハがアインホルン公女に声を掛けようとするでしょう? それでその時に近くに僕らが傍にいた。声を掛けるのはやめておけっていう声が聞こえたってことはなかった? 声は女性」

 僕の問いかけに、ヴァッハはきょとんとした顔をする。

「いや、そういった声は聞いてないな」

「ついでに聞くけど、ヴァッハはウイス教徒? それともシュッツ神道の信徒?」

「うちは代々シュッツ神道だな」

「シュッツ神道の神様から加護を貰っていたりは? ヴァッハ個人でなくてもヴァッハ家の家門として」

「いやそういうのは、ただヴァッハ家は代々ムズィーク神を信仰してる」

 ムズィーク神というと……、音楽神だな。

「あー、シュッツ神道の中でも、特定の神を祀ってる家門なんだね?」

「そう」

「もしかして、ご先祖には加護持ちがいた?」

「あぁ、それはあったと思う。ただうちは直系続きの家ってわけじゃなくって、分家の人間を養子に入れて継いでもらったり、本家の人間に継ぐ人がいなくなって、家督を分家に移したりしてる家だから」

「でも祀ってる神様は、ムズィーク神で、他の神様は祀っていない」

「うん。えっと、なんかこれ関係ある?」

「これは僕の事情」

 女神はシュッツ神道の神を祀っている家門の人間には、強い干渉ができないのかもしれない。

「ブルーメ嬢に声を掛けたのはなんで?」

「えっと、そっちはアインホルン公女と間違えた」

 あー、僕の予想通りだったのか?

「遠目で見ると背格好とか髪色が似てるから?」

「うん。間違えて声かけた。でも、ほら次期伯爵だって聞いたし、婿入りにいいかもとは思った。そっちは完全に俺の打算っていうか……、わ、悪かったと思ってるよ」

 ヴァッハはもうそんなことしないと、言い訳をする。

 婚活相手として、本気で選んでるなら僕は何も言わないって。



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