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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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50 変わり身、はやすぎない?

 ぽかんとした顔をして、ヴァッハは僕を見る。

「僕の話、理解できない?」

「あ、え、い、わ、わか……る?」

「何その疑問符が付いたような返事は。わかってないの?」

 再度訊ねると、ヴァッハはぶんぶんと首を横に振る。

「わ、わかる、けど。でもそれじゃぁ迷惑をかけるんじゃ……」

 まーだ言うか。

「自分の悩みを親に相談することって、迷惑になるんだ? 君の両親って息子の悩みなんて聞くに値しないって考えなんだね? 子供は黙って親の言うことを聞けって人たちなの?」

「ちがっ」

「じゃぁ、何が迷惑なのさ。君の言う『迷惑』って何なの?」

 僕の突っ込んだ問いかけにヴァッハは黙り込んでしまう。

「僕からすれば、家族の為っていう自己満で、何の説明もされずに、勝手にいなくなられる方が大迷惑だと思うね。ヴァッハが考えていた計画はね、中途半端にとっ散らかしてその場しのぎなんだよ。あとのことを考えてない。結局のところ、君のやらかした後始末は、ヴァッハ伯爵家のご家族がやることになるんだけど、そこをちゃんと理解してるの?」

「あ、と、しまつ、って」

「だからさっきも言ったでしょう? 順風満帆な伯爵家一家だったのに、突如跡継ぎが家を出ていって疎遠になるんだ。ヴァッハ伯爵は息子を虐待して、家族ぐるみで跡取りを虐げてる家、悪意ある人たちから根も葉もない噂話をたてられて、もっともらしい嘘が社交界に流れるんだよ? その火消しをする人は誰? 噂を立てられたヴァッハ伯爵一家でしょう? これを後始末と言わずに何だっていうのかな?」

「そ、そんな、言い方しなくたって」

 愚かしい計画を立てた反省じゃなく、計画をダメだしされた愚痴かよ。

「こんな言い方しなければ、いつまでたっても理解しないのは誰?」

「うっ、俺……」

「そう、君だ。何度でも言ってやる。本当にヴァッハ家の家族が大切なら、『俺が考えた最高の疎遠計画』なんて考えない。そもそもそんな計画立てること自体、愚かしいと思う筈だよ」

 散々扱き下ろされたヴァッハは、塩を掛けられて萎びていく野菜のように、しおしおになっていく。

「あの……、俺が、バカだったことは分かったから、そろそろコレ、やめてくれないか?」

 コレ、というのはネーベルがペンチで、ヴァッハの足の小指の爪を挟んでることだろう。

「まだ尋問終わってないんだけど?」

 僕がそう言うと泣きそうな顔をして喚きだした。

「な、何でも言うとおりにする! 拷問しなくても、殿下が知りたいことは全部話す! バカなこともしない! あんたの奴隷になるから、もうやめてくれよぉ!!」

「管理の手間がかかる奴隷なんかいらんよ」

「あぁぁぁぁぁぁ!! そーじゃない! そーじゃなくってぇ! あーっ。あーっ! どう言ったら伝わるんだよぉ!!」

 知らんがな。

「あんたらもなんか言ってくれよぉ!!」

「高貴な血を持ってる方なんだろうけど、俺もヒルトも膝をついて頭を垂れる相手はアルベルト様だけだと決めている。お前に命令されても、聞き入れる耳はない」

 ヴァッハの懇願はネーベルに向けられたけれど、すげなく断られてしまう。

「なにこの人、怖い!」

 そう言って今度はヒルトのほうを見る。ヒルトはいつの間にか腰に差していた剣を抜いていて、その剣先はヴァッハの首すれすれに向けられていた。

 あ、今日はブロードソードなんだ? 魔獣狩りしたときはクレイモアで、剣術大会の時はサーベル型の模擬刀だった。ヒルトって剣なら何でも使えるんだよね。シュヴェル神の加護を持ってるだけある。

「貴殿は、ご自分の立場をご理解されたほうがいい。明日の朝日をその目に映すことができるかは、アルベルト様のお心ひとつだ」

「こっちはもっと物騒! なんで女子がこんなに恐ろしいこと言うんだよぉ! 絶対、俺と同年齢じゃない! 殿下ぁ!」

「はぁい。なぁに?」

「そんな呑気な返事しないで、助けてぇ! 何でも言うこと聞きます! 殿下の犬になります! 助けてください!!」

「え~? いぬ~?」

 ワンコは可愛いけど、それは本物のワンコならね。比喩的なワンコは必要ないんだよなぁ。

「お役に立ちます!!」

「誰にでも尻尾振るワンコはいらない」

「振りません!!」

 嘘つけ。ソーニョの言うことを真に受けてたくせに。

「どっちにしろ、そういうのは間に合ってる」

「下働きでもいいです!!」

「食いついてくるなぁ」

 呆れた口調で言ったら、

「だっ、だって殿下が言ったじゃないですかぁ!!」

「なぁに?」

「俺は自己完結して独り善がりの計画立てる間抜けだって!」

「間抜けとは言ってない」

 思ってはいたけど、声には出してないぞ。

「言ってないですけど、言ってるような感じでした! だから、えっと、相談できる人の下につけば、マシになると思うので! よろしくお願いします!!」

 えー、なにこの昔の集団見合いバラエティー番組にあった、告白タイムみたいなノリは。

「まぁいいや。煩いからペンチは離してあげて」

 僕の指示通りにネーベルはヴァッハの足の小指の爪からペンチを離すけれど、ジーッとペンチの先を見つめてる。

「舌を挟むのもなしだよ。喋らせなきゃいけないんだから」

「わかった」

 僕とネーベルの会話に、ヴァッハはまたしても涙目になってぶんぶんと首を横に振る。

「本当に、何でも言うとおりにするんで、拷問はやめてください!」

 やるのは尋問だって言ってんだろ。煩いやつだなぁ。

 キャンキャン喚くヴァッハに呆れた視線を向けていたらランツェに声を掛けられた。

「アルベルト様、そろそろディナーの時間になります。尋問はいったん休憩していただいて、先にお食事をお摂りください」

 あ、もうそんな時間なの?

 今回のギュヴィッヒ領にはガーベルの随伴はない。

 もともと宿屋に泊まる予定だったし、でもヒルトは最初から僕らをこの館に滞在するようにと準備していたし、もちろん料理人も手配してくれていたからね。

 じゃぁ、いったん休憩にするか。



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