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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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49 変な計画を考えるより、まず話をしろ

 爵位を引き継ぐ跡取りを変更するのもねぇ、実際のところはなかなかに難しい話なんだよねぇ。

 だって跡取りにするために、それだけ金かけて教育しているんだもの。例えば爵位を引き継ぐ嫡男が浮気してましたってなって、婚約者のご令嬢との婚約がおじゃんになったとする。

 その場合、下に弟妹がいたら一応スペアとして教育させてるわけだし、切り替えは簡単だ。下に弟妹がいなくって親類縁者から、跡取りを引っ張ってくるにしても、その引っ張ってきた子は、まず爵位を引き継ぐものとしての教育受けてるの? ってことになるでしょう? 受けてなかったら最初からやり直しで、またお金がかかるわけなんだけど、その費用どうすんの? ってことにならないかね?

 だから浮気程度では、跡継ぎを変更はできない。慰謝料だって払わなきゃいけないしねぇ?

 だから、ヴァッハ家の嫡男であるヴァッハが、他の家に入り婿に入るっていうのは、ない寄りのなしなんだよ。

「ヴァッハは、血の繋がりがない自分ではなく、ヴァッハ伯爵の血を引いた妹君が家も爵位も継承するのが正しい。ついでに自分の存在によって、育ててくれた大切な家族は危険から遠ざけることができる。そういうぬるい意識で入り婿っていう手を取るんだろうけれど、瑕疵がなかった自慢の跡取り息子が、他所の家に入り婿に入るわけだから、周囲は何かあったんじゃないかって勘ぐるよね?」

 勘ぐらないほうがおかしい。

「ついでにヴァッハは自分の出生が理由で、ヴァッハ伯爵家のみんなを危険に遭わせないために入り婿になるんだから、当然、ヴァッハ家とはそこで縁を切るよね? 行き来どころか、手紙のやり取りもお断りするんでしょう? そこまでやらなきゃ入り婿になる意味なんてないもんね?」

 僕のその言葉に、ヴァッハは返事をしない。

 予想通り、そこまで考えてなかったか。単にヴァッハ伯爵家を実子の妹君に継がせて、自分は外に出て所帯を持てばいいって、安易に考えたんだろう。

「さて、婿に行ってしまった自慢の息子と、交流がなくなってしまったヴァッハ家に、ヴァッハ家と付き合いのある貴族の方々はどう思うだろうか? あんなに大事にして自慢していた息子さんなのに、なんでご実家に顔を出さないのだろう? 婿に行っても家族なのだから、お付き合いはあってしかるべきなのに、全くその気配がない。何かあったんだろうか? もしかして、兄妹の扱いに差があって、伯爵夫妻は妹ばかりを可愛がっていたのじゃないだろうか? 本当は最初から、可愛がっている妹の方に家を継がせたかったから、兄を婿に出したのかもしれない。兄の方も虐待されたから逃げだしたのかもしれない。だから婿に出て、実家との連絡を絶ってしまったのでは? あんなに仲が良さそうだったのに、本当は虐待していて、それを隠すために人前で愛息家の振りをしていたんじゃないか?」

「そんなことない!!」

 堪らず叫んだと言った様子のヴァッハに、僕は肯定する。

「そうだよ? ヴァッハ伯爵が愛情をもって君を育てたってことは、君を見れば一目瞭然だ」

 きっとヴァッハ伯爵家一家と友好な関係を築いている相手だって、そんな噂は信じないだろうし、むしろそんなことはないと否定してくれるだろう。

 でもそれは仲の良い相手の話だ。

「だけど、ヴァッハ伯爵とあまりいい関係を築いていない相手や、ライバル事業者にとっては、ヴァッハ伯爵の弱みを見つけたことになる。そこから突いて、ヴァッハ伯爵を引き摺り下ろしていけばいいんだ。家族を守るために離れようと決断したのに、その決断はヴァッハ伯爵家をライバル視している貴族にとっては、利用できるチャンスとなるんだ。だけどこれで終わりだと思わないでね?」

 そう、これで終了になるわけがない。

「君のことを虐待していたとか、本当は仲が悪かったとか、根も葉もない噂や悪意にさらされたヴァッハ伯爵一家は、どう思うだろう? 噂なんか信じないと突っぱねたいところだけど、大切に育てた息子は家を継がずに婿に出て、顔を見せに来るどころか、便り一つよこさない。自分たちは愛情をもって育てたはずなのに、当の本人は、実子である妹だけを優遇していると思っていたのではないだろうか? 次期当主として厳しくしたことはあったけど、それが息子にとっては虐待と思われていたのかもしれない。実の親じゃないと知った自分たちのことを、本当は憎んでいたんじゃないか? って、苦悩して、深く傷つくことになるよねぇ?」

 家族は何も伝えずとも理解してくれるなんて言うのは、幻想だよ。だって自分じゃないんだから、言わなきゃわかるわけがない。

「変な陰謀に巻き込まれないように守りたかった家族なのに、自分勝手なことをしでかした君自身が傷付けるんだよ。満足かな?」

「じゃぁ……、じゃぁどうすればよかったんだよ!! 俺だって家族の傍にいたいよ! 傍にいてみんなを守りたいよ! でも本当の子供じゃないんだ! リトス王家の血を引いてる子供だなんて、厄介なだけだろう?! 俺のことで大事な家族を危険な目に遭わせたくないって、そう思うことのどこが悪いんだよ!! その危険が思い過ごしでも、そういった不安があるなら、そうならないように、元凶の俺が離れようって考えるだろう!! なのにそれじゃダメって、どうすればいいんだよ!!」

 もっともらしいこと言ってるけれど、結局は自分の不幸に陶酔してるんだよねぇ。

「だから、僕は最初に言ったじゃないか。なんでご両親に相談しないの? ってさ」

「え……?」

 え? じゃないでしょ? なに初めて聞きましたって顔してるの?

「君がしなくちゃいけないことは、独り善がりな自己満足でことを起こすんじゃなく、まず家族との話し合いでしょうが」

 自分の出生の件の不安とか、跡継ぎへの考えとか、なんで親に話さないで、一足飛びに訳の分からない計画を立てるんだよ。

 僕、そこが本当に理解できない!



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