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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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48 ぬるさを指摘する

 自分の決死の思いで決めた覚悟を、それも自分の為ではなく自分を愛してくれる人達を守るための決断を、僕に嘲笑われたのだ。

 そりゃぁヴァッハは、バカにされたと思ったに違いない。

 僕はさ、ヴァッハの考えをバカにはしていないよ? でも、やっすい自己犠牲だよね。いやこれは自己満足かな?

「自分の出生が発端で、大切な人たちを陰謀に巻き込んでしまうかもしれない。自分が姿を消して遠くに行けば、大切な人たちは傷付けられることはなく守ることができる。そう思ってるんでしょう?」

 僕がそう言うと、なんでわかったんだって顔をされる。

「君ってさぁ、自分の不幸に酔っぱらってない? 自分さえいなくなればみんな幸せになれるっていう考えはさぁ、自分だけが楽になれる、独り善がりの考えなんだよ。あと、さっきも言ったけど、脳ミソぬるま湯につかってるみたいだねぇ」

 ヴァッハはこんなふうにボロクソに言われると思っていなかっただろう、ただひたすらに理解の範疇を超えたような視線を僕に向けてきた。

「じゃぁ、ここからヴァッハの『俺が考えた最高な作戦』を決行した後の現実を解説してあげる」

「げ、げんじつ?」

「そう、現実。まずヴァッハはヴァッハ家の実子であり長子だ。あー、違うとか言わなくていいよ。国に提出している書類。それからヴァッハ伯爵の親類縁者。近隣の領主。家同士でお付き合いのある貴族。ヴァッハ伯爵が君のことを自分たち夫婦の長子で長男だと、お披露目して周知しているんだ。君の出生が実際は違っていても、世間の認識と事実は、君がヴァッハ伯爵の実子で長子なんだよ」

 そもそもヴァッハだって、両親の本当の子供ではないのか? って疑いは持っていたかもしれないけれど、ご両親から自分の出生の話を聞かされるまで、本当の親が誰だったか知らなかったんでしょう?

 なのに自分の存在は迷惑をかけるとか、片腹痛いわ。

「はい、そこで実子で長子のヴァッハくんが、お家の伯爵家を継がずに、どこかの爵位を持っている貴族令嬢の入り婿になりました。計画通りだね?」

 言い方が悪意に溢れてるって? だってヴァッハがしようとしていたことって、こういうことでしょう?

 つまり大切なものを守るために、身代わりを立てるってことね?

「大切なヴァッハ伯爵家と家族を危険から遠ざけるための結婚だ。君は女性を喜ばせるのがとてもうまいらしいから、本来継ぐべき家を出てまで添い遂げたいというフリをし続ければ、相手は疑うことなく君に騙されてくれるよ」

 僕の言葉に、ヴァッハは自分の見落としに気が付いたようだ。

「万が一リトスのほうから刺客が送られて、君の奥方や奥方の家族が危険な目に遭っても、大切なのはヴァッハ伯爵家の家族であって、結婚相手は身代わりだ。怪我を負おうと殺されようと、ヴァッハ伯爵家の人間じゃなくってよかったーって安心できる。表面上は最愛の妻がこんな酷い目に遭うなんて許せないって演技してれば、なんで襲われたのか知らない世間は、『災難な目に遭ったね。気を落とすんじゃないよ』って慰めてくれるだろう。君のヴァッハ伯爵家の家族を守りたいと言う願いは叶ったよ。わぁ~い、おめでとう。良かったね?」

 パチパチパチと両手を叩いて、計画が成功するだろうことを褒めた。

 まったくめでたくも良くもないけれど、ヴァッハがしようとしていたことは、こういうことでしょう? と、僕は彼のぬるさを伝える。

 でもこれで終わりじゃないよ? まだ続きがあるからね?

「さて、一方ヴァッハ伯爵家の方になるよ」

 ビクッと身体を揺らすヴァッハにお構いなく僕は続けた。

「大切に育てた息子さんは、実家の伯爵を継ぐのではなく、どこかの爵位持ちの貴族令嬢の入り婿になってしまった。ヴァッハ家と付き合いのある貴族たちはどう思うだろう? あんなに可愛がっていたご自慢な息子さんだったのに、家を継がずに他家に婿に入るなんて一体何があったんだろう? 気になっちゃうよね。『真実の愛』をみつけたんだよー! って言い触らしたとしても、それでも相手にお嫁に来てもらえばよかったのにって思われるよ? まー、こんな言い方は男尊女卑っぽいけど、でも世論は男性有利の社会だから、君が入り婿になるのではなく、君の奥方になる相手にお嫁に来てもらって、奥方の家は親戚の誰かが継げばよかったのに。ってみんな思うよね」

 女性が爵位を持つことに難色を示されるってことはない。だけど婚姻する相手がどっちも跡取りだった場合は、やはり女性にお嫁に入ってもらうっていう風潮になるんだよ。

「もしくは奥さんになる人のお家に、跡継ぎが誰もいないなら、爵位を持ったままお嫁に来てもらえばいいじゃないか? ってことになるんだよね。貴族の爵位を持つ者同士が、爵位を持ったまま結婚してはいけないっていう法はないんだもの。むしろ持っていても結婚できますっていう法ならあるんだよ。知らなかった? その辺ちゃんと勉強しておきなね?」

 おじい様だって何個も爵位を持っているし、そのうちの伯爵位を配偶者であるおばあ様に、そして唯一の娘である母上に男爵位を継承させてるんだよね。

 まぁ、うちの場合は、おじい様が爵位を二人に渡すときに、おばあ様と母上が亡くなった後は、二人に譲渡した爵位は、マルコシアス家当主でありフルフトバール侯爵となった僕に返納することっていう取り決めを書類に起こしてるんだけどね。

 僕がフルフトバール侯爵を引き継いだら、おそらくおじい様が他に持っているいくつかの爵位も一緒に継承させられるだろうなって思うよ。



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