表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
240/362

44 もっと根性を見せてくれ

 自分のことはともかく、ソーニョの正体まで知られていると思っていなかったのか、ヴァッハは動揺を隠し切れない。

「つまり、ヴァッハがオティーリエ様に近づいて、いろいろちょっかいを出していたのは、ソーニョの仕込みということか?」

 ヒルトの問いかけに、ヴァッハは縋るような目をして、コクコクと何度も頷く。

 おめー、もしかしてヒルトは女子だから、自分のこと助けてくれるかもと思ってるんじゃねーだろうな?

 言っとくけど、ヒルトは僕ら三人の中で、一番戦闘力高いからね? 下学部からいたのなら、ヒルトが剣術大会で、二年連続優勝したことを知らないわけないだろう?

 女子がいるなら、僕らが過激なことをするのを止めてもらえると思ったら大間違いだからね? 女子だから僕らよりも血を見慣れてるんだよ。

「アインホルン公女の周囲にうろついていたのは、ソーニョからの命令。流れとしては、軽薄なヴァッハが、嫌がってるアインホルン公女にちょっかいかけるところを、ソーニョが偶然を装って助けるっていうシナリオだったのかな? それを何度か繰り返して、アインホルン公女と親しくなるっていう作戦? どういう意味で親しくなりたかったんだろうね? 親しい友人関係になって、何かに利用したかったのか、それとも、王位継承権を持っているアインホルン公女と恋仲になって婚姻を狙っていた? そこら辺のところはどうなの?」

 僕が訊ねるとヴァッハは途端に顔を強張らせる。

「喋る気ない? ネーベル」

「言う! 王子様の言う通りだ! ジュスティスの奴は、アインホルン嬢にご執心で、彼女と結婚する気でいるんだよ!」

「オティーリエと結婚ねぇ……」

 それを聞いても、僕はあんまり驚かない。

 ソーニョはリトス王国カプラ大公殿下の御子息ではあるが、ソーニョは次期大公殿下というものにはなれないのだ。

 だって引き継ぐ領地がないし、父親は名ばかりの大公だからね。この大公位は息子に引き継がれることがない一代爵位だ。

 ついでにその大公殿下は、自尊心だけが高く、王族としては使えない。大公だからと大きな顔はしているが、仕事は全くしていない。王家から割り当てられた予算で贅沢三昧をして、国庫をひっ迫させている原因になっている。

 なんでこれ生かしてるの?

 本来ならとっくに最果ての門を潜ってもらう筈だった人物なのに、今も生きながらえてしまっているのは、リトスの国王陛下の采配が下手すぎるからだ。

 先王陛下の計画は破綻してしまって、大公となった第二王子は処理されないまま、先王陛下は国王の地位から退かされた。

 となれば、リトス王家の荷物となっている大公殿下の処理は、リトスの国王陛下に委ねられたわけだけど、こうやって今も大公殿下が生きているということは、リトスの国王陛下は大公家族をどうしていいのかわからないと言ったところなんだろうな?

 仕事もせず遊び惚け国庫をひっ迫させる寄生虫なんだから、子供ができる前に始末しておけばよかったというのに、自分の采配で身内を殺したくなかったのかな?

 甘いなぁ。うちの国王陛下とおんなじ。

 おっと、話がズレちゃったな。

 おバカな大公夫婦はともかく、問題はその子供であるソーニョだ。

 やつがどこまで自分の立場を理解しているかということだけど、おそらく、良くないことは解ってるはず。

 そこはバカな親には似なかったのかな?

「まぁ想定内の考えだね。ソーニョは親の大公位の継承はできない。貴族でいる一番手っ取り早い方法は、爵位を持っている令嬢と婚姻することだけど、親のやらかしでリトス国内の爵位持ちのご令嬢との婚姻は、申し込みを受け入れてくれるところがない。じゃぁ、どうするか? 国外に出て、爵位を持ってるご令嬢を探せばいい」

「理に適ってはいるけど、そんなにうまくいくか?」

「顔はそこそこいいほうじゃない? うちのイジーに比べれば、格段にランクが落ちるけど!! っていうか美形に言い寄られたら、年頃のご令嬢はコロッといくでしょう?」

 僕の説明に、ネーベルとヒルトは首を傾げる。

「そういうことも、あるか?」

「私はネーベル以外に興味がないからわからない」

 これこそが真実の愛だろうよ! 浮ついた気持ちで婚約破棄とかやってる奴らに見せてやりたい、うちのネーベルとヒルトの真実の愛を!!

「ターゲットはオティーリエ様だから、オティーリエ様を落とせばいいって考えれば、アルの言うことももっともか」

「だけどオティーリエ様はアレだぞ?」

 男性嫌悪症だからどんなに美形でも、靡くかわからないって事ね?

「平均的な令嬢は、顔のいい男に弱いもんだよ。あとは身元がしっかりしてるところだ。ソーニョは素性を隠しているけれど、リトスの大公子息でしょう? 素性をさらけ出したら食いついてくる令嬢はいるはずだよ」

「いや、だけど、王妃殿下のことを知ってる奴なら、あんな親がいる相手と結婚したいと思わないだろう?」

「リトスの大公殿下が、王妃殿下の元婚約者だと知ってる人ならね。でも僕らの世代でそれを知ってる人ってどれだけいるかな?」

 僕の問いかけにヒルトははっとした顔をする。

「王妃殿下が故国で婚約破棄をされたことは、親世代なら大抵のものは知っている話ですが、それは国王陛下からのプロポーズの話とセットにされています。リトスのほうでどんな風に話が広まっているかは知りませんが、ラーヴェでは王妃殿下の婚約破棄よりも、そのあとの国王陛下にプロポーズされたことのほうが注目されていますね。ということは……」

「王妃殿下に婚約破棄をした相手が、婚約破棄後にどうなったのか知るものも少ないってことだよ。リトスの先王陛下の子供はヴァッハを含めて九人。そのうち王子は五人いるけれど一人は王太子から国王陛下になった。五人目はヴァッハのことだから残りは三人。三人のうち誰がリトスの大公殿下になっているのか、リトスの世情に精通していなければ知らない貴族も多い。そしてソーニョの狙いは、ただ爵位を持っている令嬢ではなく、アインホルン公女だ」

 僕らは一斉にヴァッハを見た。

「な、なななな、なん、なんでこっちみるんだよ」

「お前がソーニョと繋がってるからだ。ソーニョの事情は、パシリにされてるお前のほうが詳しいだろう?」

「お前は何処までソーニョの情報を持っている?」

 ネーベルとヒルトに詰め寄られて、ヴァッハは恐怖でボロボロと涙をこぼす。

 でも残念。野郎の涙を見たって、心を動かされることなんてないよ。

「素直に言わないなら本当に爪を剥ぐよ? 脅しじゃないからね」

 僕の言葉にヴァッハは完全に白旗を上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ