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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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40 捕獲指示を出して、捕まえた

 ネーベルとヒルトに、僕の心中を見透かされているみたいで恥ずかしいと叫んで、二人を残し飛び出した。

 恥ずかしいのは本当のことだけど、学園じゃクラスも違うから久しぶりに二人にさせてあげたい!

 露店を回ってイジーとリュディガーのお土産になりそうなものを物色している真っ最中だった。

 ちらりと視界をかすめた金髪に、浅黒い肌。

 顔を上げると、相手の視線とバチリと合う。視線が合った途端に、相手は『やべっ』と言わんばかりの顔をして僕に背を向け遠ざかって行こうとする。

 甘いな。

「シュティレ。アレ、確保。仲間がいたら一緒に捕まえて、僕らが滞在してる館に連れてきて」

 離れていく相手の後ろ姿を指さして、僕が独り言をこぼすように呟くと、音もなく離れていく人影。

 せっかくの休暇だっていうのに、もうちょっとのんびりさせてよ。

「ネーベルとヒルトはさっきの場所にいる?」

「はい」

 当たり前のように返ってくるシルトの声。

「二人のところに戻るよ」

 もう少し二人っきりにさせてあげたかったけれど、そうもいかない。二人に気を使って僕が一人で動いたら、あとで二人に『勝手に一人でやるな』って怒られるのは目に見えてるからね。


 戻ってきた僕に気づいたネーベルとヒルトは、最初笑顔で出迎えてくれたけれど、僕の様子から何事かを悟ったのかすぐに顔を引き締める。

「なにがあった?」

「どうされましたか?」

「ゆっくりしていたかったけど、そうもいかなくなったよ。館に戻ろう」

 異口同音で訊ねる二人に、その場で説明せずに館に戻るように告げる。

「そうだ、ヒルト。僕らが今使っている館には、汚しても大丈夫な場所はあるかな?」

 僕の問いかけにヒルトはどうしてですか? と、訊ね返すことはせず、答える。

「館には使われてない厩があります。今、アルベルト様がお使いになっている場所とは別の場所ですね。随分古くなったので、そのうち取り壊す話になっています」

「どれだけ汚しても構わない?」

「はい」

「そっか。じゃぁシルト。シュティレが戻ってきたら、そっちに運ぶように伝えておいて」

「かしこまりました」

 シルトに指示を出した後、僕はネーベルとヒルトになにがあったのか伝えた。

「ヴァッハを捕まえたよ」

 二人は驚くどころか、直ぐに納得したようだった。

「仲間がいるかもしれないから、それがいたら一緒に捕まえるように言ってある」

「泳がさないのか?」

「意味がないなと思ってね」

 あんまり長引かせるのも良くない。

 放置して相手の好き勝手にさせ過ぎると、男性嫌悪症のオティーリエのメンタルが保たないからね。

 あー、そろそろオティーリエのあれもなんとかさせないとなぁ。直さなくてもいいから、傍にいても大丈夫な相手を見つけないとね。

 アインホルンの跡継ぎになるんだから、結婚して子供作らないといけないし、弟の子供を養子っていう手もあるけれど、オティーリエにはそういう逃げ道作ると、一生結婚しなそうだ。


 そして僕らは館に戻ったのだが、捕獲にむかったシュティレはまだ戻ってきていなかった。

 ん~、シルトとランツェと同じアッテンテータであるシュティレがヘマをしたとは思えない。

 なんかあったのかな?

 そう思っていたら、シュティレが戻ってきたとランツェに告げられた。

「ご指示通り、使っていないほうの厩のほうへ運んでおります」

「ありがとう。ネーベル、ヒルト、行こう」

 二人に声を掛けて、使われていない厩のほうへと移動する。

 外はもう日が沈んでいて、遠くの方に見えるオレンジの光が、藍色に呑み込まれそうな空になっている。

 ヒルトの言った使われていない厩は、いつ取り壊してもいいように残置物は置かれていなかった。空っぽの厩の中には左右に各六つに仕切られた馬房がある。

 厩の前ではカンテラを持ったシルトが立っていた。

 シルトは黙って僕らをヴァッハがいる馬房へ案内する。

 案内された馬房の中には、後ろ手に両手を縄で拘束されているだけではなく、両足と、それから腕も動かせないように、二の腕の脇をしめるように、上半身も縄でぐるぐる巻きにされて、床の上に転がっているヴァッハ。そして、すぐそばには、ヴァッハを監視していたシュティレがいた。

「ミノムシみたいだねぇ」

 僕の声を聴いて顔を上げるヴァッハは、口も布をかまされている。

 見た感じ、抵抗して怪我した様子が見れないから、素直に捕まったのか。

「お仲間いなかったの?」

「はい、念のため、くまなく探りましたが、いませんでした」

 遅くなったのは、連れがいないか探していたからか。

「ありがとう」

 僕がそう言うとシュティレは音もなく姿を消す。

「まずは自己紹介から始めたほうがいいかな? 同じ学園に通っているし、初対面じゃないし、僕はこの国の王子だから、君は僕のことを知っているかもしれないけれど、礼儀は大事だからね」

 僕はヴァッハに向けてにっこりと笑う。

「こうやって言葉を交わすのは初めてだから、初めまして、と言っておこうかな。リューゲン・アルベルト・ア゠イゲル・ファーヴェルヴェーゼン・ラーヴェだよ」

 僕が名乗っても、ヴァッハに動揺はない。

「こんばんは。レアンドロ・ヴァッハ」

 僕が彼の名前を口にしても、あまり驚いてはいないようだ。

 いいね、その度胸。

「それとも、レアンドロ・アトゥ・ノーヴェ・ツァンナ・リトスって呼んだ方がいいかな?」

 今度はあからさまに反応した。

「君の本名を僕が知らないとでも思った? オティーリエたちの傍をうろつく君のことを知って、もう五か月以上たってる。君の背後を洗い出すには十分な時間だよね?」

 調べられないほうがおかしい。

「レアンドロは偽名じゃなかったんだね?」

 『アトゥ』はリトスでは王家の男子に付けられ『ノーヴェ』は九番目を意味している。そして『ツァンナ』はリトスの先代国王陛下の寵姫……つまり公妾の一人に与えた名前。

 レアンドロ・ヴァッハの正体は、リトスの先代国王陛下の九番目の子供だった。



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